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陽翔の家で、俺たちは並んで座って、しばらく何も話さなかった。
テレビもスマホもつけてないのに、不思議と居心地は悪くなかった。
ふいに、陽翔がぽつりとつぶやいた。
「前の学校でな、オレ、やっちまったんだよ」
俺は顔を上げた。
「いじめられてたやつがいてさ。小学生の頃からの友達だったんだけど、
そいつ、俺にだけ助けてほしいって言えなかったっぽくて……」
陽翔は拳をぎゅっと握った。
「ある日、限界きたらしくて……その場にいたやつ、全員ぶん殴って、止めようとした教師の腕、折っちまった」
「……」
「誰にも理由言わなかった。言っても信じてもらえねーって、そいつが言ったから」
陽翔は、乾いた笑いをこぼした。
「結局そいつは転校して、俺だけ残された。“暴力で解決しようとしたヤツ”ってレッテル貼られて」
「……悔しかった?」
「うん。何も守れなかった」
陽翔の声が、いつになく静かだった。
俺は思った。
この人は、“誰かを守ろうとして、自分を壊したんだ”って。
だからこそ、俺のことも――本気で守ろうとしてくれたんだって。
「じゃあさ……今度は俺が、お前を守る番だ」
言ったあと、自分でびっくりした。
でも、言ってよかったと思った。
陽翔が、目を大きく見開いて、それから――ふっと、笑った。
「……うっわ、めっちゃ泣きそう。オレ、今までそんなこと言われたことねーわ」
「じゃあ初めては、俺な」
「だっせ〜〜〜〜〜!でも、嬉しすぎて腹痛ぇ!!」
2人で笑った。
本気で、声を出して笑った。