テラーノベル
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レトさんは橋の上で空を見上げていた
まるでそこに大きな月が浮かんでいるかのような気がした
声をかけようとしたが喉に絡まって離れない
小声でおばあちゃんが言う
「お声を掛けられては?」
「…れ、レトさん、」
俺は恐る恐るレトさんの背中に声を掛けた
するとレトさんはふわりと身体を俺に向けた
その瞬間、朝日がレトさんを照らした
少し下を向いている顔が照らされて、長く綺麗なまつ毛がきらきらと光って見えた
そして息をするかのようにゆっくりと瞼を上げる
そして少し目を細め柔らかい顔で
「おはよう。キヨくん」
と言った
「昨日はよく眠れた?」
からん、からんと下駄の音を立て、近づきながらそう尋ねてきた
「あ、とっても!よく眠れました!」
レトさんの質問で我に返ったキヨは慌てて答えた
「ふふ…ならよかった」
そう言ってキヨの頭を軽くぽんっと手をおいた
「朝ごはんにしよっか」
そう言ってレトさんはおばあちゃんの方へ向かって歩いて行った
「おはよう。美香子ばぁちゃん」
「おはようございます。レトルト様」
「…おい、キヨくんぼーっとしてないで置いてくぞ」
「えぁ!まって!」
いつもと違う朝
誰かにおはようの挨拶をしたのも
お布団で寝たのも
誰かに呼ばれるのも
全部が非日常すぎて、キヨは頭が追いつかなかった
中に入り、廊下を歩いていく
横を見ると大きなガラスがあり、中庭が広がっていた
そしてちゃぶ台と座布団が敷いてある部屋に入った
「さ、座って」
そろそろと座るとレトさんが俺の肩に手をぽんっとおいた
そんな固くしなくていいよとでも言っているかのような感じがした
レトさんも向かいの座布団に座る
「お待たせしました」
そういうとさっきのおばあちゃんがご飯をお盆で運んできてくれた
ことっ ことっ
と食器が並ばられていく
キヨは呆気にとられた
「ありがとう。さ、キヨくんお食べ」
「い、頂きます…」
恐る恐ると箸を手に取る
そしてお味噌汁に箸をのばす
そして口に含んだ途端
何故か泣きたくなった
「…ふっ」
レトさんはその光景を見るなり優しく微笑み、
「さ、俺も食べようかな」と言って食べ始めた
レトさんから聞かれることはなかった
でもそれがよかった
レトさんは言葉で言わせなくても分かってくれてる感じが伝わってきて
それも相まってか、暖かいご飯が身体に染みていく
じんわりと胸に熱が伝わる
言葉は交わさない
ただ一緒に食べる
それがキヨにとっては心地よかった
じっくりと実感できた
レトさんは微笑みを隠さないまま美味しそうにご飯を食べていた
まるでそれが当たり前かのように
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎⇝
コメント
1件
うわあ、このエピソード、すごく好きです……。朝日を浴びて「おはよう。キヨくん」って微笑むレトさんの描写、まつ毛がきらきら光る感じが鮮明に浮かんできました。それに、味噌汁を一口含んで泣きたくなるキヨの気持ち、すごくわかる。言葉にしなくても全部受け止めてくれる人の存在って、ああいう温かさなんだろうな。おばあちゃんのさりげない気遣いも含めて、日常がゆっくりと染み込んでいくような、優しい時間が流れてる回でした。