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4つの銃口から連続で発射されるエーテルは、クォン達を的確に狙っている。しかし、ネフテリアが張った防御壁に全て阻まれている。
接近しながら、女はネフテリアを注意深く観察し、冷静に考える。
(おそらくあのアーマメントのどれかが、エーテルを防ぐバリアを発生させている筈。そいつを壊しさえすれば、アタイ達の勝ちだ)
サイロバクラムにおける、対人戦の基本的な考えである。エーテルを操るにはアーマメントと呼ばれるパーツが必要で、エーテルガンもその1つ。つまり、アーマメントを破壊して相手を無力化する事が、サイロバクラム人の必勝法である。
「気を付けてください! 彼女はこのバリアの発生源を狙っています。周囲に数名隠れて様子をみている筈」
「ふーん、なるほど。彼女は敵?」
「いえ、派閥の同志です……が、色々ありまして」
襲い掛かってきた女は、スレッドの仲間。しかし事情がありそうだ。
ネフテリアは自分についているパーツを改めて見た。細めのアームパーツ、翼の骨のようなパーツ、そしてお腹周りにあるちょっとゴツいパーツ。これらの破壊を狙っているらしい。
(まずい……これ壊されたら……)
パーツを見て危機感を覚えたネフテリア。相手はその表情の変化を見逃さなかった。
そしてその一連の流れを、ピアーニャは見逃さなかった。
「よし、がんばれテリア。わちはゼッタイに、てをださん」
「手伝ってよ! すっごい嫌な流れなんだけど!」
「アイツはまかせた、んふふ」
「ニヤニヤしながら言わないで!」
ネフテリアの不幸を面白がるピアーニャであった。そのまま取り出した『雲塊』と一緒にジリジリと離れていく。
そんなやり取りを、スレッドは不思議そうに見ている。その横にいるクォンは、困った顔のまま思考を巡らせている。
2人が言い合いをしている間に、女は一気に急接近。ここまではエーテルガンによる牽制をしていたが、それはネフテリアに別の行動をさせない為。接近すると、エーテルガンを撃つのを止めた。
そのまま流れるような動きで、足にある折りたたまれたパーツを展開し、蹴りを繰り出した。
「はぁっ!」
「ぅおわぶなっ!」
足の倍程の長さまで伸びた蹴りは、鋭い音を立ててネフテリアを襲う。間一髪倒れこんで躱したネフテリアだったが、その拍子に翼のパーツが片方取れてしまった。
「それが発生源だとは思ってねー! 最初からそのウエストパーツが怪しいからなっ!」
「っ!」
女の狙いは最初から腰のパーツ。それを聞いて驚愕の顔になるネフテリア。
近くで身構えているスレッドが、横で困った顔をしているクォンに解説をし始めた。
「これだけ強力なエーテルのバリアを維持するには、高出力のエーテルパックの存在も考えられます。それの可能性があるのは、あの中では大きい腰のパーツのみ。バリアの発生源がなんであれ、エーテルパックを破壊してしまえば、エーテル不足で無防備になってしまいます。このままでは……」
「あーうん、そうですねー」
「落ち着いている場合ですか! 助けた方がいいのでは!?」
危険な事だと教えようとするスレッドだが、クォンの反応はいまいち。逆にスレッドの方が焦ってしまう。
その間にも、ネフテリアは小さな防御魔法を腕の近くに発生させ、女の攻撃を防ぎ続ける。
(うーん……どうやってバレないようにはり倒そう……)
「身を護るアーマメントばかりだなっ。それだけ重要人物って事か! うははっ」
腕のパーツもバリア系のアーマメントだと判断した女は、逃がさないと言わんばかりに攻め続ける。腰のパーツを狙うが、ネフテリアは確実に腰を守る。
(コレ破壊されたら、お腹のプニプニ見えちゃうじゃん! 情報欲しいんだから、おとなしく別のところ狙ってよね!)
ネフテリアが腰のパーツを優先で護る理由は、今の体型を見られないようにする為である。決してハリボテパーツが大事なわけではない。そもそもネフテリアは自力で魔力を操っている。アーマメントは一切関係ないのだ。
勧誘しようとしたスレッドは、手を出すかどうか迷っている。同派閥の相手と直接争うのは、立場的にも良くないのである。だからこそ、まだ無関係なクォンに動いてもらいたい…のだが、クォンは困った顔のまま動こうとしない。
ちなみに、ピアーニャは幼すぎて巻き込むわけにはいかないと思い、最初から放置している。その本人は、後ろで白い球をコネながら、やる気の無い顔で様子を見ている。
(これが異界の? 一体どういう一派でしょう……)
まだ他のリージョンに関わって日が浅いサイロバクラム人にとって、相手はまったく未知の存在。ネフテリアを注意深く観察していたが、エーテルによる防御しかしていないように見える。これではいつか負けてしまうとしか思えないが、仲間のはずのクォンとピアーニャは見ているだけ。自分はここどう動くべきか、決めあぐねていた。
観察されている事を察しているクォンも、別の意味でどう動くか迷っていた。
(うーん、お姫様どうするつもりなんだろ。エーテル使ってるように見せかけるのに、魔属性しか使わないって言ってたし。そもそもクォンよりずっと強いし、アレ絶対危ないって設定で観察してるよ。横から手出ししたら怒られそう~。総長さんもなんか企んでるし)
実はファナリアにいる間に、ネフテリアやシーカー達と力比べをしていたクォン。ミューゼとパフィの連携に翻弄されていたクォンだったが、1対1の勝負ではそれぞれ互角でやりあっていた。ベテランシーカーには及ばず、ピアーニャやネフテリアには手も足も出なかったが。
ソルジャーギアの新人であるクォンは、シーカーの若手と同等のようだ。
戦力的にも似たようなものだと判断出来た事は、ピアーニャがソルジャーギアと親睦を深めようとした理由の1つである。
しかし、実際に足を運んで、謎の派閥争いに直接巻き込まれるのは予想外だった。せっかくだから可能な限り調べてみようと動くことにしたのだ。
(ミューゼオラたち、ダイジョウブだろうな? さっきからきこえる、おおきなオトにカンケイしてなければいいが……)
既に街並みごと打ち砕かれている淡い希望を胸に、ピアーニャは『雲塊』を見せつけるように、手でこね回している。
(そろそろいいか)
ネフテリアと女の様子を見ていたピアーニャが、動きを止めた。その時、
『うわああああ!?』
「なに!?」
周囲から悲鳴が上がった。そして全員が何かに引きずられるように、家の上や向こう側から、この場所に集まってくる。
いきなり起こったわけの分からない現象に、女は動きを止めて狼狽えている。
「な、な……」
「あーあ、時間切れかぁ。【珠封檻】」
「なはっ!?」
謎の派閥の能力を観察していたネフテリアだったが、ピアーニャの『雲塊』による一斉捕獲を合図に、その行動を終わらせた。魔力だけでなく、物理的にも閉じ込める魔力の球体で閉じ込めたのだ。
ピアーニャの方はというと、『雲塊』を薄く広く引き伸ばしていた。それも、よほど注意深く見ないと分からないくらいまで薄く、である。
ほぼ視認出来ない雲で、隠れて様子を見ている者全員を包み、一斉に動きを封じ、引き寄せたのだ。『雲塊』の事を知らないサイロバクラム人では、絶対に回避する事は出来ないだろう。今も何に捕まっているのか、全く分かっていない。
見えるようにこね回していたのは、周囲に対する何もしていない嘘アピールもあるが、集中して雲を広げる為でもある。見えないように辺りを覆うのは時間がかかるようだ。
女達は、全員恐怖と警戒を顔に出して、おとなしくしている。相手の手口が分からない事には、逃げる事もままならない。
当然スレッドも、何も分かっておらず、口を開けたまま目の前の光景を見ている。その隣では、同情の色がたっぷり込められた悲しみの目をしたクォンが、乾いた笑いと共に掴まった人々を見ていた。
実は、半分程は巻き込まれた一般人だったりする。
「さてと、くわしいハナシをきこうか」
「あっ、ハイ」
ピアーニャに声をかけられたスレッドは、姿勢を正して素直に答えた。その顔には、若干恐怖が混じっているようにも見えた。
「着いたのよー」
「なんか疲れたね……」
のほほんとしたパフィに対し、ムームーは酷く疲れた顔で建物に入ってきた。
後ろでは手を繋いだミューゼとアリエッタが、サイロバクラムの四角い花を持ってニコニコしている。なお、アリエッタの髪は銀色に戻っている。
「ソルジャーギアに帰ってきたけど、クォン達はまだかな?」
受付に聞いて、クォン達3人がまだ戻ってきてない事を確認すると、来るまでホールで待つことにした。
しばらくはソルジャーギア隊員にチラチラ見られながら、のんびり過ごすミューゼ達。実は、装着しているパーツには明確に曲がっている物もある為、サイロバクラムでは目立っているのだ。見られている本人達は、肌の色が違うから注目されていると思っている。
待っていると、入口の方から聞き覚えのある声が聞こえた。
「あ、いたいた。おーい!」
ネフテリアである。その後ろには、ピアーニャとクォンもついてきている。
ピアーニャはムームーを見ると、血相を変えて駆け寄ってきた。
その姿を見て、アリエッタも飛び出した。
「ぴあーにゃー!」
「げっ!」
慌てて立ち止まるピアーニャ。だが、アリエッタは逆に加速する。
ピアーニャは逃げられない!
「ぴあーにゃ!」
がしっ
「ぅえっ」
アリエッタの愛情を込めた抱擁によって、ピアーニャは動けなくなった。
(ぴあーにゃが、僕に向かって抱き着いてきてくれた!)
感激のあまり、妹分を抱きしめたまま涙目になる姉。
そのワンシーンを見た周囲の人々は、ほろりと涙し、温かい目で2人を見守っている。
「よかったね、ピアーニャちゃん」
「いやたすけろよ!」
温かい目のまま揶揄ってくるネフテリアには、本人から容赦なくツッコミが入った。
続いてクォンがムームーに近づく。
「ムームーさまぁ~!」
「お疲れ様クぉほぁっ」
アリエッタを見習って、全力でムームーの懐に飛び込んだ。その勢いのせいで、ムームーから変な声が漏れた。
「ムームーさまぁ、寂しかったですぅ」
「けほっけほっ……ひうぅぅ」
なんとなくぶりっ子になって甘えるクォンだったが、ムームーはそれどころではなかった様子。
クォンの奇行のお陰で、和んでいた空気が困惑によって上書きされたのだった。
自分の失態を察したクォンは、助けを求めるかのように、近くのミューゼに問いかける。
「総長さんとお姫様が心配してたけど、そっちは変なトラブルとかに巻き込まれなかったですか?」
実はピアーニャが血相を変えて駆け寄ったのは、ずっと気がかりだったこの事を確認する為だったのだ。
その問いに、ミューゼは迷う事なく満面の笑顔で答えた。
「おかしな事は何もなかったよ☆」