テラーノベル
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「何をしているのですか?トアール様がお出迎えくださったと言うのに」
青年がそう言う。ブラックは
「貴方は私達を殺すためにここに居たのではないですか?」
と問う。青年は小さく笑う。
「トアール様が自らお相手なさると言うのなら私の役目はもう終わりです。どうぞ先にお進みください」
一瞬罠かと勘繰るが罠の気配はない。一応背後を警戒しつつも梯子を登ることにした。
「ふぅ……全員登り切りましたね……早く先に進みましょう」
しばらく歩くとやっと地上に出た。目の前には巨大な館が。
「ここが敵の本拠地ですね。注意して入りましょう」
注意して進んだが既に組織全体に『侵入者達はトアールのお客様』と言う命令が行き渡っていたのか、誰も攻撃して来なかった。そして館の一番奥の部屋の前に行くと……
「ほんと……貴方達には呆れるわ。でも最強の教師はもう戦えないようね」
リデルはクスクスと笑う。
「あの毒矢トラップを受けたのかしら?ふふふっ、あの毒は私達が独自に開発したものなのよ。だから手持ちの解毒剤も効かなかったでしょう?」
リデルは更に愉快そうに笑う。
「でも解毒剤の開発くらいはしておりますの。味方が喰らったら大変ですもの」
クルクル回りながら楽しそうだ。正直全員ドン引きである。
「でもそれも大切な我らが組織の技術ですから私は持っておりませんの」
リデルはニヤッと笑う。
「ここまで言えばお分かりですね?」
リデルは扉を背にして毅然と立つ。
「……解毒剤が欲しければ私を倒してトアール様から奪い取ってみなさいな」
リデルは歌うようにそう言うとナイフを二刀流で構えた。
「ここは最終防衛ライン。お相手は私が致しますわ」
その言葉が終わると同時に体勢を低くして突進して来た。
ガキィンッ!
「まずは貴方ですわよ?Mr.ブラックさん」
「この間の続き、ですか。分かりました、いいでしょう。お相手いたします」
ブラックは片方のナイフを電磁砲で受けもう片方はリデルの腕を捻り上げて止めた。しかしリデルは電磁砲で受け止められた方のナイフを即座に引き戻すと、捻り上げられた方の腕を利用してブラックの腕を捻り返しナイフを振り被る。しかしブラックがその大きな動きを見逃すはずも無く難なく躱して距離を取る。他のメンバーは手も足も出さずにただ静かに見守っていた。いや、本当は出そうと思えば出せる。というかリデルは強いが先程の青年ほどの強さは無い。だからブラックがやり合ってる間に他のみんながリデルに攻撃すれば簡単に勝てるだろう。しかしそうはしなかった。ブラックとリデルのリベンジに水を注したくないのも、対トアール戦に体力を残しておきたいのもあった。しかし一番の理由は、“卑怯とも言える手を使って勝つ事を躊躇わせるような光がリデルの目に浮かんでいだから”だった。何故か分からないがその光を無視して割り込む事は出来なかった。
キィンッ!
リデルのナイフが弾かれ片方だけになる。ブラックは容赦なく電磁砲のエネルギーをチャージし始める。
キュィィィン……
「……ッ……何故……何故貴方達は……」
ドオッ!
リデルの言葉が終わらないうちに放たれた電磁砲の光は一瞬にしてリデルを呑み込んだ。
「……言っただろ。僕だってあくまでも正義を掲げてるからだよ。それは事実だ」
毒から回復した訳では無いだろうが、自分の足でしっかりと立ったすまない先生が静かにそう告げた。
「……貴様らなんかに……トアール様の……」
電磁砲が直撃し息も絶え絶えと言った様子のリデルがなおも反撃しようとナイフを持つ。
ギィィィ……
不意に後ろの扉が開いた。
「もういいよ、リデル。彼らは俺が相手する」
____玉座の間から現れたトアールが
不適な笑みを浮かべた____
コメント
1件
おー…トアールがお出ましやー! 風夜まじ凄いね!戦闘シーンが忠実に再現されてある…動きとかその人の感情とか…もう尊敬だよ! リデルは何を思ってブラックと全力でやりあってたんだろう…トアールの強さも気になるところ!