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12話 「小さな護衛依頼」
朝から空は晴れ渡り、絶好の遠出日和だった。
今回の依頼は、隣村まで荷馬車を護衛する簡単なもの。
「ただの田舎道だし、盗賊も滅多に出ない」と依頼主は言っていたが、油断は禁物だ。
俺とミリアは馬車の両脇を歩き、ルーラは荷台の隅に腰掛けている。
村への道はのどかで、風に揺れる麦畑や川のせせらぎが続いていた。
「こういう依頼なら、毎日でもいいな」
「あなたは気楽でいいわよね」
「気楽を極めるのが俺の仕事だ」
昼過ぎ、道端で小休止をしていた時だった。
荷馬車の馬が急に耳を立て、落ち着きなく足を動かし始める。
次の瞬間、茂みから数匹の大きな犬型魔物が飛び出してきた。
「来たわね!」
ミリアが剣を抜き、俺も槍を構える。
それほど強い相手ではないが、油断すると馬や荷物が危ない。
一匹が荷台に飛びかかろうとした瞬間、ルーラが手にしていた木箱を放り投げた。
箱は魔物の顔面に直撃し、その勢いでよろめいたところを俺が突き倒す。
「ナイスアシスト!」
俺がそう言うと、ルーラはそっぽを向いたまま、荷台の中を整理し始めた。
その耳が、わずかに赤くなっていたのは……多分気のせいだ。
魔物を追い払い、夕暮れ前には無事に村へ到着。
依頼主は笑顔で礼を言い、俺たちはそのまま村の宿に泊まることにした。
素朴な料理と静かな夜――まるで小さな旅行気分だ。
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