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第11話 勇往邁進
「その……──『記録』、逆もいけるんじゃないかって。」
「逆?」
私は顔をしかめながら言う。
「はい…今は、あるものを『有った』と記録しているじゃないですか、なら──」
そして私は話をさえぎるように勢いよく言った。
ウフツが言おうとしている言葉の続きが分かったのだ。
「無いものを『無かった』って書いたら!?…」
その発想はなかった。
早速試してみよう。私は恐怖や不安よりもそれが先に思いついたのだ。
「じゃあ…早速…!」
「はい!」
ウフツはその言葉を待ってましたと言わんばかりに元気よく返事をした。
(よし、書くぞ!…って)
「…何書きます…?」
書くものを考えていなかった…勢いよく、「じゃあ…早速…!」と言ったのに…とても恥ずかしい……
ウフツは耳が赤くなっている私をみて、「フフッ」と笑った。そして、直ぐにさっきの言葉に反応をした。
「例えば…『ベンチ』…とか?」
周りを見渡す。確かに、ここにはベンチは存在しない。
私は息を吐き、ノートとペンを取りだす。
──私はペンを走らせる。いざ書くとなると、自分が世界を変えていると身に沁みて感じ、手が震える。息をするのも忘れていた…
しかし、やはり好奇心が勝る。そんなことを考えている内に、ペンを持つ手は文字を書き終えるところだった。
「ここに昨日、ベンチは『無かった』」