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「……怪我人にナニしてんすか、総統ともあろう人が」
笑顔を浮かべつつかなりのお怒りモードのしにがみくんは医務室のベッドで眠るトラゾーをチラリと見る。
「煽ったトラゾーさんは起きたら叱りますが、クロノアさん、あんたはホントに…。死にはしませんけどめっちゃ貧血起こしてたんですからねトラゾーさん」
栄養と輸血の点滴を刺されて静かに眠るトラゾーの顔は多少血色が戻っていた。
あのあと、失神したトラゾーに焦って通信機で慌ててしにがみくんを呼んだ。
飛んできたしにがみくんは一瞬固まったけど的確に指示を出してトラゾーを医務室に運び込んだ。
ちなみに俺はぶっ叩かれた。
「……事情は察しますけど、怪我人に無茶をさせるのは医療班としては看過できませんよ」
適切な処置を受け、出血も止まった。
「…はい、すみません」
「僕びっくりしたんですからね。クロノアさんがトラゾーさんを殺したのかと思ったんですもん」
「いや、マジでごめんなさい…」
「話し合いするのかと思ったら……まぁ、トラゾーさんがちゃんと自分の意思を伝えることができるようになってきたと思うようにします」
点滴のクレンメを少し締めて、滴下の速度をゆっくりに落とした。
「僕は別の任務入ったんで、失礼しますね」
「うん、忙しいのにごめんね」
「あなたに比べればなんてことないですよ」
そう言ってしにがみくんは医務室を出て行った。
小刻みに揺れるシーツたち。
「…トラゾー、起きてるんでしょ」
「…っ、ふふ…」
「……笑うなよ…」
「ふふっ…、しにがみさんに怒られるクロノアさんってやっぱり面白いなって」
トラゾーはくすくす笑って、点滴などの針が抜けないようにゆっくり起き上がった。
「しにがみさんの任務が終わったら怒られに行かなきゃですね」
「叱るって言ってたけど、大半は心配かけたことの愚痴になると思うよ」
「……はい、分かってます」
血色が戻りつつある肌。
その顔の半分ほどを覆う大袈裟に巻かれた包帯は心配の表れなのだろう。
「またしばらくはじっとしてないとダメですね」
「自分のこと犠牲にしすぎだからねトラゾーは。もっと自分を大切にしてほしい」
「…肝に銘じます」
「これは総統としての命令。それと、恋人としてのお願いかな」
「……その言い方は狡いです」
困った顔をするトラゾーの針を刺してない方の手を握る。
「返事は?」
「……うん」
「ふっ、いい子」
笑いかけるとぷいと顔を逸された。
「一個しか違わないのに子供扱いしないでください…」
「俺にとってトラゾーは頼れる仲間であって、大切な友人であって、可愛い弟であって、」
一旦言葉を止めてじっと少し顔の赤いトラゾーを見つめる。
「?」
「愛おしい恋人だよ」
「っ//////⁈」
更に真っ赤になった彼の握っていた手の甲にキスを落とした。
「何一つ譲れないものだから」
「っぅ〜〜〜!…寝ます!」
握っていた手をブンブンと振られて離される。
そのまま布団の中に潜ってしまったトラゾーに吹き出した。
「あんた笑うな!しにがみさんにセクハラされたって言ってやるからな!」
布団の中でくぐもった声はそう告げる。
「ちょっと!それはダメだろ!」
「知りませーん!」
「おい!」
「………」
急に黙られて、もしかしてまた失神したのかと焦り始めた。
ひょこっと顔だけ覗かせたトラゾーは俯き気味に小さく呟いた。
「俺にとっても信頼のおける仲間であって、本音の言える友人であって、カッコイイ兄であって………愛おしく思う恋人です」
そうしてまた布団の中に隠れてしまった。
「……!」
真っ赤であろう自分の顔。
叫びそうになる口元を押さえて、白い塊と化したトラゾーに囁きかける。
「嬉しいよ、…それぺいんとにも言ってあげたらすごく喜ぶと思うよ」
「……機会があれば」
今更恥ずかしさが込み上げてきたのか頑として布団からは出てこなかった。
「しにがみくんにも同じようなこと言ってあげて?彼もとても喜ぶよ」
「…上に同じく」
椅子に座り、ぽんぽんと塊を軽く叩く。
「もう寝な?」
「…はぃ」
一定のリズムでぽんぽんと叩いていたら、暫くして静かな寝息が聞こえ始めた。
苦しいだろうと布団を掛け直す。
一層に幼くなる顔。
その表情は嬉しそうに見えた。
「おやすみ、良い夢を」
そう囁き、トラゾーが起きるまで傍にいることに決めた。
起きた彼にもう一度、愛してるよと伝える為に。