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第四話:『混濁する感覚』
地下の調教室に漂うのは、焼けた肉の残り香と、楓の体から溢れ出す敗北の匂いが混ざり合った、濃厚で背徳的な空気だ。
太腿の内側に刻まれた「三つ鱗に蛇」の紋章は、拍動に合わせて熱い疼きを放ち、彼女がもう九条の「モノ」になったことを脳に直接わからせていた。
九条は、ぐったりと鎖に身を預けている楓の前に立ち、ゆっくりと彼女の口枷を外した。
「……あ、……ぁ、……九条……さま……」
口枷から解放されて最初に出たのは、罵倒でも拒絶でもなく、甘い吐息を孕んだ主人の名前だった。九条はその潤んだ瞳を冷たく見下ろし、突き放す。
「楓、自分の足元を見てみろ。里で積み上げた誇りも絆も、全部その無様な液体のなかに溶けて消えた。今の君は、ただ快楽を垂れ流すだけの、名前もいらない肉の塊だ」
九条の言葉が、彼女の残された自尊心を切り裂く。楓は屈辱に顔を歪めて涙をこぼしたが、九条はそこでふっと表情を緩めると、清潔な布と冷やされた軟膏を取り出した。
「だが、そんな無様に壊れた君を慈しんでやるのは私だけだ。里の連中は君を失敗作として捨てるだろうが、私はこれを愛おしい『しるし』として可愛がってやろう」
九条は鎖を少し緩めると、膝をついた楓の太腿をそっと引き寄せた。驚くほど丁寧に、水で濡らした布で火傷の周りを拭っていく。
「あ……ぅ、……っ……」
「痛むか? だが、この痛みこそが、私と君が繋がっている証だ」
九条は軟膏を丁寧に塗り広げ、火傷の熱を鎮めていく。冷たい薬の感触が引くと同時に、楓の心には「この人しか私を救ってくれない」という毒のような安らぎが深く染み込んでいった。
処置を終えた九条の手が、そのまま彼女の最も熱り立った場所へと伸びる。そこから溢れ出した熱い蜜を指先に絡めると、その濡れた指を楓の唇に押し当てた。
「味わえ。君が私にすべてを捧げた、その証だ。……この指がなければ、君はもうまともに息もできないんだと思い知れ」
自分の愛液で汚れた主人の指を、最高の「施し」として与えられる倒錯。楓は激しい背徳感に震えながらも、自ら首を伸ばして、九条の指を震える舌で丁寧に舐め取り始めた。
「……っん、……ふぅ、あぁっ……。はい、……九条さま。……もう、あなたの指を頂かないと……わたし、まともに息をすることさえ、忘れちゃいそうです……っ!」
「ああ、それでいい。私の指先ひとつで、君の呼吸すら好きに乱してやろう。君が私の足元で、永遠に快楽の泥に浸り続けるまでな」
九条は彼女の告白を悦しむように囁くと、そのまま彼女を再び激しい愛撫の波へと突き落とした。
一度、二度、三度。処置したばかりの太腿を、今度は熱い愛撫で染め上げられ、楓の理性は完全に主人への依存という闇へ溶けていった。
最後には白目を剥き、口から糸を引きながら、自ら太腿の紋章を誇らしげに開いて見せるその姿。
そこには、もはや忍びの面影なんてどこにもない。
ただ、九条が与える飴と鞭のなかでしか自分を保てなくなった美しき壊れ物が、暗い地下室で恍惚とした笑みを浮かべていた。
次回予告
心身ともに九条の色に染め上げられた楓。九条は、完全に自我を失った彼女を、ついに地下から引き上げる。地上で彼女を待っていたのは、彼女を「生ける家具」として扱う、さらなる屈辱的な日々だった。
次回、第五話:『従順なる愛玩』
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