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yuka @猫耳メイド
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#あべさく
めかぶぷりん
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雪月❄️
365
ベッドフレームに繋がれている鎖の方で何か作業をしていた衣吹を見ていると、不意に、鎖がフレームから外れて床に落ちた。一体何をするつもりなのかと身構えていると、その鎖を持った衣吹がベッドから離れるように歩いて行く。
ある程度のところまで離れると止まり、衣吹は口元に笑みを浮かべ、鎖を上方へ放り投げた。すると鎖に引っ張られた阿部は意思とは関係なしに歩かされ、更に両手首を強く上に引っ張られた状態で固定される。
そのまま、目の前に立った衣吹に顎を掴まれて無理やり顔を上げさせられた。
「フィックス」
瞬間、体が固定されたように何も動かせなくなった。指や顔だけではない。視線すらも動かせず、瞬きもできない。
「さ、準備できたよ。喋れるようにだけはしてあるから。どうぞ」
衣吹が離れると、その後ろから近づいてくるのは、柊と久世。いつの間に、そこにいたのだろうか。
💚「柊さん……」
眼鏡を外した柊が阿部の顔を覗き込む。吸い込まれるように、阿部は柊の目を見させられる。その目の奥に、ランタンが灯った。
すると、何かが頭の中にするりと入ってくるような感覚に襲われる。
「ああ、効きましたね」
💚「……や……ひいら、ぎ、さん……やめ、て……」
「すみませんね。これも仕事ですから。『あなたの隠しているものは何ですか?』」
💚「っ……言わ、ない……」
「ふむ。範囲が広いといけませんか……では、質問を変えましょう。『《電脳》とは、なんですか?』」
💚「あ……電脳、は……俺、の、電子回廊、と、電磁気流、と、頭脳が、合わさって、できた……」
「では、『電脳はあなただけのものですか?』」
💚「そう……俺だから、使える……俺から離れたら、意味、ない……」
「ふむ。今はここまでです。以前よりも制約が緩くなりましたので、次は五時間後ですね」
「よいでしょう。彼にも状況を整理する時間は必要だろうからね。衣吹、解いてあげなさい」
「ほーい」
衣吹がパチンと指を鳴らすと、阿部の体が一気に脱力し、鎖が緩んだことでそのまま床に倒れ込んだ。
久世と衣吹は部屋からいなくなり、残った柊は阿部を見下ろした。阿部の体が、小刻みに震えているのが分かる。
近づいた柊は、そっと繊細なものに触れるように阿部を抱き上げると、そのまま白い簡素なベッドの方に連れて行き、阿部を寝かせた。同じベッドの縁に柊も腰かけ、阿部の方を見る。
💚「……柊、さん……」
「……すみません。仕事はきちんと熟さなければなりませんから」
💚「……そっか……お仕事……柊さんの、意思じゃ、ないの……?」
「電脳に興味はあります。ただ、その為に傷つけるのは好みではありません」
💚「ああ……柊さんは、ファントムが俺を傷つけようとした時も、ちょっと怒ってたね……そっか。お仕事か……それは、柊さんにとっては、避けられないんだね」
「そうですね。あの方の傍にいる以上、避けて通れるものではない」
💚「……わかった。柊さんにそのつもりがないんなら、それが分かっただけで、十分だ」
「……責めないのですね」
💚「悪気がないのに? 本人の意思かそうじゃないかって、重要なんだよ。特に柊さんは、そのせいで心を痛めてる。なら、俺が柊さんを責める理由はないよ」
「……やはり理解できませんね、あなたは」
💚「それでいいよ。俺の気持ちの問題、だから……」
うとうととしてきたのか、阿部の目が閉じたり開いたりを繰り返す。
「眠ってください。五時間後には再開しますが、その間だけでも、忘れて眠るといい」
💚「そう、だね……おやすみ、なさい……」
ゆっくりと阿部の目が閉じられ、規則正しい寝息が聞こえてきた。
柊は、阿部の両手首を拘束している鎖に触れる。異能封じの首輪も付けたまま。それが、逃がさないという証のようになっている。
「……目黒蓮からのお叱りくらいは、覚悟しておきましょうか」
そう呟き、阿部の寝顔を見てから立ち上がると、柊も部屋から出て行った。
宮舘からの招集で、皆が応接間のソファに集まる。
💛「あいつの名前、久世朔哉から、拠点をいくつか割り出した」
💜「その中でも、最近、久世が頻繁に通ってるっぽいのが、ここ」
阿部のタブレット上に映し出された地図の一点を指す。
🖤「じゃあ、すぐにでも乗り込んで……」
💛「ダメだ」
💙「はあ!?」
🩷「何で?!」
💜「今はまだ、行けない。久世側の異能力者が未知数だから」
🖤「っ、そんなこと言ってたら、助けになんて行けないじゃないですか!」
先ほどまで、冷静になってみんなの背中を押していた目黒だったが、それが、みんなの為だったからできたことだと、その言葉で気付いた。いつも、みんなのメンタル面をサポートしてくれているのは目黒だから。沈んだ気持ちを上げる為に、抑えていたにすぎないのだろう。
けれどそれを、先ほど目黒に背中を押されたラウールが止める。
🤍「状況を整理するよ。今わかってる久世側の戦力は、異能の分からない久世。変身と金縛り系の異能を持った大学生の男。催眠の柊。阿部ちゃんの体を転移させた異能力者。めめが会った、影使い。事務所襲撃の爆発に紛れ込ませてた粉を使う異能力者。その他にもいる可能性はある。この人数を相手に、無策で飛び込んだらどうなるか、わかんない?」
❤️「全員拘束されるか、戦闘不能にされるか、あるいは殺されるか。阿部と違って、俺らを生かすメリットはないからね」
💜「そう。だから今は動けない。ファントムの時は、相手にするのは一人だけだった。柊は非戦闘員だし、内部に潜っためめがいて、阿部ちゃんも探ってて、状況の把握はできてたんだよ。俺も内部に入れたし、全員が駆け付けて倒せた。でもあの時だって、飽和暴走したファントムを止められてない。最終的には芙蓉の力を借りるしかなかっただろ」
💛「ファントム一人でこの様だ。対策を練るしかないんだよ」
🖤「……けど……こうしてる間にも、阿部ちゃんがどうなってるか……」
🩷「でもそうだよね……蓮の気持ちもわかるけど、俺らが捕まるか傷つけられるかしたら、阿部ちゃん、余計に苦しむことになる。今すぐ助けに行きたいけど、それじゃダメなんだ。阿部ちゃんを助け出すには、無暗に突っ込めない」
💛「暴走機関車の佐久間だって我慢してるんだ。お前らも、冷静に状況を見ろ」
🩷「ん? なんか引っかかるな」
💜「とにかく、相手の戦力の分析と、どうやって対処するかを決めないと動けない。柊の催眠は相手にとって必要不可欠だと思う。実際、阿部ちゃんの電脳について詳しくはまだ分かってないはずだから。マテリア鑑定は、異能の特徴は分かるけど、詳しく分かるわけじゃないって言ってたし。それに、電脳は正式には異能じゃないからマテリア鑑定で出るとは限らない」
🤍「柊の催眠って制約付きだったよね?」
🖤「……質問は三回まで、次に使えるのは20時間後」
🤍「想像増大でマテリア量を増やして時間を減らしたと考えると、夏音の六日周期が五日周期に変わったから、六分の一が減ったとして、20時間だから……16時間くらい? でもこれ、確定条件じゃないから、もっと短くなってる可能性もある。そうなると、10時間くらいで使えるかもしれない」
💜「向こうも夜通しやるわけじゃないと思う。目的が阿部ちゃんの電脳を使わせることなら、阿部ちゃんが衰弱してたら意味がない。無理に使えばオーバーロードどころか、飽和暴走する。ここまできて、久世がそんな危険な賭けに出ると思えない」
🤍「うん。あんなに慎重になってたのに、ここで電脳が消えるかもしれない手法を取るわけないよ」
💜「なら、猶予はまだある。今の内に考える。考えて、阿部ちゃんを助けに行く」
🖤「……分かりました」
そう言って目黒は一人、コントロールルームに入った。ゆっくりと、それでも真っすぐに椅子の方に行って、そっと机を撫でる。
いってくるね、と笑って電脳空間に入った阿部。久しぶりの電脳空間に、嬉しそうだった。なのに、それが罠だった。
画面の中で鎖に囚われて、困惑する阿部の姿が目に焼き付いてる。傍にいたのに、体すらも守れなかった。
でも今は、悲観している場合じゃない。
机に触れたまま、目黒は歌を紡いだ。
コントロールルームから聞こえてくる目黒の歌に、皆が顔を上げてコントロールルームを見る。
🩷「SBYだ……」
🤍「この歌が歌えるってことは、めめも大丈夫そう。ちゃんと気持ちの整理、つけられてる」
💜「みんな、先に進める。終わらせるんだ。久世との攻防を。もう、阿部ちゃんを解放するんだ、今度こそ、絶対に」
道標編 終
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