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臣桜
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BrownSugar
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#オフィスラブ
猫塚ルイ

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店内に充満する不穏な空気
恐らく私を尾けた来た純也と
偶然やって来たリュカが揃い
二人が
鉢合わせてしまった
リュカと向かい合って座る
私と純也
バツが悪そうにソワソワとする純也と
対照的に平然としているリュカ
「えっと……何か頼みますか?」
私は
その場の空気感を薙ぎ払うように
立て掛けてあったメニューをテーブルに置いた
「私はベーコンエッグサンドにします」
「何になさいますか?」
そう言ってリュカは
メニューを純也へ差し出した
「……いえ、大丈夫です」
純也はただただバツが悪そうにするだけで
何も注文しなかった
「……そうですか、では私だけ失礼しますね」
***
店内に流れるゆったりとしたクラッシック
時折耳に付く食器があたる打音
今
それらの音だけがこの場を支配する
私たちは
向かい合ったまま無言で
リュカは食事を摂っている
「すみません、何かお邪魔する格好になってしまって」
気を遣ったリュカの問いかけにも
相槌を打つだけで言葉を発さない純也
食事を食べ終わると
コーヒーを飲みながらリュカが話し始める
「余計なお世話かもしれませんが……」
「もし宜しければお話聞きましょうか?」
「先ほどといい今の雰囲気といい何かあったのかと」
目配せを試みようと純也を見るも
目を合わせようとしない純也
このまま黙っていても
このまま沈黙が続くだけ
表面上接点のない三人では
会話の糸口も見出せない
「実は……」
純也の意志も
リュカの意図も
汲めないままに
沈黙を嫌い
私は
意を決して話始めた
「お見苦しい話で恐縮なのですが……」
「実は離婚話を——」
「お前なあ!」
あまりにも直接過ぎた私の言葉に
憤った純也が言葉を遮る
逆にリュカは
平然とそれを聞いていた
「それはプライベートな話を、失礼しました」
「と言うより、こいつの浮気疑惑がありまして」
それまで頑なに黙っていた純也が
場の流れを変えようと
必死に私へと責任転嫁を試みる
「ああ……それで揉めておられたのですね」
「しかしこんな早朝から会社近くまで……」
「後を尾けて来られたんですか?」
「……」
自分に都合の悪い話を振られ
再び押し黙る純也
「そもそも浮気の証拠があるのでしょうか?」
「それとも単にそう思っただけでしょうか?」
「はたまたヤキモチの類ですか?」
「そんなんじゃなくて、実際にこの辺を男と歩いてる所見たって知人がいるんです」
「この辺て勤め先ですから、同僚と食事したりあるのではないでしょうか?」
「確たる証拠が無いのであれば、あまり疑心暗鬼になるのもどうかと」
「……」
正論を突き付けられ
純也は再び黙ってしまった
「あまり過剰に干渉するのは逆に奥さんがかわいそうですよ」
「水川さんはそれで離婚を望——」
リュカが離婚の話に触れようとした刹那
純也が遮るように口を挟んだ
「夫婦の問題ですから、他人には関係ありませんので」
「……」
その純也の言葉に呼応するように
リュカが核心的な部分に触れてしまう
「水川さんの旦那様ですよね……」
「何の証拠もなく奥さんを疑っているようですが、あなた自身浮気をされてはいませんか?」
「それこそ何の証拠があってそんな事を!」
「失礼にも程がある!」
「先日、弊社に来社されてましたよね、ヒアリングの件で」
「間接的にではありますが、私は聴取を担当した者の上席にあたります」
「その件についても報告を受けています」
「大変失礼ですが……」
「あなたこそ弊社の購買部の者と恋仲にあられたのではないですか?」
「その者の調査報告からはそう挙がっています」
勢いよく憤った純也の
鼻先をへし折る恰好で
カウンター気味にリュカの言葉がほとばしる
「仰るように他人の分際で恐縮ですが、あなたは自分を顧みずに一方的に奥様に悪意をぶつけていませんか?」
「第三者視点で伺うと、平等には見えません」
「自分は全て良いが、些細な事でも相手は許せない」
「それでは奥様が離婚を考えるのも合点がいってしまいます」
「……」
純也は
一般論と正論でリュカに言い包められ
完全に言葉を失ってしまった
そして
私たちの間には
再び重苦しい沈黙が訪れた
しかし
話はそこで終わらなかった
「……で、水川さんは早朝から何故ここへ?」
コメント
1件
うわあ、第100話でこの重い空気……!読み終えて正直息が詰まりそうでした。リュカの冷静な正論が、純也の感情的な反論を一つ一つ丁寧に崩していく展開が印象的でしたね。特に「あなたこそ浮気をされているのではないですか」とカウンターを返すシーンは、思わず「おお…」と声が出ました。でも最後の「水川さんはなぜここへ?」がめちゃくちゃ気になる…続きが待ち遠しいです!