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甲斐Side



5月初旬‥イタリアから帰国した彼の空港での囲み取材を朝から幾度となくTVで流れているのを‥憧れの眼差しで見つめながらも‥

気持ちは落ち着かず、考える事と言ったら‥



藍さんのことばかりだった。




今回は暫しの休息を取り試合に臨む日程となっているらしい。




祐希さんはもう藍さんと会ったのだろうか‥









僕が祐希さんに会えたのは帰国して数日後だった。久しぶりに見るその表情は以前と変わらず‥でも、自信に満ち溢れていて


「甲斐は可能性を持っている」


と言ってくれた。期待に応えたいと心の底から思う。


顔合わせのようなその場面には‥藍さんもいた。嬉しそうな表情で話しかける姿を見ていられず‥‥

思わずその場から離れてしまう。








ロビーの椅子に腰掛けふっと息をつく。一人になりたくて探し求めたその場所は幸いな事に近くには誰も居ない。安堵しながら俯き‥思いを馳せる。

これからは練習、試合も始まる。そうなれば必然的に2人が一緒にいる場面を何度も見ることになるのに、今からこんな感じでやっていけるのだろうか。一抹の不安を覚えながらはぁ‥と深く溜息をつくと‥




「デカい溜息!笑。どうした?元気ないね?」


急に声を掛けられ、慌てて顔を上げると‥



「祐希さん!?」



僕の顔を見てニコリと笑いながら祐希さんが隣の椅子に腰掛けるのを思わず凝視してしまう。



「皆とまだ話してるかと思いましたよ‥」


「‥甲斐途中で抜けたでしょ?もうあれから1時間は経ってるはずだけど‥それまでここにいたの?」



「1時間!?」


慌てて時計を見ると‥ほんとだ、もうこんな時間‥。



気付かなかった‥。



「帰る前に甲斐に挨拶してから行こうと思ってさ‥でも、今日見てたら元気ないから気になって‥何かあった?」



ドキッとするが言えるはずもなく‥


「だ‥大丈夫です!ちょっと疲れてただけなので‥練習も始まるしそれまでには万全にしておきます!」


「そう‥体調管理はしっかりとね‥甲斐には期待してるから」


身体の疲れは多少あったのでそこを強調し話す僕を‥真っ直ぐに見つめていた祐希さんが頷きながらそう話す。


期待している‥その言葉は何よりも嬉しく感じた。



勢いよく立ち上がり、ありがとうございますと‥会釈をし去ろうとした‥










その時‥










「あっ、甲斐‥」










後ろから呼ばれ、振り向くと祐希さんがすぐそばに近寄り‥耳元で囁かれる‥










「俺が居ない間‥










藍が世話になったね‥」












「えっ‥‥‥?」






‥最初、言葉の意味を理解出来なかったが‥耳元で囁いた祐希さんの表情‥アルカイックな笑みを見た瞬間に‥理解した‥





祐希さんは気付いているということ‥






藍さんと僕の関係を‥。





何故‥






どうして‥





藍さんから話したとは考えにくい。






一気に冷や汗が流れる。






僕を見る瞳はまるで心の内側を全部知り尽くしているようで‥

言葉を紡ごうとするが‥阻まれてしまったかのように発する事が出来ない‥。そんな僕の顔を見ながら祐希さんが薄く笑う。



「そんなに驚く?



この間、俺が藍に電話した時そばにいたの‥





甲斐だろ?






バレないと思った?





まぁ、その時は相手が誰なのかまでは分からなかったけど‥



今日‥甲斐に会って確信した。








あの時居たのは甲斐なんだって‥。








ああ‥




大丈夫。




藍には伝えてないよ‥





今はね‥







ただ確認したかっただけだから‥」




そう話すと‥じゃあ‥と手を振り祐希さんは去っていった。




僕は‥





伝える言葉が見つからず‥ただ去っていく後ろ姿を眺める事しか出来なかった‥






発した言葉の意味に囚われすぎていたから‥










祐希さんの‥







激しい怒りに



気付くことが出来なかった‥。








この時 は‥。









小野寺Side



「えっ、浮気してるって?」


すぐには信じられず、マジマジと見つめるが‥どうやら本気で言っているらしい。


それでもにわかには信じがたい‥

だって、藍だぞ?

あのいつも祐希、祐希とうるさい藍が浮気をしてるって‥




その日、何人かの代表メンバーとの顔合わせの後‥久しぶりに飯でもどうかと祐希に誘われ、2人で行きつけの店にやってきた。

いつもの個室にて乾杯した後に‥いきなりこんな話だ‥。

あまりにも急すぎて面食らう‥。


「まさかと思うけど‥心当たりがあるって事だよな?」


「‥ああ、しかも今日確信した‥」


相手も分かったと‥。


「はっ?相手?男?‥まさか、俺も知ってる奴?」



思わず身を乗り出して聞いてしまう。


「‥太志も知ってる奴だから言わない」


「マジかよ‥てか、ここまで喋って教えないなんてある?俺、口硬いじゃん!教えて!」


必死で食い下がるが‥そこだけは教えてくれなかった‥


「祐希のケチ!そんなんだから藍に嫌われるんだぞ!あっ、もう浮気されてるんだっけ?笑笑」



面白半分の俺の言葉に‥ギロリと睨みが飛び‥慌てて笑うのを止める。


ああ‥祐希は嫉妬深いんだった。



藍‥



お前‥どうしてくれるんだ‥。







「でも、浮気してるって証拠は?」


「‥おかしいと思ったんだ。あんなにいつも連絡してくる藍が、時々連絡しない日があって‥


だから、夜中に電話掛けてみたら‥出たんだよ、その電話に‥藍が」



「??、普通電話に出ないなら疑うけど‥出たんだろ? 」


「藍はいつも寝るのが早いんだよ。夜中なんていつもなら寝てるからほぼ出ない‥なのにその日は出たんだよ。

しかも‥いつもと違ったし‥多分、その時相手がいた‥

いや、それももう確定してる‥」



‥はぁと溜息をつく顔を見ると、これはなかなか重症なのかもしれない。



いやいや、帰国した途端に大変だなお前‥と言いたくなるなるのをグッと堪えた。

矛先が俺に向いたら面倒なことになる‥。



しかし藍がね‥


まぁ割と藍は男女共にモテるからな‥アイツの事を好きな奴か‥


思い当たる奴は‥



「ははっ、まさか‥甲斐だったりして‥」



特に何にも考えずに発した言葉に、祐希の眼光が鋭くなる。


「えっ‥まさか‥」



「‥なんで甲斐だと思うの?」


「なんでって‥だいぶ前に食事した後‥酔って寝てた藍を送ってくれたの甲斐だったし。その後かな?2人が一緒にいるのを見たって話、聞いたから‥仲良いのは甲斐かなって‥



えっ、当たってる?」



俺の言葉に返事はなかったが‥


これはもう‥そういう事だろう。




これはさらに面倒なことになりそうだ‥。






食事も終え‥最後別れ際‥



「とりあえず藍にも聞くんだろ?


アイツさ‥お前居なくて寂しそうだったから‥


つい魔が差したんじゃない?



まぁ‥遠距離だと辛いよな‥



そんなに怒るなよ‥」




「‥太志はいつも藍に甘いよな‥」



「お前程じゃねぇけど‥」



とにかく会って話しして、許すこと‥そう祐希に伝えるが‥



厳しい表情に‥


コレはなかなか手強そうだ。



‥浮気している藍が悪いに決まっているが、寂しい気持ちも‥わからなくもないと思ってしまう俺も‥




やはり藍に甘いのだろうか。




去り際に再度念を押すが‥




きっとあれは‥





俺の手には負えない。


それだけ‥




祐希の表情は険しかった‥。





あまり負の感情を出さない奴だけに‥

どうなるのか‥想像もつかない。








それから2日後‥








“今日藍に会ってくる“



と律儀にも連絡が届く。





はぁ‥せめて今後の試合に影響がないようにと‥祈るばかりだった‥













快楽に溺れてく。

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