テラーノベル
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この世界は何も変わらず進んでいく。
気付けば5人で活動しているここに来てから2ヶ月ほどが経っていた。
楽しい、幸せな毎日を繰り返しながらも独りになると涼ちゃんに想いを馳せる日々。
自分では上手くやっているつもりなのに、若井にはそうな見えなかったようだった。
「元貴、ちょっと休憩しよ」
珍しくコーラ飲む?奢るよ、なんていいながら人けのない部屋に連れて行かれた。
「···ここ最近、なんかヘンだけど大丈夫?」
涼ちゃんもだけど、若井も俺の異変に気づいているようだった。
「少し前からさ、なんか変にテンション高いのに辛そうっていうか···上手く言えないけど、ヘン」
「···ヘン、だよなぁ···俺もそう思う」
フタを開けると炭酸が抜ける軽い音が静かな部屋に小さく響いた。
「若井ならどうする?」
「ん?なにが」
「若井なら、グループ···っていうか今のメンバーを選ぶか、好きな人を選ぶかって言われたら」
若井は唐突な質問に笑いもせず真剣に悩んでくれる。
「どっちも、は無理なんだよね?」
「うん、どっちかしか選べないとして」
「···俺は、メンバーかな。唯一無二だし、もう家族みたいなものだし」
「そう···だよなぁ···俺もそう思う」
恋や愛より、メンバーを取る。
若井ならそういうと思っていた。
「俺はそう···なんだけどさ」
「うん?」
「元貴には恋や愛を選んでほしい」
若井が真剣に俺を見つめる。
「なんで?それって若井とかを裏切ることになるんだよ?」
「···元貴が心から愛する人って、限られてる気がするから。たまに言ってるでしょ、一生のうち書ける曲の数は決まってる気がするって。まぁそれはすごい膨大な量だと思うけど···元貴が愛する人は反比例してめちゃくちゃ少ない気がするんだよね。一生に2、3人とか、もしかしたら1人かも。その好きな人がその1人なんだったら···俺は諦めてほしくない」
涼ちゃんは···涼ちゃんは、俺にとってどういう人なんだろう。
若井の言いたいことはすごく分かりやすかった。メンバーが唯一無二なように、涼ちゃんがそうであればそっちを選べ、と言ってくれているんだ。
「···ありがとう、なんかすごく納得出来た。よく、考えてみる」
「おぅ。それにさ、もし、みんな別々の道を歩んだってその先まで元貴がひとりで背負うことはないよ。みんなちゃんと幸せを見つけにいく力はあるはずだよ」
それも、そうだ。
その証拠に俺が知っている高野も綾香も幸せになっているんだから。
「唯一、涼ちゃんはちょっと心配だけどね」
ケラケラと笑いながら若井はスタジオに戻る。
俺も後を追うと涼ちゃん達が待ってたよって迎えてくれた。
「あ、コーラいいなぁ」
「若井が奢ってくれた」
「ちょっと、僕たちにはないの〜? 」
俺も私も、と若井に群がってみんなで笑ってる。
俺はいつかもし俺が知ってる世界に戻れても忘れないようにその光景を目に焼き付けた。
···もし、許してくれるなら。
俺は、俺は·····。
涼ちゃんを選ぶ。
コメント
4件
♥️くん頑張って🥲✨ 💛ちゃんをどう取り戻すのかワクワクです❣️
そうなのねぇ〜、人生で唯一の人なのねぇ〜😭 そして、望んでいた5人の世界より、やっぱり涼ちゃんがそばに居てくれる世界を選ぶのね…ぐうぅ、胸が痛い…😢 でも、私も早く元貴くんに優しく微笑みかける、元貴くんの涼ちゃんに会いたい…🥺💛