※グロいです、イギリスさんクソ可哀想です、ドイツくんも可哀想です、独英です
注意
本当に11月かと疑いたくなるほど、寒い日のこと
フランスに連れられ、何故かロンシャン競馬場に来ていた
「あの、何で競馬場に?」
隣で美しい競走馬達を見つめるフランスに疑問を投げかけた
「ん〜…?君は競馬の本場じゃん?だから連れてきた」
「えぇ…?」
確かに私は競馬の発祥の地だが、そんなに競馬を見ない事くらいフランスも知っているだろう
「それにさ、最近僕達遊んでなかったじゃん?」
「まぁ…」
私とフランスは、歴史的な経緯もあり、ライバル関係にある
だが、時々お茶会をしたり、お互いの国の観光地を周ったりと、友達という関係でもあるのだ
でも、最近私は恋人が出来たこともありそんなに遊びに行けなかった
「丁度僕の好きだった馬のラストクロップが走るからさ、イギリス連れていこうって思って」
「はぁ…ラストクロップが…なるほど…?」
ラストクロップ…と、言う事はフランスの好きだった馬の最期の子供という事だろう
子供…か…
「…….」
子供
カップルの、夫婦の憧れだろう
子供が出来て、更に家庭といものは温かくなるのだ。
子供というのは、女性からしか産まれない
私と恋人のドイツは男同士、女性からしか産まれない子供など夢のまた夢
きっと、ドイツだって子供が欲しいだろう
でも、私は男だから産めない
もしも、絶対に叶わない事が叶うなら、何も叶えるか
こんな質問を投げ掛けられたら、私は真っ先に子供を産める体になる事と答えるだろう
「…イギリス?どうしたの?突然黙って」
「ぇあッ…ご、ごめんなさい…」
フランスの声で暗い考えが打ち切られる
ふと見あげると、もうレースが始まりそうだった
「さーて、どうなるかな!」
ニヤリと笑い、例の馬を見つめるフランス
でも、私は少し気分が悪くなっていた
仕方の無いこと、きっとドイツだって子供の事は諦めているはず
そう思って、そう言い聞かせて、何とか気分を持ち直す
「お!始まった!」
気分を持ち直した頃にはゲートが開いていた
ジーッとフランスと一緒になって馬達を見つめる
「わわ!まじで勝った!!!!」
結果、例の馬が1着でゴールした
フランスの見た事のない笑顔、私はそれでまた良くない事を考えてしまった
自身の子供が運動会で勝った時の保護者の顔は、きっとこういうのなんだろうなって
1度考えてしまうと、もっと深く考えてしまうのは私の悪い癖だ
だって、だって…そのシチュエーションのドイツを思い浮かべてしまったのだから
幸せそうにかけっこを見守るドイツ、でも、そんな顔は私にはさせてあげられない。だって妊娠できないんだから、子供が産めないんだから
「イギリス?顔色悪いけど?」
「あ…すいません…」
さっきも同じだったな、フランスが話しかけていなかったらずっと暗い考えばかりしていた。偶然だろうが、流石は愛の国と言った所か…
「よし、いいもの見れたし、帰る?」
「あ、は、はい!」
このまま外にいては何度精神的にキツくなるか分からない
私はフランスのあとを着いていき、ロンシャン競馬場を離れた
「…あ、見てみてイギリス!」
「はい?」
パリの街中を2人で並んで歩いていると、フランスが何処か指さした
「フランス、指をさしてはいけませ…あ…」
フランスが指差した方向には、幸せそうにしている夫婦がいた
その夫婦の妻の方はお腹が膨らんでいた。そう、妊娠してたんだ
「凄いね、何周目かな?」
「あ…うぁ…」
「え?イギリス!?」
ずるい、ずるいずるい
「ねぇ!ちょっと!?」
私だって、私だって妊娠したい、子供欲しい…
「聞いてる!?イギリス!!」
やだやだやだ!!こんな…こんなの理不尽だ…何で…何で…私は…
「イギリス!!!!!」
「ッあ…」
あれ、痛い
ほっぺ…あ、フランスにビンタ…された…?
「あ、ごめん強すぎたかも…」
「いえ…すみません…変な事考えてしまって…変ですよね、ごめんなさい」
私は小さくお辞儀した
「う、うぅん…変…じゃないとは言えないけど、謝るほどじゃないから…」
見たことの無いものを見るような目をしたフランス
そんなフランスに、私は1つお願いをしてみる
「あの、フランス?できればなんですけど…ここら辺に赤ん坊の人形が売ってありそうな所ってありますか?できれば小さめだと嬉しいんですけど…ほら、キーホルダーにできるくらいの」
少しジェスチャーを交えながら、フランスに説明する
息子であるアメリカに言われて会話にジェスチャーを入れてみたが、中々難しい、流石陽キャなアメリカとしか言いようが無いくらい
「あー…えぇっとね…ん〜…あ、あそこならあるかな…」
するとフランスはスマホを取り出し、何かを入力し始めた
「ほら、このおもちゃ屋さん。大人二人で行くの、なんか気が引けるけど…ま、大丈夫っしょ!」
フランスはスマホを私の顔に近付け、説明を始めた
確かにこの位大きなおもちゃ屋さんならありそうだ
「えっと…ここからはどれくらい時間がかかります?」
「んー、5分くらい!」
「近!?」
まさかこんなに大きなおもちゃ屋さんがここから5分の位置にあったなんて…
「それじゃ、行こう?」
「はい!!」
私はいつもより目をキラキラさせながら、フランスについて行った
丁度5分歩いて、例のおもちゃ屋さんの前に着いた
「あるといいね、赤ちゃんのぬいぐるみ!何に使うかは知らないけどさ」
「…ありがとうございます。えっと…ぬいぐるみコーナーは…」
「あそこじゃない?」
フランスの指差した方向にある看板にはぬいぐるみと書かれていた
「流石ですね、フランス」
「こういうの探すの得意だからね〜!」
大人二人でおもちゃ屋さん(ぬいぐるみコーナー)を駆け回った。正直恥ずかしかったが、赤ん坊の人形が手に入ればそれでいい
「あ、これとかは?キーホルダーサイズだよ?」
「いいですね、これにします!」
探しに探して、やっと見つけたキーホルダーサイズの赤ん坊の人形
それを手に、レジへとまた駆けて行く
が、いざ会計が始まると、私はある事実に気が付き固まった
私、ポンドしかない…
フランスではユーロを使う、だが私、イギリスではポンドを使うんだ
チラリとフランスを見つめる、フランスは察しが良く、ユーロを差し出した
「もう、用意しててよね…」
「ごめんなさい…」
今日、謝ってばかりだな
会計を済ませ、袋に人形を入れて、また帰路に着く
「もう用事は無い?」
「はい、大丈夫です」
今日は何度もフランスに気を使わせてしまっているな
いつか奢ろう
「さて…もう僕達別れなきゃだね」
「そうですね」
フランスの家と私の泊まる予定のホテルは別方向だから、ここで別れなければならない
「ちゃんと無事に帰ってよね、無事に帰らなかったらドイツに僕殺される…」
「大丈夫ですよ、あの人は優しいですから」
ドイツさ本当に優しい
困っている人をほっとけない性格だ
…だから、大丈夫なんてもう思わない
ドイツに甘えてはいけない
「ならいいけど…ま、じゃあね、イギリス」
「はい、さよなら」
フランスと別れ、ホテルに着いて、明日の事を考えながら眠りについて、次の日ホテルを出て、タクシーでドイツの家へ向かう
「ふぁ〜…さて、ドイツに連絡しますかね…」
未だに上手くならないスマホの操作
カナダに何回も教えて貰ってたんですけどね…
何とかドイツに電話をかけてみると、2コール目で電話が繋がった
「イギリスさん?どうされました?」
優しい優しい恋人の声
「いえ、ドイツの家へ向かおうかと思っていまして」
「あ、そうだったんですね、合鍵渡しましたもんね!」
そう、3週間前だったかな、ドイツに突然合鍵を渡されたのだ
「はい、もうすぐでドイツ国内まで行くので、国内に入ったらまた連絡します」
「はい!気をつけてくださいね!」
電話を切って、ずっとタクシーの中でドイツに着くのを待っていた
国内に入った事をドイツに報告して、ドイツの家まで直行する
「えーっと…鍵は…あった」
ドイツに貰った合鍵で、家のドアを開く
「……………..」
ドイツ、待っててくださいね
私、頑張りますから
「やっと仕事終わった…」
やっとの思いで仕事を終わらせ、帰る準備をし始める
「ふぅ…結構、頑張りましたね…」
時計を見ると、現在時刻を指す時計の針は定時とは遠い位置にあった
「早く帰らなきゃ…イギリスさんも待ってるし…」
玄関を開けると、きっと優しい笑顔で待つ恋人がいるはずだ
それだけで、俺は幸せなんだ
「よし、タクシー捕まえられるかな…」
辺りを見回すと、タクシーが沢山来ているのが見えた
そのタクシーを1台でも捕まえれればミッションクリア
「よし…!」
俺は覚悟を決め、手を挙げてタクシーを捕まえる
それからは簡単な作業、行き先を伝えて車に揺られるだけ
10数分して、家の前に着いた
最近潤ったばかりの財布を取り出し、それなりの金額を運転手に渡してから車からおりる
「ただいま〜」
玄関を開けると、イギリスさんが待ってる…と、思ったら不気味なくらい真っ暗だった
「あれ?イギリスさん?」
真っ暗な玄関を上がり、電気をつける
「リビングかな…」
不安な気持ちを抱えながら、リビングへと続く廊下を歩いていく
「イギリスさ…ッ!?!?」
リビングのドアを開けると、信じたくない光景が拡がっていた
「ぁ…ドイ…ツ…!」
イギリスさんがナイフで腹を裂いていた、臓器が露出して、大量の血が床に広がりカーペットのようになっている。そんな状況にもかかわらず、イギリスさんは満面の笑みでこちらを見つめていた。
「なッ…何してるんですかッッッ!!!!」
もう何も考えずに俺はイギリスさんに駆け寄った
「ドイツ…えへへ…妊娠…できたよね…!頑張ったよね…!!」
「な、何言っ…は…?」
ナイフで裂かれた腹の中が目に入った。
その中には、赤ちゃんのぬいぐるみのキーホルダーが入っていたんだ
「ぁ…え…?」
ただでさえ頭が混乱しているというのに、さらに混乱させられた
「ッッッ…待ってくださいね、今から救急車を呼びますからッ…!!!」
震える手でスマホを取りだし、119に電話をかける
必死になって要件を伝える、声が震えているのは自分でも分かった
救急車がくるまでの時間、ずっとイギリスさんの手を握っていた
「…ドイツ…?何で握ってるんですか…?えへへ、褒めてくれてるってことですか?」
そう、笑顔で言われた時、まだ大丈夫と少し安心した
20分くらいしたら、そとから救急車の音が聞こえてきて、救急隊員が来てくれた
救急隊員によってイギリスさんは救急車に乗せられ、同行人として俺も乗った
病院に着くまで、俺の心臓は今までにないほど煩く鳴っていた
でも頭の中にはイギリスさんの事しかなくて、でも今の痛々しいイギリスさんの姿なんて見たくなくて、胸がギュッと締め付けられた苦しい
病院に着いてすぐ、イギリスさんは手術室まで運ばれた
手術室の前の椅子に凭れ掛かり、オーストリアに連絡をした
「ドイツ?こんな夜に電話なんて…あ、もしかして残業で連絡するのが遅れた事でもあるんですか?だったら明日でも良いですか?」
「…ごめん、でもこれは直ぐにお前に聞いて欲しいんだ」
幼馴染の聞き慣れた声に、さっきからずっと煩かった心臓が少しだけ静かになった気がする
「はぁ…?まぁ、良いですよ、貴方は昔から精神が不安定な事がよくあるんで」
「ありがとう…さっきね…?」
それから、さっきまでの出来事を全て話した
「……….うん…うん…」
先程の空気とは一変して、オーストリアは優しく相槌をうってくれていた
「ってことがあっ…て…もう俺…何だかよく分からなくなって…」
気付いたら冷たい涙が頬を伝っていた
「…深刻だね、きっとそれはイギリスは君との子を望んでいたのだろう、でも君とイギリスは男同士…だから、子が出来ない事に絶望してその行為に及んだのだろう。後、幼児退行の症状も少し見られるね」
「…そう…だったんだ…」
オーストリアは腕利きの精神科医、きっと彼の今言ったことは合っているのだろう
「ごめん、こんな時間に…少しだけ、楽になった」
「ドイツ?声が震えているよ?まぁ、無理も無いが…」
流石だな、オーストリアは。全部、全部分かるんだ
「ありがとう、全部分かった…もう、大丈夫…切るね」
「ッッ…待てドイツ!!早まるな!!!!」
どうやら、全部お見通しみたいだ
病院の屋上から見るベルリンの景色は本当に綺麗だ
ここは戦場となった事がある。沢山人が死んで、沢山の人が苦しんで
でも、ここまで美しくなれた
だから、きっとイギリスさんも元に戻ってくれるはず
そう、俺さえいなければ
「…ありがとうございました、イギリスさん」
もう、貴方に迷惑はかけたくないから
愛している貴方にとって、これが一番の最善択のはずだから
さよなら
コメント
3件
ありがとうございました、そしてごめんなさい ちょっと要素詰められなかったかもです