「お待たせ。出来たよ」
そしてたまに何気ない話をしながら完成させた料理。
テーブルに作り上げたハンバーグやサラダ・スープを並べて声をかける。
「おっ、すごっ」
テーブルに並んだ料理を見て反応してくれたのがちょっと嬉しい。
「どうぞ。召し上がれ」
「いただきます」
基本自分の為に料理作って食べるのも好きだけど、こうやって作った料理を誰かと食べるのも久々でいいかも。
「うんまっ!」
ハンバーグを食べた瞬間、速攻でおいしいと出る言葉。
「よかった♪」
「マジ、ウマい」
そう言いながらおいしそうに食べてくれる姿を見て素直に嬉しくなる。
ちゃんとこうやって感想伝えてくれるんだ。
「そんなおいしそうに食べてくれるなら作りがいある」
「だってホントにウマいし。さっきの話マジ約束ね」
「ん?何が」
「ご飯作ってくれるって話」
「あぁ、その話?」
「あれマジのお願いだから」
「ノリかと思った」
「ノリなワケないじゃん。こんなウマいならマジ毎日食いたい」
「お世辞上手いね~」
「オレめんどくさいの嫌いだからお世辞って言ったことないんだよね~」
軽く言うその言葉。
だけど、この彼の言葉は嘘じゃないような気がして。
彼が言う言葉は軽く感じるけれど、なぜだか嘘にも感じない。
どこまで本気なのかもわからないけれど、嘘だとも思えないから、つい彼の言葉や行動に惹かれて流される。
だから多分もっとこの人のことが知りたくなる。
「その分のお返しのご馳走は期待しといて」
こんな風にさり気ない気遣いも出来る人。
「なら、その時はうーんと奮発してご馳走してもらうから」
だから、ついその心地良いやり取りや空気感が楽しくなる。
「まかせといて」
そしてこんな風にさり気なく優しく笑う姿に嬉しくなる。
少しずつ何気ない約束が増えていくことに喜びを感じてしまっているのは、やっぱり私はこの人に惹かれ始めているということなのだろうか。
気紛れかもしれない約束を多分期待してしまっているということは、そんな口約束だけかもしれない言葉を信じたいと思っているからなのだろうか。
それから、ご飯を食べ終わって一段落して二人でソファに移動する。
早瀬くんはなかなかお酒が強いみたく、ご飯の後にも少しお腹も物足りなさそうだったので、おつまみも軽く作ってソファーの前のテーブルに置いて、今度は軽くお酒タイム。
「あっ、そういえばプロジェクトのリスト確認してピックアップしたんだけど 会社に書類あるから月曜渡すね」
プロジェクトの資料を確認してから直接渡せなくて、とりあえずそれを今思い出したので伝えておいた。
「あぁ。もうピックアップしてくれたんだ」
「うん。また月曜適当な時間持っていくね。時間合いそうならその時に相談でも」
「あ~。月曜か。月曜は昼から外回り行くから10時くらいならまだ会社いるかな」
「了解。じゃあ10時に持っていくね」
「それさ~。毎週決めとかない?」
「何を?」
「プロジェクトのミーティング。とりあえずまずは毎週月曜10時に、前に打ち合わせした第2会議室で。そしたら毎週その予定で時間空けとくからプロジェクトも進めやすいし」
「うん。いいけど」
「だからもう仕事の話はナシね」
「なんで?」
「仕事モードの二人じゃなく今はプライベートの二人の時間だから」
確かに。
仕事の話になると自然に仕事モードになってしまうかも。
「仕事じゃない時間はドキドキの時間楽しまないと」
そして急にモードが変わった。
さすがにイキナリこっちモードに切り替わるとドキッとする。
「ねぇ。ドキドキの基準と範囲ってどこまで?」
「それはオレが透子に対してってこと?」
「そう」
この人が思うドキドキの関係とは、どういう関係でどこまでの関係なんだろう。
「それは透子がオレにドキドキしてくれるならどこまででも。透子がオレを欲しがってどうしようもなくなるくらい限界になるまで・・かな」
そんな言葉もこの人は余裕で微笑みながら色気を含みながら告げてくる。
もしホントにそこまでドキドキが限界に到達して夢中になってしまったとしたら。
そこからこの人はどうするのだろう。
そのドキドキに応えてくれるのだろうか。
「それは私がそうならないと成立しないってこと?」
「だってオレはいつでもそういう気持ちでいるから。透子がオレを求めてくれないとどんなドキドキも成立しない」
そのストレートに伝えて来る言葉は信じていい言葉なのだろうか。
「前から言ってんじゃん。透子さえその気になればいつでもどこまででもウェルカムだって♪」
「軽っ」
そこまでは伝えてるくせに、そこにどこまでの気持ちがあるのかはわからない。
「まぁ、どこまで本気に思うかは、透子次第」
ほら。
結局は自分じゃなく、私に判断を委ねる。
この人は一度でも誰かに本気になったことはあるのだろうか。
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