呪霊降濁

夏目を失った特別部隊は、激戦を辛うじて切り抜けたものの、傷を負ったまま拠点へと帰還した。空気が彼らを包み込み、誰一人として口を開かず、足音だけが静かに響いていた。

特別部隊の拠点は、古びた屋敷だった。戦士たちの笑い声や、訓練の音で溢れていた場所だったが、今は静寂が支配していた。

「ここが…こんなにも静かだとはな…」百鬼が、帰還すると同時に深く息を吐きながら呟いた。

「いなくなってしまったんだ。静かにもなるさ。」透が抑えた声で答えた。

朱音は部屋の隅で震える手を握りしめていた。「ここに帰ってきたのに、何かが変わってしまった感じがする…」

白川は皆から少し離れ、一人窓辺に立って外の景色を見つめていた。彼の背中には、緊張感が漂っていた。夏目の死、その無力さへの怒りが彼を支配していたのだ。

「くそ…」白川は小さく呟いた。

「白川、お前…」透が何か言おうとしたが、白川は振り向かず、冷たく言い放った。

「俺に話しかけるな。何も言うことなんてねぇ。」

「リーダーだろう？みんな頼りにしてるんだ。」透は静かに諭そうとするが、白川の目には苛立ちと怒りしか見えなかった。

「俺は最強だ。救えなかったのは、俺の責任じゃねぇ。」白川は冷たく吐き捨てるように言い、再び外を見つめた。

透はそれ以上何も言えず、ただ黙ってその場を離れた。

時間が経つにつれて、特別部隊のメンバーは少しずつ自分たちの部屋に戻り、それぞれの思いに浸っていた。だが、心の中では皆、同じ疑問に悩んでいた。

「俺たちはこれからどうすればいいんだ？」

夏目の死は彼らに大きな痛手をもたらした。そして、今までの戦いで負った傷もまだ癒えていない。しかし、敵はまだ数多く残っており、これから先もさらに過酷な戦いが待ち受けているのは明白だった。

翌朝、特別部隊のメンバーはそれぞれの思いを胸に、新たな戦いに向けて準備を始めた。

「俺たちは失ったが、戦いは終わっていない。」透は集まった仲間たちに強い言葉を投げかけた。

「そうだな、あいつの仇を討つまでは終われねぇ。」百鬼も力強く拳を握った。

朱音も無言で頷き、決意の表情を浮かべた。

一方で、白川は依然として孤独な態度を崩さなかったが、彼の心の中では確実に新たな炎が燃え始めていた。無力感、それを払拭するために、白川はさらに力を求めていた。

「次は、俺が全てを終わらせる。」白川は小さく呟き、再び前に進むことを誓った。