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#年の差
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9月12日。
かつての私にとって、誕生日はただ年を重ねるだけの苦痛な日だった。
けれど、今の私は朝から
キッチンの芳しい香りと、耳元に寄せられる甘い囁きで目を覚ましていた。
「……お誕生日おめでとうございます!凛さん」
背後から回された瞬くんの腕。まだ眠気の残る彼の体温が、パジャマ越しに伝わってくる。
「…っ、ありがとう、瞬くん。……でも、朝からそんなに密着されたら、動けないわよ」
「いいんです。今日は一日中、俺の腕の中にいるのが凛さんの仕事ですから」
彼は私のうなじに小さくキスを落とすと、リビングへと私を促した。
テーブルの上には、彼が朝から準備してくれた豪華な朝食と、一通の封筒。
「プレゼント…指輪とかじゃなくて、すみません。……でも、今の俺に贈れる一番重いものを選んだつもりです」
私が戸惑いながら封筒を開けると、そこには手書きの「契約書」のような一枚の紙が入っていた。
『一生、佐藤凛の隣に居続ける権利。および、彼女を死ぬまで甘やかし、独占し、愛し抜く義務。』
「……ふっ、何これ」
「指輪は、もっとちゃんとした時に。……今は、この『権利』を凛さんに受け取ってほしいんです。俺が、あんたの人生を一生買い取ったっていう証明書」
冗談めかした口調。
けれど、その瞳はどこまでも真剣で、私のすべてを飲み込もうとするほどの熱を帯びていた。
「……高価な宝石より、ずっと重いわね」
私はその紙を胸に抱きしめた。
今まで、誰かに「甘やかされる」ことは、弱さだと思っていた。
支配されることは、恐怖だった。
でも、瞬くんの支配は違う。
私を自由にするための、温かくて強固な檻。
「……いいわよ。受け取るわ。その代わり、一生よ? 途中で投げ出したりしたら、承知しないから」
「望むところです。……もう、逃がしてって言われても逃がしませんけど」
彼は私の手首を掴み、そのままテーブルに手をつかせるようにして私を閉じ込めた。
朝の光の中で、彼の瞳が「部下」でも「恋人」でもない、執着に満ちた「男」の色に変わる。
「凛さん…一生、俺に甘やかされてください。あんたの全部、俺が守って、俺が愛しまくりますから」
「…ふふっ、あなたになら一生甘やかされてあげる」
私は自分から彼の首に手を回し、その唇を迎え入れた。