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「真希、帰ろう! その子を返して! 君を・・・犯罪者にしたくないんだ!」
俊太の声は切実で、血と汗にまみれた顔で真希を見つめる
だが、真希の目は狂気と悲しみに揺れ、晴馬を離すまいとさらに強く抱きしめる
警察官達が一斉に動き出し、ヘリの光が二人を照らす
報道陣のカメラがその全てを捉え、堤防の上は混乱と血の匂いに包まれた
「愛してるんだ!真希!」
「信じられないわ!あんただって最初あたしを捨てて逃げたじゃない!」
「今は違う!君を心から愛してるんだ!」
真希の息が荒く、彼女の視線は晴馬と、遠くの川面を行き来する、この子はあたしのもの、誰にも渡さない、 真紀の心の中で、過去の傷と現在の怒りが爆発し、すべてを飲み込む嵐と化していた
「男なんて! みんな同じよ! 嘘つきで! いやらしくて! 醜い生き物!」
真希の叫びは堤防の上に鋭く響き、夕日の赤に染まる川面を切り裂いた
彼女の瞳は燃えるようにぎらつき、過去の傷・・・宗教狂いの継父に虐げられた記憶、自分を騙し、心を踏みにじった塾の講師の顔が俊太の姿に重なり、憎悪と絶望の嵐となって爆発した
真紀の心は、まるで制御不能な嵐が全てを飲み込むように荒れ狂っていた
「殺してやる!みんな!みんな殺してやる!」
真希が晴馬を片腕で抱き、もう一方の手で血に濡れた包丁を振りかざしたその瞬間
突如として川から吹き上げた強烈な突風が彼女の体をぐらりと揺らした
髪が乱暴に舞い、服がバタバタとはためく
キャー―――「晴馬!」
晴美の絶叫が空を突き刺す。間一髪、俊太がよろめく真希の手から晴馬を奪い取り、自分の胸に抱き寄せた
だが、真希の体は風に押され、堤防の縁でバランスを崩す。そのまま彼女は悲鳴を上げながら、頭から5メートル下の急流へ落ちた
「真希ーーーーーーー!」
俊太が叫ぶ!
ザバン!と水しぶきが上がり、夕日に照らされた川面が一瞬赤く光る