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そしてその日、午後五時に事務所が閉じると、ヒミコはイオンを除くホワイト・リズムのメンバー全員を旧万世橋駅跡のアジトに召集した。
最初に着いたのはトモエだった。ヒミコから動き易い服装で来いと言われていたので、ブラウンのニットセーターとスラックスを身に付けていた。トモエは壁の隠し扉を押して開け、ヒミコの日本刀と羽織を取り出して畳の上に置いて待っていた。
次にトワノが入って来た。普段の白地で薄汚れた物ではなく、黒一色のツナギの作業服を着て、手には大きなプラスチックの箱を抱えて来た。
ナミネは黒い、まるで燕尾服のような形で首元に赤い蝶ネクタイが付いたトップスとスラックスといういで立ちで現れた。両肩から太さ1センチちょっとの色とりどりの紐を斜めがけに体に巻いていた。トモエは「何だかマジシャンみたい」と感じた。
マユキは真っ赤な、スカート丈が膝まであるワンピースを着て現れた。明るい赤ではなく、少し暗く見える赤。深紅と言うべきだろう。左手で和風の日傘の柄を持ち肩にもたれさせていた。
ウルハは、オレンジ色のTシャツの上にネイビーブルーの男物のカジュアルスーツを着ていた。両手には黒い扇子らしき物を一本ずつ持ち、それを左右のベルトに差し込んだ。
最後にヒミコが、ダークグレイのパンツスーツ姿で現れた。腰まで届く長い髪は首の後ろで細い紐で結んであった。ヒミコは伊達眼鏡を外してスーツの上着の内ポケットに仕舞い、設計図などを入れる長い肩紐付きの筒に日本刀を収めた。
ヒミコが畳まれた羽織を床から拾い上げながら、皆に告げた。
「相手は韓国マフィアと日本のトクリュウや。多分三人以上おる。用意はええな? ほな行こか」
そのままビルの地下駐車場へ続く隠し通路に歩いて行く彼女たちを後ろから見つめながら、トモエは心の中で思った。
「似合ってるというか、あれがみんなの文字通りの勝負服なんだろうな」
車は七人乗りのミニバン。トワノがトランクに箱を入れ、ウルハが運転席に乗り込んだ。助手席にヒミコ、真ん中の三人掛けの座席にナミネとマユキ、最後尾にトモエとトワノが並んで座った。エンジンをかけながらウルハがトワノに訊いた。
「イオンの位置情報はどうなってる?」
トワノが手元のタブレットを見ながら言った。
「港区の海沿いの倉庫街です。標的は連絡通り、そこで午後七時に集合するようですね」
ヒミコが言った。
「十分間に合うな。あのアサミとかいう女が着く前に片づけるで。ウルハ、出発や」
「あいよ、アネゴ」
ウルハがそう言ってアクセルを踏み込んだ。ビルの地下駐車場から道路に踊り出た車は、夕闇が迫る秋葉原の街の中を軽快に駆け抜けて行った。
コメント
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読了しました。各メンバーの「勝負服」の描写が細かくて、キャラの個性が本当に際立ってますね。「あれがみんなの文字通りの勝負服」っていうトモエの気づきにグッときました。普段と違う装いで集まり、暗黙のうちに覚悟を決めるこの空気感、すごく好きです。ヒミコの「ほな行こか」で一気に緊張が走る感じもたまらなかった。次が気になります!