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8 - 第八章 門の向こう

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2026年02月03日

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車を降りた瞬間、

空気が変わった。


音が、少ない。


街のざわめきは門の外に置き去りにされて、

ここには、整えられた静けさだけが残っていた。


目の前にそびえるのは、

鈴蘭学院の正門。


白い石造りで、

派手ではないのに、

簡単には越えられない雰囲気があった。


門の前には、

同じような年頃の少女たちと、

その保護者が集まっている。


みんな、

言葉を選ぶように話していた。


笑い声はある。

でも、大きくはならない。


まどかは、

自分の服を見下ろした。


派手ではない。

でも、

この場に「正解」かどうかは、

分からなかった。


門が、静かに開く。


合図も、アナウンスもない。


それなのに、

全員が一斉に、前に進んだ。


まどかも、

流れに逆らわず、足を出す。


門をくぐった瞬間、

背中で音が途切れた。


外の世界が、

完全に切り離された感じ。


振り返りたい衝動を、

まどかはこらえた。


正面に広がる中庭。


丁寧に手入れされた芝生。

等間隔に植えられた木々。

風に揺れる、白い鈴蘭の花。


きれいだった。


でも、

どこを見ても、

「自由に歩いていい場所」が

見当たらなかった。


「……すごいね」


思わず、声が漏れる。


隣にいた母が、

小さくうなずいた。


「ここが、

さやの学校なんだね」


その一言で、

現実が胸に落ちた。


遠くに、

制服姿の在校生が見えた。


背筋がまっすぐで、

歩幅が揃っている。


誰かが指示しているわけじゃない。


それなのに、

乱れがない。


まどかは、

なぜか喉が乾いた。


足元で、

小さな鈴の音がした気がした。


もちろん、

そんな音は鳴っていない。


それでも、

ここに足を踏み入れたことで、

何かが始まってしまった。


そんな予感だけは、

はっきりしていた。


案内役の教員が、

穏やかな声で言う。


「それでは、

説明会会場へご案内いたします」


まどかは、

一度だけ深呼吸をして、

前を向いた。


もう、門の外には戻れない。


少なくとも、

今は。

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