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返事は、
すぐには来なかった。
それでも、
ジュンは
スマホを置かなかった。
画面を閉じて、
また開く。
何度も。
通知がないことを、
確認するためじゃない。
——まだ、
終わっていないと
思いたいだけ。
夜の街は、
相変わらず明るい。
ネオンも、
音楽も、
笑い声も。
全部、
昨日と同じ。
なのに。
胸の奥だけが、
落ち着かない。
「……は」
小さく、
息を吐く。
自分でも、
分かっている。
返事がないのは、
普通のことだ。
忙しいだけかもしれない。
寝ているだけかもしれない。
それなのに。
——考えてくれてる。
——距離を置いてるだけ。
そう、
意味を足し始めている。
スマホが、
震える。
一瞬、
心臓が跳ねる。
でも、
違う。
店の連絡。
現実が、
割り込んでくる。
「出るよ」
短く返して、
画面を閉じる。
鏡の前。
仕事用の顔。
余裕のある笑み。
女に困らない男。
それを、
何度もやってきた。
それで、
生きてきた。
なのに。
Rの前では、
その顔が
うまく作れない。
——どうして。
分からないことが、
増えていく。
距離。
名前。
沈黙。
でも。
沈黙は、
拒絶じゃない。
そう、
思いたかった。
Rは、
何も言っていない。
責めてもいない。
突き放してもいない。
——だから。
「……まだだろ」
誰にでもなく、
呟く。
言い聞かせるみたいに。
店に入る。
光が、
眩しい。
「ジュンくん」
名前を呼ばれる。
笑う。
触れられる。
求められる。
それなのに。
満たされない。
——Rは、
こういうふうに
触れなかった。
それが、
頭から離れない。
休憩。
裏口。
タバコに、
火をつける。
煙を吐く。
夜空は、
暗い。
スマホを、
もう一度見る。
未読のまま。
それでも。
不思議と、
絶望はしなかった。
——完全には、
切られていない。
——まだ、
選択肢の中にいる。
そう、
思い込む。
その方が、
楽だった。
返事は、
ただの事実だった。
希望に変えたのは、
俺だった。