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緊急会議、開催。
「ナオト」
「……はい」
「このガキは何?」
「ガキじゃねえ! 俺は賞金稼ぎ『影使いのシャドウ』だ!!」
「今、あたしは、ナオトに話しかけてるの。あんたはしばらく黙ってなさい」
「なっ! こ、この野郎! あんまり調子に乗ってるとバラバラにするぞ!」
「ナオトに勝てないようなガキがあたしに勝てるわけないわ。やめておきなさい」
「言うじゃねえか。やんのかコラァ!」
「あたしはどっちでもいいわよ。ほらほら、かかってきなさいよ」
巨大な亀型モンスターと合体しているアパートの二階にある俺の部屋でミノリ(吸血鬼)とシャドウがお茶の間でバチバチと火花を散らしている。
はぁ……どうしてこんなことになったんだろう。
まあ、確実に俺のせいなんだが。
「ナオト、あんたこいつの故郷がないからって、ここに居座らせる気なの?」
「え? あ、ああ、まあ、そうだな。俺はそのつもりでいる」
ミノリ(吸血鬼)は大きなため息を吐《つ》く。
「やめておきなさい。こんな野良犬みたいなやつ、ほっといても一人で生きていけるわよ」
「てめえ、今俺のことバカにしたな!!」
「うるさいわね。キャンキャン吠えないでよ。耳障りだから」
「な、なんだと!!」
二人ともケンカはやめてくれ。
ここ、一応アパートなんだから。
「あー、その……こいつは俺を殺そうとしてたけど、それは生きていくのに必要なお金が必要だったからだと思うんだ。だから、そんなものなくてもここでならちゃんとした生活ができるってことが分かれば……」
「おとなしくなってくれるかもしれない……でしょ?」
「あ、ああ、その通りだ」
ミノリ(吸血鬼)は俺とシャドウ以外のメンバーを集めると俺たちに聞こえないように小声で話し合いを始めた。
それまで俺とシャドウは指相撲をしていた。
しばらくすると、ミノリ(吸血鬼)がこちらにやってきた。
「みんなと話し合った結果、こいつをどうするかはあんた次第ってことになったわ。ナオト、あたしたちはあんたがあんたらしくないことをしたら全力で阻止するけど、そうじゃなかったら基本的にあんたの決定には従うわ。だから……よく考えなさい」
「……おう」
な、なんだ? 部屋の空気がガラッと変わったぞ?
これはいったい……はっ! ま、まさか! これはこいつの……ナオトの仕業《しわざ》なのか!?
シャドウのやつ、なんかビビってるな。
なんでだ? まあ、いいや。
えーっと、こいつの故郷はもうなくて賞金首である俺を殺して生活費を手に入れようとしていた。
けど、それは失敗した。
このままだとこいつの人生は今まで以上に辛《つら》いものになってしまう。
俺はこいつに人生の楽しさを知ってほしい。
ああ、そうか。最初から答えは出ていたんだ。
「ミノリ……」
「何?」
「俺はこいつに……シャドウに人生の楽しさを知ってほしい。だから……」
「最後まで言う必要はないわ。あんたなら、そう言うだろうなーって思ってたから」
「そうか。お見通しか」
「ええ、そうよ。でも、決めたからにはしっかり面倒見てあげなさいよ? 一応、あたしたちもできる限り協力するけど」
「ありがとう。俺のわがままを聞いてくれて」
「別に大したことじゃないわよ。ねえ? みんな」
みんなはうんうんと頷《うなず》いている。
まったく、お前らって本当に俺のこと信頼してるんだな。
呆れるくらい信頼度高くて普通に泣ける。
「ありがとう、本当にありがとう。ということで、お前は今日から俺の家族の一員だ。これからよろしくな、シャドウ」
「え? あ、ああ、よろしく」
俺がシャドウと握手をすると、みんなはパチパチと拍手をした。