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翌朝は休校日だったが、菜乃葉は普段と同じ時間に目を覚ました。
日課の朝の鍛錬を終わらせ、学内に設置された転移門ゲートへ向かう。
菜乃葉
「核出の根・漂う薄布・導け、【転送フープ】＿王都へ」
石造りのアーチに触れながら詠唱をすると、薄く光る半透明の膜のようなものが現れる。歩み寄りながらその膜に触れたその瞬間、菜乃葉の身体は王都の路地裏に転移していた。
菜乃葉
「…もう着いたのか」
いい術式だな、と呟きながら菜乃葉は慣れ親しんだ街を歩き出す。迷うことなく向かった先は、王都の西の外れ。片隅にぽつんと建つ、さして流行ってなさそうな小料理店に、滑り込むように入る。
「いらっしゃい。ご注文は？」
菜乃葉
「魔狐の拉麺。スープ付きで」
無愛想な態度の店員に、菜乃葉はメニューも見ずに答える。
「ソースは？」
菜乃葉
「特濃をたっぷりと」
「……奥の部屋が空いてるよ」
菜乃葉
「どうも」
店員が案内した個室に入り、後ろ手に扉を閉める。さっと壁に目を走らせ、目印を探す。
菜乃葉
「……そこか」
よく見なければ気づかない程度の、ごく薄いシミ。そこに手を当て、菜乃葉は小さく呟く。
菜乃葉
「開けーごま」
『はいはい今開ける…』
棒読みで唱えれば、どこからともなく聞こえる声。ほどなく反対側の壁が開き、地下へ続く階段が姿を見せる。
菜乃葉
「……やっぱり変な合言葉」
菜乃葉が少し貶しながら階段を下りていくと、後ろで壁が再び閉まる。一方、菜乃葉の前方ではランプが点灯し、魔導通信機が若い男性の姿を映し始める。
「久しぶりだね、菜乃葉姉。元気してた？」
菜乃葉
「うん、してたよレウ」
弾んだ声を出すレウとは対照的に、菜乃葉は落ち着いた声で応じる。
レウ
「……もうちょっと嬉しそうにしてくれてもいいのに……」
菜乃葉
「…なんか言った？」
レウ
「はぁ……なんでもない。それよりさ、なんでここに来たの？俺しかいないけど」
菜乃葉
「報告に来ようかな、って思って」
レウ
「……嫌な予感がするけどそんなに嬉しそうなのはいい報告だよね」
無表情ながらもどこかルンルンというオノマトペが付きそうな雰囲気を晒しだす菜乃葉に、レウはげんなりしていた。
菜乃葉
「単刀直入に言うと、レウの元弟が庶民に喧嘩売ってボロ負けしてた。滑稽だったよあれは」
レウ
「滑稽って…は？！元弟ってあれだよね？！モブクズだよね？！？！アイツそんなやつになったのか…」
目を見開いて叫ぶレウは、モブクズ・クラウドの元兄、レウ・クラウド。元兄という表記は、レウが貴族の生活にげんなりして縁を切ったんだって。
そこで身寄りのないレウをこちらで引き取り、弟にした。というわけ
菜乃葉
「あとモブクズ…多分アイツ洗脳にかけられてた。この調子だと、貴族の何人かは洗脳がかけられてそう」
レウ
「えー？！？！洗脳？！？！？！でもそんなこと俺に聞かれたってどうすればいいかわかんないって…」
上げ下げが凄いレウだが、これは至って彼の普通である。
菜乃葉
「洗脳って言っても何か衝撃を当てれば目を覚ます程度の弱い洗脳。洗脳魔法を持っている博神先生…は手加減しなさそうだし、中々の腕前だからそんなことはしないと思う。あと貴族に洗脳をかけるメリットが皆無」
レウ
「じゃあ部外者からの洗脳か…」
菜乃葉
「あと、学校は寮生活だから洗脳がかけられたとすると入学より前にかけられたと見るのがいい。貴族には簡単に衝撃を与えられないし、犯人は貴族に洗脳をかけた。そして犯人は貴族に洗脳をかけれるから、貴族の懐にいるやつが怪しいと見てる」
レウ
「貴族はプライドが高くて何かに侮辱されると精神がすぐ乱れるから…多分そこを裏手にとっての犯行だね…これは」
となると、外交の家系と詐欺家は貴族の懐に入るのもお手軽で、貴族慣れもしているからこの2点を重視すればいいか…
菜乃葉
「ここに来た理由は相談と報告、これだけ」
レウ
「えぇ…まぁいいか」
菜乃葉
「じゃ」
そう言って隠し通路から抜けていく菜乃葉の後ろ姿を見ていたレウは、少し濁った感情を持っていた。
菜乃葉
「そういえばモブクズの謝罪会があるけど動画とって送ろうか？」
レウ
「いらないです…」
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ある一室？
「そろそろ反乱の時間だゾ」
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レウ・クラウド
男性
元クラウド家の次男
魔法の腕前は確かだが、本人は穏やかなところが好きなので庶民の空間に逃げた。
菜乃葉の義弟
使い魔がおり、赤い毛玉
所持魔法…火炎魔法（炎魔法の強化版）
コメント
2件
はぇ〜いい設定だね！
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