テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
部屋の天井を見上げて、らんはふと思った。
――どうして、誰も助けに来ないんだろう。
――どうして、自分はこんなところにいるんだろう。
閉じ込められて何日が過ぎたかもわからない。
でも、妙に静かなこの場所は、どこか……安心する。
それが、自分でも嫌だった。
食事のたびに現れるいるまは、何も言わずにプレートを置く。
「……いただきます」とつぶやくと、ほんの少しだけ、彼の目が柔らかくなる。
けれど今日、ふいにその空気が変わった。
プレートの上に並んだのは、焼き魚と味噌汁、そして卵焼き。
……卵焼き。
🎼🌸「……いらない、それ」
🎼📢「は?」
🎼🌸「それだけ……いらない、から」
らんは手を震わせて箸を置いた。
目の前で無言になるいるま。沈黙が重くのしかかる。
🎼📢「……理由は?」
🎼🌸「……昔から、嫌い。……味とかじゃない」
その時だった。どこか感情の蓋がずるりとずれたように、らんの声が震え始めた。
🎼🌸「小さい頃……親に叩かれた時、よく出されたの。冷たい卵焼き。食べられなかったら、もっと怒鳴られて……。気がついたら、見るだけで、吐き気がして」
静まり返った部屋の中で、その告白だけが浮かび上がった。
いるまは何も言わず、黙ってプレートを引いた。
しばらくして、電子レンジの音と香ばしい匂いが漂う。
そして、再び運ばれてきた皿には、卵焼きはなかった。
代わりに――ふわふわのオムライス。
🎼📢「甘いのがダメなら、塩味のやつに変えた。味見したから、ちゃんと美味いはず」
らんは言葉を失った。
……優しい、なんて、思ってはいけない。
この人は、自分をさらって監禁してるやつだ。
信じちゃいけない。依存したら、もっと壊れる。
けど、手の震えは止まらなかった。
気づいたら、口に運んでいた。
……あたたかい。やさしい味。
🎼🌸「……ありがと」
🎼📢「お前が食うなら、なんでも作るよ」
らんが伏せた目の奥で、何かが小さく崩れた。
ずっと欲しかった。こんなふうに、ただ黙って話を聞いてくれる誰かを。
そして夜。
ベッドにうずくまるらんの肩に、そっと毛布がかけられる。
🎼📢「らん」
🎼🌸「……なに」
🎼📢「もう無理に笑わなくていい。お前が笑ってなくても、俺はお前の味方だ」
その言葉に、らんはこらえていた涙を落とした。
声もなく、ただ静かに、こぼれるように。
この手を離さないで。
心の奥でそう願ってしまったことに、らんは気づかないふりをした。
コメント
2件
う、、て、天才、、、だ、、、、、。
主様お疲れ様です✨️💜🩷尊すぎます✨️可愛いすぎます✨️続き楽しみです✨️無理しない程度に投稿頑張ってください