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第一章 〈始まり〉
「……ん……?」優太は、耳鳴りとともに目を開いた。
家にいたはずだったのに、感じたのは、鉄と油が混じった、重たい匂いだった。 「……最悪だ、これ……」
背中が冷たい。
床はコンクリート。寝ていたというより、放り出された感覚に近い。
「家で寝たはずだよな……確か、スマホ見ながら……」
起き上がると、視界に入ったのは――
異様に広い工場内部。
天井は見えないほど高く、
無数のパイプと歯車、止まった巨大機械。 どこかで、低く**ブゥゥゥン……**という音が鳴っている。
「夢……にしては、リアルすぎる」
そのとき。 「……あ、あの……」
背後から、か細い声。
振り向くと、そこには怯えた表情の少女がいた。
「あなたも……ここに?」
「え、ああ……」
「私、梨花。さっきまで……家にいたのに……」
その会話をきっかけに、
周囲から次々と人が集まってくる。
「やっぱり、拉致か?」
「こんな大人数を?」
「出口は……?」
最終的に集まったのは、十人。
自己紹介が始まる。
「健司だ。会社員。落ち着いて状況整理しよう」
「翔。……最悪だな、これ」
「誠。論理的に考えよう」
「亮……よろしく」
「大輔!まあ、なんとかなるっしょ!」
女性陣も名乗る。
「美咲です。看護師です」
「沙織。……冷静に動きましょう」
「奈緒……怖いけど、頑張る」
梨花は優太の近くに立ったまま、震えていた。
「とりあえず、探索だな」
健司の提案で、十人は固まって歩き出す。
「でもさ……誰もいないの、おかしくない?」
奈緒が周囲を見回す。
確かに。 動いている機械はほとんどない。 なのに、音だけがする。
「廃工場……だけど……」
誠が壁を調べる。
「この工場、使われてた形跡が新しすぎる」
「つまり……今も誰かが、管理してる?」
その瞬間。
ガン……
どこかで、金属が落ちる音。
「今の、聞いた?」
「……気のせいだろ」
だが、優太は――
**“見られている感覚”**がした。
通路を進んだ先。
突然、扉が閉まった。
「うわっ!?」
「ちょ、閉じ込められた!?」
自動シャッターが、背後で完全にロックされる。
「操作室だ!あそこ行けば……」
翔が言う。
そのとき、 天井のスピーカーがノイズ混じりに唸った。
「………………」
「今の、声?」
琥珀糖
「いや、ただの雑音だろ」
そういって、探索が始まる。
数分後、 複数の通路に分かれたフロアに到達した。
「二手に分かれるしかないな」
健司が言う。
そして、二手に別れると、
「絶対、戻って来いよ!」
翔が叫び、別ルートへ消える。
《優太たちの通路》
しばらく進んでいると、照明が、一つずつ消えていく。
ブツ…ブツ……と。
みんなは、異様な雰囲気を感じ、警戒する。
「……やばい、暗くなる」
「大丈夫、私がついてる」
美咲が梨花の肩を抱く。
そのとき――
前方の闇に、人影。
「……誰か、いる?」
優太が声をかける。
影は、動かない。
だが、 空気が、重くなる。
「……下がって」
沙織ではない。
奈緒が、直感的に言った。
突然、影が――動いた。
「逃げろ!!」
誰かが叫ぶ。
床が震え、 歯車が回り始める。
「なんだよこれ!!」
「こっちだ!!」
必死に走る。捕まったら死ぬと思った。急いで最初の場所に戻らねば…。
《翔たちのルート》
いつまで進んでも、何も見つからない。ただ通路が続いていた。
「なんなんだよ!クソが!」
翔がイラつき、先頭を走る。
「落ち着け!」
亮が叫ぶ。
その瞬間、何か物音がした。
嫌な予感がした。何かが起ころうとしている予感が…。
そして、翔が立っていた床が突然、
歯車に変わった。
「え――」 翔の悲鳴。
「翔!!」誰かが叫んだ。
間に合わなかった。 血と音だけが残る。翔は、歯車に斬られて死んで
しまった。
ここにいては危険だ。
急いでみんなは、通路を引き返した。
最初の場所に戻る。
再び合流した者たち。
「翔が……死んだ……」
梨花が泣き崩れる。
そのとき、暗闇から声が聞こえた。
その声は、「1人目…残り…9人」と
言った。暗闇から感じる 雰囲気は、
先ほどに通路で感じたものと 同じ
だった。
そして数秒後、その雰囲気は消える。
静寂が訪れた。
どんなにあの通路が危険でも、
進まなければこの工場からは
出れない。
「危険なのはわかる…。だけど、
このまま進まなければ、一生外に
出れない。だから…進もう。 」
優太が言う。
「そうだな…。 出口を見つけるには、
進まなければならない。」
健司が言った。
みんなが次々と進むことに賛成する。
「じゃあ…行こう…。」
そして、進みだすのであった…。