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「塗ってみるかい?」
ブラシが手渡され、もこもことした泡を毛先に付けると、恐る恐ると言った感じで彼の肌に乗せた。
「……くすぐったいな」
彼が顔を崩して微笑い、
「後は、自分でやろうか」と、ブラシを手にした。
「人にやってもらうと、思いのほかくすぐったいもんだな」
「そんなにくすぐったかったですか?」
「ああ、とてもな」
と、鏡に映した顔を彼がふっとほころばせる。
顎の先に片手をあてがい、T字剃刀で頬をなぞるようにして緩やかに泡を削ぎ落としていく、そのしなやかな手の動きに視線が引きつけられる。
「……あの、本当のことを言うと、ヒゲはそんなに痛くなかったし、その、あなたのキスで感じちゃいそうだったから、それで……」
その仕草に魅せられるように、本音を思わず口に出した。
「私を騙したのか? 悪い子だ」
彼が言ってくくっと短く笑うと、鏡に映る喉元が上下するのが見えて、それだけのことで目が奪われてしまう。
洗面台に溜めたお湯で残った泡を洗い流し、おろしたてのタオルで顔を拭き取ると、
「悪い子には、お仕置きをしないとな」
彼が口にするなり、私の身体をふいに両脚から抱き上げた。