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あらすじ
帰り道の電車にて眠ってしまった栞菜、目覚めると謎の駅に着いていた。そこで少年と出会い、そして殺された。という夢を見ていた。それを後輩である禊萩に話すと、誰かと一緒に寝てみたらどうか?と提案され、早速やってみようとしたのだが…。
「うわ〜禊萩くんに合わせて飲み過ぎたかな〜…。」
なんて独り言を呟きながら電車に乗り込んだ。
「椿ちゃんたっだいま〜!」
「おかえりー」
「良い子にしてたかい子猫ちゃん!」
「さてはお酒飲んだでしょねぇね」
「うふふふ!」
「めんどくさそうだから先に寝るね」
「ちょっと待った!怖い夢見たから一緒に寝かせろい!」
「朝のやつ?姉の尊厳大丈夫?」
「うぇ〜い!うるしぇーい!」
微笑ましい会話をしていた次の瞬間に、あの不気味な電車に辿り着いていた。恐らく酔いが回って気絶する様に寝たのだろう。
「……(あれ?何で私電車に…?)」
目の前には外が暗いせいで窓に反射した自分が居る、自分の目なのに虚に感じて不気味なそれがいた。
「(スマホ…あった!)」
車内の温度により冷んやりとしたスマホを取り出し、自分の状況を確認してみる。
「(圏外って事はまた…!?)」
そう気づいた瞬間、電車は駅へと到着した。
ドアが開くと同時に飛び出して辺りを見渡す。やはり無人駅だった。
「はぁ……はぁ……」
息を整えている最中、何か物音が聞こえてきた。
「誰かいるの!?」
そう大きな声で言うと、見覚えのある男性がいた。
「昨日ぶりだな」
あの時、私に逃げろと言ってきたおじさんだった。
「貴方はあの時の!」
「まず謝らせてくれ、遅くなってすまなかった。」
なぜ謝られているのかよく分からなかったが、人がいるというだけで幾分気持ちが落ち着いた。
「いっいえ…そんな」
「まぁアンタも分かってると思うが、あの時アンタは死んだ。というより死んでいた。か。」
何を言っているのか理解出来なかったが、すぐにあの時の少年の事だと悟った。
「それってあの少年の事ですか?」
「あっあぁそうだが…やけに落ち着いてるなアンタ、普通死んだだの何だの言われたら何か思わんのか?」
確かに普段の私なら嘘臭いと思うし、本当なら怖がってる。だが此処は夢の中だ。眠りが醒めればこの世界は一瞬にして無に帰る。
「う〜ん…思う所があるし、2回目だからですかね?」
「そんなもんか…まぁ良い、とにかく話の続きだ。」
どうせ夢オチなら最後まで聞いても良いと思い、黙って話を聞く事にした。
「単刀直入に言うと、俺は死神みたいなもンだ。」
「死神……?」
「そうだ、そして俺の仕事はアンタに真相を見つけて貰い、生きて帰って貰う事。」
「真相って?ていうか私生きてますけど!」
「まぁなんだ、そこら辺は追々話すから、今はとりあえず逃げねぇか?」
「えっ?でも何処へ逃げるんですか?」
「取り敢えず外へ出ようゼ」
前に来た時は外が真っ暗だった、私はとにかく明かりを線路を歩いたが、今日は人が増えた。
そう言われて主導権を握られる事に安心感を覚えつつも駅の外に出ようとした。
「こんな場所知らないんだけど……」
「ここはアンタの夢の中だからな」
「じゃあさっきの話は……」
「信じて欲しい訳じゃないが、嘘じゃねぇぜ。」
「……そう。」
一言呟くと、私は歩き出す。
「どこ行くんだ?」
「もう1回電車に乗ってみようかなと思って」
「やめておけ」
「どうして?」
「アンタは猿夢って聞いた事あるか?」
「猿夢…?」
「その感じだと、知らねぇミテェだな。」
「…知りません」
「教えてやるから取り敢えずこっち行くぞ」
信じきる訳ではない。が、かと言って私にこの世界の知識がある訳でもない。ここは着いていった方が特だと思った。
「猿夢ってのはなァ、アンタの乗ってた糸の電車が去った後に来る、クソみてぇな猿の顔した汽車ポッポになると始まんだ。」
「待って、その前に糸の電車って?」
「んぁ?そうだなぁ、ここ、きさらぎ駅を彼方と繋ぐ電車。だナ。」
「んでだ、そのクソ猿に乗るとな最高に最低なパレードが始まんだよ。」
「どんなのですか?」
「聞きたいカ?」
「ええ」
「なら聞かせてやるよ、先ず先頭の乗客から始まる。1人目は活けづくり、小人に切り裂かれ内臓を引き摺り出される。」
「…っえ?」
「2人目はえぐりだし、スプーンで目玉をほじくられるんだ。」
「ちょっ」
「3人目は挽き肉、機械が音を立て風を立て、足先から」
「もう良いです、気持ち悪い…。」
「ナっ!?クソみてぇだろ?分かったら乗らねぇこった。」
そう会話をしていると、駅を出て古びたアーケード街に辿り着いた。黄昏時に見えるが、曲がり角は深夜の様になっている。
「すみません、そろそろ色んなことを聞きたいんですけど。」
「いいぜ、何から聞きたい?」
「じゃあ、あの少年、私が殺された少年の事を聞きたいです。」
「うーん、アイツは一つの姿を持たねぇから何とも言えねぇけど。強いて言うなら神…なのか?」
「いや私が聞きたいんですけど!」
「ハハッそりゃそう、まぁ少なくとも今のアンタじゃ逃げらんねぇし勝てねぇってこった。」
「それとも神に勝つ気なのカ?」
そんな事を言われると自信が無くなってくる。というより現実味が無い。だがあの少年は確かに実在している。それは間違いない。
「…………そういえば、貴方の名前は何と言うんですか?」
「んぁ、俺か?俺はそうだなぁ、お前さんが決めてくれヤ。」
「えっ?!わたし?!」
「あぁ、俺名無しだからなァ。そうイヤ、アンタの世界だと名無しの事を「お魚咥えた名無しさん」とか言うらしいな。」
「えっ言わないけど…それより名前かぁ…。私ネーミングセンス無いんだよなぁ…。」
昔からネーミングセンスが無くて椿とか友達とかにも良く引かれていた、飼ってた金魚は転覆病だったから横転ちゃんとか。普通だと思うんだけれど…。
「それじゃあ死神さんの名前は九重葛連翹ね!(ここのえかずられんぎょう)」
「えらく長い名前だな」
「でも良い意味が込められてるらしいって誰かが言ってました」
「ホントかよ」
そう話していると、何処からか聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「…!…ぇね!…」
「この声って…!」
「んぁ?ナンダ?」
私はいきなり走り出し、声の元へ向かう。
「ちょっちょっ待てよ!」
「椿ィ!!お姉ちゃん今行くからねぇ!!」
そうして曲がり角を振り返ると、そこには見覚えのある美少女がいた。
「つばき!!」
「ねぇね?本物?」
「本物よぉおぉ!!怪我はない!?本当に夢に入ってくるなんて…ごめんねつばきぃ〜!!」
「ゼェ…ゼェ…ジジイの体にはキツいっての…。もっとゆっくり走れよ…。」
「うるせぇ!感動の再会なんだから黙れ!」
「てか誰だよ椿って…ってすげぇ美少女じゃねぇか」
「お兄さんだれ…?」
「お兄…さん?お兄さんか…九重葛連翹だヨ。君だけは絶対に守る。」
「お姉ちゃんが名前付けたの、それでこのおじさんが案内してくれたの。」
「へぇー、ネーミングセンスが良くなってる…。それより、僕たちどうやって帰るの?」
「何か真相を見つけるとか何とか聞いたけど…取り敢えず、ここを出ましょう。」
「そうだな、ここにいたって仕方がねぇ。」
「でもどうやって出るんですか?電車も無理みたいだし……」
「あぁ、それなら問題ねぇよ。出口ならもうすぐだ。」
「え?」
「この先の路地裏、あれが出口だ。」
「本当ですか?!」
「あぁ、嘘はつかねぇよ。」
「じゃあさっさと帰りますか!」
「うん!」
「おう。」
そうして私たちは暗い暗い路地裏に入っていった。
「おい!そこのガキンチョ共!何やってんだ!」
「うわっ!?」
「ひっ!?」
「……チッ」
「早く出てけ!ここは危ねぇぞ!」
「えっと……」
「先いっとけ、俺が話しつけっから。」
そう言い残し、連翹は声の元へ向かっていった。
「おい悪趣味クソ猿、いつまで隠れてるつもりだ?」
「……」
「刈り取ってやろうか??」
「……ふぅ、なんや、バレとったんか。おもんな。」
そう言って出てきたのは赤い洗面器を被った男だった。顔は見えないが、雰囲気がかなり尖っている。
「んで、お前は俺に何の用があるんだ?」
「何も無いで!ただワイはあの子達が心配なだけや。」
「ふん、そうかよ。」
「……ところで、あんさんは一体何で着いてってるんや?」
「俺か?俺は、名無しの近衛兵ってところかな。」
「……ほうか、ほなワイはそろそろ帰らせて貰うで。近衛兵もおるみたいやしな。」
「そうか、また来いよ。今度は殺し合いしようゼ。」
「それは遠慮しとくわ。」
そう言って赤い洗面器を被った男は去っていった。
「……にしてもアイツ、なんで見守りなんか…?」
「……まぁ良いか。」
「それよりも真相について調べないとなァ……。」
そうつぶやくと、暗闇の遥か先から声が聞こえてきた。
「連翹さーん」
「はいはい、いま行きますよお姫様。」
そう呟き歩き出す
「あ、そうだ、お前ら名前は?」
「私は赤桐(あかぎり)栞菜ほら椿も挨拶して」
「…赤桐椿です、よろしくお願います。」
「俺は九重葛連翹だ、椿ちゃんよろしくな。」
「…??連翹さん何で見つめるんですか??」
「いやあまりにも可愛いから誘拐しようかなと」
「やってみな、私がぶっ殺す。」
「あぁ怖い怖い」
自己紹介をしつつ、会話をしていると出口が見えてきた。
「ここが出口だ」
「案内してくださってありがとうございました!」
「お兄さんありがとう」
「良いヨォ〜椿ちゃんの為ならおじさん頑張っちゃうからネ!!」
「行くよ椿なにされるか分かんない」
「はーい」
「何もしねぇよ!あってか出たとしてもまたここに…って居ねぇし…まっ、椿ちゃんと会えるなら教えなくていっか。」
出口を出てから数秒後、私と椿は光に眩みながら、目を覚まさせるかの様なその光に安堵していた。その次にはベッドの上だった。
「っ!現実に戻れた…?」
「うん、戻ってこれたみたいだよお姉ちゃん!」
「よかった……。取り敢えず、今は朝ね……。仕事に行かないと……。」
「お姉ちゃん大丈夫?今日は休んだ方が……」
「うーん……確かにそうかも……。」
「それにしても、あのお兄さん…連翹さんは何者なんだろ?」
「そうだねぇ……今度会った時に聞いてみるかぁ……」
「あっ、ねぇねぇお姉ちゃん」
「どうしたの??」
「あっちの世界で貰ったお菓子食べても良い??」
「いいけど……って何で持ってるの!?てか誰に貰ったの!?」
「なんか赤い洗面器を被った人に貰ったよ、ポケットに入れてたら持ってこれたみたい。」
「…なるほど、でも食べる前に歯を磨きましょ。」
「うん!」
こうして私たちは日常に戻っていくのであった。
—–オフィス—–
「アンタねぇ!!防犯の会社なのに意識低いんじゃないの!?」
「申し訳ありませんお客様、どうしても部品交換には住所を教えて頂かないといけな」
「その情報を悪用されたらどうすんのって言ってんのよ!!アンタ頭悪いんじゃないの!?他の人呼んでちょうだい!!」
「お客様落ち着いてください!」
また同じ客だ、対応に困る…。とそんな時、またまた禊萩くんが代わってくれた。
「任せてください!もしもし、代わって担当させて頂きます。禊萩と申します。」
そんなこんなで休憩時間
「禊萩ありがとうぅう!!」
「良いっすよ〜オレあの人慣れてるんで!」
そう満面の笑みで言うのは後輩の禊萩、何だかんだ一番一緒に居るかもしれない。
「にしても栞菜ちゃん先輩ホントに運悪いっすよね〜」
「それはそう!怖いまであるよ〜…。」
「あっそう言えば、最近あの洗面器男見かけないですね〜。」
「それ思った。」
「また来るからな!なんて言ってましたけど、警備員さんがあんなに居たら流石に来ないっすよね?」
「そうだと良いんだけどねぇ。」
そう言いつつ、お茶を飲む。
「あと今日、新しい社員が入ってくるらしいですよ!」
「そうなの?」
「はい、だから楽しみにしてるんすよ〜!」
「へぇー、どんな子だろうね?」
「まぁ会えば分かりますよ。」
「それもそうだねぇ……。」
すると、扉が開いた音が聞こえてきた。
「こんにちは、新しく入ります。」
「おぉ!新入社員だ!」
そう言うと、彼はこちらに向かってきた。顔を見た瞬間飲んでいたコーヒーを吐いてしまった。
「ゲホッゴホッ!!」
「どうしたんすか先輩!?」
「あっあんた、なんでここにいるの!?」
「知り合いなんすか!?」
「いっいや、ごめん、他人の空似だったみたい。」
「へ〜そんなことあるんすね…ところで、新人さんのお名前聞いても良いっすか?」
「あ、そうでした。九重葛連翹と
申します。」
名前を聞いた瞬間、またコーヒーを吹き出してしまった。
「ゲホッゴホッ!」
「先輩どうしたんすか!?今日おかしいっすよ!!」
「ちょっちょっと新人くんこっち来てくれる?」
「うぃ」
—–屋上—–
「よし、今なら人いない。」
「なんだよこんなとこ連れてきて、愛の告白か?」
「ちげぇよ!!夢の中の死神でしょ!?なんでここにいるの!?」
「お前に会いに来たに決まってんだろ?まぁ、夢の中じゃなくて現実だけどな」
「はっ?」
私は思わず間抜けな声を出してしまう。だってそうでしょう?いきなり会いに来るとか言われてもさ……
「そういえば洗面器男はどこ行った?」
「えっ?その不審者なら今日来るらしいけど…。」
「ソイツも夢の人間だぞ」
「え?ってことは……まさか……。」
「そのまさかだよ、お前目当てだろうな。」
「……まじかぁ……ってか何で夢から出てきてるの?」
「そりゃぁ、お前が通れて俺が通れねぇってのはおかしな話だろ。」
「そもそも俺はあくまでも神だ、割と自由自在なんだぞ。」
「ふーん…って話戻るけど私と椿は死なずに逃げれたじゃない!なのに何で…!」
「お前なァ…人の話を聞かないタイプかぁ?俺は真相を捕まえろって言っ、たろ!」
「別にお前は死相がねぇし、こっちに来なくても良かったんだがな、もう一つ理由があんだ。」
「……なに?」
「椿ちゃんは多分もうすぐ死ぬ。」
「……は?」
「あの子が死ぬのは今のままだと確定事項だ。だが、死神として運命を変えさせねぇ。だからこっちに来た。」
「まっ待ってよ、意味わかんないんだけど。」
「まっ何とかすっけど、椿ちゃんとよく話せな!じゃ!」
そう言って彼は消えていった。
「どういうことよ……。」
—–オフィス—–
「先輩、大丈夫ですか?」
「うん、平気。」
「そうっすか、無理しないでくださいよ〜!」
「ありがと、そうする……。」
「(全部聞こえてた事は言わない様にしたほうが良いっすね、何の話かちんぷんかんぷんだったっすけど。)」
そんなこんなで仕事を終え、帰宅をする。
「ただいま〜……。」
「おかえり」
リビングに行くと、椿が座っていた。
「ご飯作っといたよ!」
「ありがとう……。」
「あの……昨日は連れてっちゃってごめんね…。」
「いいよ、気にしてないから。」
「本当に?」
「本当、ほら食べよう?」
「うん…!」
食事をしながら、今日あった事を話す。すると、彼女は驚いた顔をしていた。
「ねぇね、今日は何か面白い事あった?」
「新人が入ってきたんだよ」
「へぇーまた後輩が出来たんだ!すごいね!」
「だよね〜!」
「どんな人なの?」
「死神の連翹さん!」
「は?」
「え?」
「いやいやいやいやいやいや!!!」
「気持ちは分かる…あとね、連翹さんが椿ちゃんに危険が迫ってるーとか言ってたんだ。」
「危険…?」
「うん、だからなるべく一緒に寝た方が良いかも。」
その時、死ぬと言うことは伝えなかった。
「まっ、今は考えても仕方ないし。カバディでもして遊ぼ!」
「何でカバディなの…?」
そんな会話をしつつ、二人とも明日の用意をして寝る時間になり、暗闇で布団に挟まれる。
「今日はどんな事が起きるかな?」
「うーん、何もないと良いけどねぇ。」
「連翹さん居るかな?」
「うーん、居ないと良いけどねぇ。あっ猿の汽車には乗っちゃだめだよ。」
こうしてまた、冷たく仄暗い電車へ乗り込むのであった。