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「……っ、ち、近寄らないでくださいませ。わたくしは……決して、屈したりはいたしません。このように鎖で手足を縛り、暗く湿った部屋へ閉じ込め、逃げ場を奪ったからといって……わたくしの心までは、あなたの意のままにはならぬのです。
……ふふ、哀れですね。狐を捕らえ、檻の中に押し込めたことで、すべてを掌握したとでも思っていらっしゃるのでしょうか。
たしかにこの身は自由を失い、爪も牙も無力にされております。けれど、誇りまで鎖で縛れるはずがございません。
あなたがどう手を尽くそうとも、わたくしは最後まで抗い続ける。それが……九尾としての矜持でございます。
ですから――そのように愚かしく、わたくしを弄ぼうなどと……思い上がらないことです」
〔中盤:乱れ・揺らぎ〕
「……っ、はぁ……な、なぜ……。近づかないで、と……わたくし、確かに申し上げましたのに……っ。
どうして……どうして身体が、このように熱を帯びて……。ち、違うのです……いや、いやなのです……っ。
わたくしは……っ、誇りを……誇りを手放すつもりなど……決して……っ。
なのに……なぜ、指先が震えるのですか。なぜ、声が、こんなにも乱れてしまうのです……。
従っているのでは、決してございません。ただ……抗えなくて……思うように理性が働かず……こんな……っ、くやしい……。
だめ……敬語が……っ、保てない……わたくし、こんな姿……見せたくなど、ないのに……っ。
あぁ……はぁ……どうして、どうして声が……とまらないのです……。
やめて……やめてくださいませ……。聞かないで……っ、この乱れた声を……」
〔終盤:堕ちる直前〕
「……もう……もう、無駄かもしれませんね……。
理性も、抵抗の意志も……すべて……あなたの前では、意味を失ってしまって……。
声も……心も……すでに……あなたに縛られているのです。
いやだ、いやだと……何度も、申し上げてきたはずなのに……奥の方で……どうしようもなく応えてしまう自分が……惨めで、情けなくて……。
あれほど誇りを抱いていたわたくしが……この有様とは。
どうぞ……どうぞ嘲ってくださいませ。抵抗を誇りとしてきた九尾が、こうして……あなたの足元に堕ちてゆくさまを。
わたくしは……もう否定できません。この身も、この心も、抗うほどに絡め取られ……ただ堕ちてゆくだけなのだと。
……ふふ……どれほど惨めに見えることでしょう。誇り高き九尾が、自らの声に裏切られ、己の身体に裏切られ……ついには、あなたを拒めなくなるなどと。
……あぁ……お願いです……どうか、このまま……最後まで。
わたくしを、崩しきってくださいませ……。
もう、戻れぬところまで……完全に、堕としきって……。
抗うふりをする余裕すら奪い去って……。
どうか……どうか、わたくしを……終わらせてください……」