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1週間ほど経っただろうか。
紫水の過去イチ素早い予定調整により、焼肉の会、基、私が2人に謝罪をする会がセットされた。
紫水なら能力的にも体力的にも心配する要素は私の中に皆無で、もはや罪悪感もない。ただ、面倒ごとを押し付けたのは事実なので、指定された店に心して出向く。事前に調べた結果だと少々単価がお高めだけど大丈夫だろうか。
「今日の乾杯の音頭は『申し訳ありませんでした』でいい?」
「やめてよ辛気臭い」
梓がゲンナリした顔で運ばれて来たビールジョッキをそれぞれの前に置く。
「乾杯で乾杯以外の言葉なんか聞いたこと無いわ」
「弓家らしいな」
タブレットでメニューを片っ端から打ち込んでいくこの男は相変わらずの調子で。
「うん、紫水は全然平気そうだね」
思わず口を滑らせると、タブレットから顔を上げた紫水にギョロリと睨まれる。
「そういうのを、苦労を押し付けた本人が言うのは感心しませんね」
「大変申し訳ございませんでした」
勢いよく頭を下げる。今日だけはどれだけでも頭を下げよう。土下座の叩き売りだ。
「まあでも。あのパートナーはまじでスタッフの負荷見てんな」
「そうなの?」
「普段は直属のマネージャーとやってるけど、割と細かくモニタリングされてるっぽい」
「へー。パートナーってそんな暇あるっけ?」
梓の疑問はごもっともだ。
「マネージャー曰く、彼自身の負い目がありそうな感じだけど」
「…負い目?」
梓と私の声が重なる。あまり豆さんと結びつかない言葉だ。
「なんか、秘書経由で無理やり引っ張り出して来たスタッフだから、最低限の人間的な生活ができる状態にはしてやりたいとかなんとか」
ま、俺も聞いた話だからわかんないけど。つか別に俺平気なんだけど。
「そうなんだ」
そんな話は私は聞いていないので動揺せざるを得ない。紫水本人も今や興味は運ばれて来たキムチに移っているようで、話がそれで途切れてしまう。
「なんか思ってた以上に優しいね、彼」
ナムルを取り分けながら梓が静かに言う。
「だね」
「まどかは毎日一緒に働いてるわけじゃん、どうなの実際」
急激に向いた矛先に、私の頬が熱くなる。これは、テーブルの真ん中の網のせいだということにしてもいいだろうか。
「どした?」
何を言おうか迷って、口を開いて言葉を探していれば、隣にいた梓がトングをカチカチ鳴らしてこちらを覗いてくる。
「あ、うん。優しいよ大豆生田さんは」
「おいおいおい」
キムチに入れ込んでいたはずの紫水が意識をこっちに戻してくる。
うめぼっち

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臣桜
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鷹槻れん/鷹槻うなの

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#恋愛
水無月 京
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「業務範囲外のこと散々させられて優しいもクソもあるかよ」
「いや、そうなんだけど…」
「大体特別手当もらえたわけ」
「貰えるわけないじゃん。でもこないだご飯ご馳走してもらった」
「はぁ」
そんなんで満足するなんてチョロくて良いですね。
紫水の言葉は正論だけに腹がたつ。梓が「黙れ小僧」と一喝してくれなかったら、多分私が拳で反撃していたと思う。
「紫水はさ、ロジックに頼りすぎてエモーショナルな面を無視しがちって言われない?」
「いやー仕事で感情を考慮する場面に出会ったことないすね」
「…アンタ、そのうちパワハラで訴えられそう」
梓がドン引きしている。紫水は、確かに昔からロジック一択の論理バカだ。
「やだなあ、俺優しいって下からは好評よ?」
「どうせそれ碌なレビューもしないで業務巻き取ってるだけでしょ」
梓が看破すれば「あらばれた?だって面倒いもん」と管理職に限りなく近い立場の人間として最低なことを宣う紫水。
「馬力で押し通すにはもうそろそろ限界なんじゃないの」
「まだ俺若いんで」
「年齢の話じゃないわよ」
ため息をついてジョッキを空にする梓は少し疲れているようにも見えた。まあこの応酬を日々繰り返していれば疲れるのも頷ける。
「というか、別にこの男の話はどうでも良いのよ」
梓は丁寧に網に肉を並べながら話を切り替える。肉が焼ける匂いが胃袋を俄然活性化させていく。紫水は「肉が焼けた時用に必要だから」と、全員分のビールを追加注文しているから呆れる。
「まどか。毎日大豆生田さんと一緒にいれば、何か面白い話の1つや2つあるでしょ?」
あの清廉潔白な男にも意外なネタが転がってるでしょ?
先ほどの疲れた表情とは一転して、キラキラした瞳で訴えてくる梓はひどく可愛いけれど、同時にひどく厄介だった。
特に、彼への気持ちを自覚してしまった今となっては。