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〜風邪〜
第15話
私は、侵入者が他にいないか確認。
……いたから、殺してやったけど。
黒猫はしばらく、私の魔力内に入れておく。次狙われるのが心配だし……
私は、あいつの身柄を拘束して、明日になったら、渡して……この依頼を断らせてもらう。
……私は、守れずに終わる。そんな未来しか、出迎えてくれないのだ。
医務室に行ってミヒャエルさんの近くで、休もうと思ったけど……瞼の裏に、皆が死んでいる血濡れた景色が浮かび、寝つけない。
それに、私が首元にナイフを刺して死んだ前世のセピア色の記憶が脳裏に響く。
クッソっ……
私は、黒猫を隣のベットに寝かせてから、しばらく椅子に座っていた。
✵
「ハンナ。貴女だけでもっ……」
笑ってた。先生は、死に際まで笑ってた。
「ハンナ姉ちゃん。僕、カッコよかったかな?」
✤✤✤は涙ぐみながら、笑って別れを言ってきた。
「ねぇ。ありがとうっ。私にこの道を導かせてくれて」
✸✸✸は血を吹きながら、最後の最後まで笑ってた。
「さようなら。またな」
そう言って、ルイスは笑顔のまま逝った。
……私はどうだったのだろう?
「ごめんなさいっ……でも、一つの命くらい、良いよね? 許さないで」
笑うというより……震えて強張って、絶望の目をして、命を無駄にした。
✵
「……だい……っ! …………っ!」
ぼんやりする、意識の中、誰かの叫び声が聞こえた。
黒猫でも、ミヒャエルさんでも、マリアでもない。
え? 誰っ?
目を擦って赤い瞳で黒猫の方を見た。特に異常無し。
私は反対側を……カーテンで囲われている。
ん? って事は……
「傷口を塞げっ! 出血を止めるんだ!」
「こんな、雑な巻き方をしたのは誰だ?! これじゃあ、こうなるのも必然だろうっ!」
「急げっ! 今ならまだ間に合う!」
沢山の人たちの声が聞こえる。
あ……私の所為なのかっ……
……もっと早く気づいてれば、もっと強力な術を習得できなかったから、私が巻き込んでしまったから……
ルイスの死に際の笑顔が脳裏を過る。
「っ……!」
「邪魔だ。そんな所にいられたら困る」
私は、殺意満々の男が横にいる事を話しかけられてから、気づいた。
……私は、もう何もできないっ……何もできない無能。弱虫の無能でしかないっ……!
「おい。聞こえてるのか?」
「あ、ごめんなさい」
そう言って私は反対側へ、ベットをまたいで飛んだ。前は、その話かけてきた大男が塞いでいる。
「黒猫。苦しいけど……ゴメンね。私、何もできない無能だった」
私は、黒猫の首元を撫でた。すると、ポンッと猫の姿に戻る。
私は黒猫を抱き抱えて、医務室を飛び出た。
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ……何も守れないような……器でっ……」
泣きながら、夜の廊下を走った。
……消灯時間はあるけど、別に寝ないといけないって事は無い。
逆に、授業中に寝たら、全身痒くなる魔法をかけられるけど。
✵
夜に、襲われてから数日後。
俺は軽い打撲で済んだから、直ぐに目を覚ましたと思ったら……
部屋が血まみれだった。
……水魔法も、風魔法も苦手なんだけどな。
俺は、ベットに寝かされていて、ハンナは部屋の隅っこで泣いていた。初めて見る泣き方。
いつもだったら、一しきり泣いたら、通常運転だけど……
「お~い。ハンナ? 最近変だけど……大丈夫?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
と、マリアにも心配をされる始末だ。
俺は睨んでやったけど、それすら、気づけなくなっている。
……ミヒャエル! 帰ってこいっ!
ハンナがふらふらしながら、歩いていると、マリアはちょいっとハンナを抱き上げた。
「やっぱり駄目だよ。って! 熱あるじゃんっ!」
「え?」
俺は、取り敢えず、獣人の姿に変わった。
「それなら、俺が連れて行く。あ、でも……ついてきてほしい」
「えっ?」
『どちらも言ってない!』と言いたげにしてるのを、無視して部屋に向かった。
……取り敢えず、あいつだけには遭遇しないようにして……部屋に着いた。
途中でハンナは寝てた。疲れてるのだろう。
「……私はどうすれば……?」
「頭を冷やす水とタオルを持ってきてほしい」
俺が苦虫を噛み潰したような顔で言うと、マリアはそれにつられて体が強張った。
「わ、分かった」
でも、そう言って、部屋にある桶に、タオルと水を入れた物を持ってきてくれた。
その間に、俺は解熱魔法が使えないか試してみたけど……あまり効果が無い。
気持ち下がるか、下がらないかぐらい。
俺は水が滴るタオルを絞りながら「この前、雨に濡れて帰ってきたんだ。まぁ、それだけじゃないと思うが」とため息交じりに言った。
「……ねぇ。ここの部屋、血の匂いが、するんだけど……気の所為だよね?」
コメント
1件
読ませていただきました……第15話、すごく重かったです🥀 ハンナの「何も守れない無能だ」って自分を責めるシーン、胸がぎゅっとなりました。ルイスの笑顔がフラッシュバックするところも、とてもリアルで……心が痛いです。 熱出して倒れて、でも“血の匂い”がまだ消えない感覚……最後のセリフ、ゾッとしました。よかったら、次でハンナが少しでも休めますように🌙