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※ここからお話を現代に戻します(^_-)-☆
隣から聞こえてくる宮本の寝息を橋本は愛おしく思いながら、閉じていた瞳をゆっくり開き、壁にかかっている時計に視線を飛ばした。
「ぐっすり寝たと思ったのに、まだ6時前じゃねぇか。睡眠時間4時間で目覚めたくなかった……」
シルク素材でできたパジャマの袖を意味なくにぎにぎしながら、小さな声で呟いた。
宮本とお揃いのパジャマは色違いで、つい最近購入したばかり。ちなみに橋本はグレーで、宮本は濃紺。今まで揃いのものを買ったことがなかったのもあり、最初の内は身に着けるたびに、ふたりで照れてしまった。
ちなみにこのパジャマを購入した経緯は、朝方目が覚めた宮本が、全裸で背中を丸めて眠る橋本を見て、思わず欲情したことだった。
本人曰く『あまりにかわいい陽さんの寝姿に、襲わずにはいられなかったんですぅ』という言葉のままに、エッチなことがはじまったせいで、橋本の出勤時間が過ぎそうになった。
そんな宮本の暴走を防ぐためのパジャマだったりする。
『脱がす手間があるのも、またいいかも☆』なんていうセリフは、聞かなかったことにして……。
橋本とイチャイチャしようと毎回試みる、宮本の存在を無視して、現在一番困っていることは、一緒に暮らすマンションがなかなか見つからないことだった。集めたチラシを広げたり、ネットを検索して、昨夜は遅くまでふたりで膝を突き合わせて語り合った。
(とはいえ、語り合った時間の半分はイチャイチャしていたんだから、肌を合わせていたという言葉のほうが適切かもしれない)
イチャイチャせず、真面目にマンション探しに時間を当てたら、間違いなく早く決められるだろう。そして二番目にネックになっているのは、マンション近くに宮本のデコトラを停められる駐車場がないことだった。
「ったく……。雅輝のせいだっていうのに」
橋本がチラシを真剣に眺めて検討していると、隣にいる宮本の太い二の腕が腰に回される。
『なにか掘り出し物でもありましたか?』
顔を寄せてきたと思ったら、橋本の頬にキスを落とす。
「真面目に探せって。この物件良さげなんだけどさ、青空駐車場が歩いて30分くらいかかる場所なんだ」
『俺は別にかまいませんよ』
「駄目だ。疲れた躰を引きずって、30分も歩かせるわけにはいかない。絶対に次の日に響いちまうだろ」
橋本がトラック運転手の仕事のつらさを知っているからこそ、宮本の躰を考えて探していた。それなのに――。
『俺ってば陽さんに超愛されてますね、嬉しいなぁ』
橋本が持っているチラシを奪取し、がばっと抱きついて頬擦りしてくる。
「ぉ、おい!」
『陽さんに愛を返したいです。いいでしょ?』
反論を防ぐような笑みや、行為を断れないような潤んだまなざしに、橋本は簡単に押し倒されてしまったのだった。
(縋ってくる感じの捨てられた子犬みたいな目は、絶対に反則だろ)
しかもそれを無意識に発動させて、抵抗する橋本の動きを止めるあたり、天才的だと思わずにはいられない。
年上で腕力を伴うことなら、橋本が絶対的に上なのに、それを易々と無力化する宮本の能力の恐ろしさを、改めて思い知った。
「大好きな雅輝に殴る蹴るなんてことは、俺にはありえないしな。参った……」
参ったついでに、引越しのことを第三者に相談してみようと考えた。一番手っ取り早い人物、それは――。