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第12話 思慮分別
「ここに昨日、ベンチは『無かった』」
それを書き終えた瞬間、音もなく、瞬きをする間に、茶色の木で出来ているベンチが増えていた。
その様子を見て、ウフツはやっぱりと言わんばかりの顔をしていた。
私は、本当に起きたことなのか分からず、目を丸くして10度見ぐらいしてしまった。
「えっ?」思わずそんな声が出てしまった。しかし、ウフツは冷静だった。そりゃそうだ。ウフツが持ってきた案だから……
───それなら、ウフツはベンチがなぜ現れるのか…
原理が分かっているのではないのかと思い、理由を聞いた。
「ウフツ、なんでベンチが現れるか…分かる?」
ウフツはドヤ顔をしながら言った。
「もちろん、『矛盾』ですよ」
『矛盾』…またその言葉を聞いた。消えたり増えたりするのは…『矛盾』が鍵になっているのだろうか?
そんなことを思いながら、私は相槌を打った。
「”普通の人”が昨日有ったものを『有った』とノートに書けるはずがない。昨日の記憶がないはずないから。そして、同じように『無かった』とも書けるはずがない。」
「書けたら、『矛盾』してしまうから。」
「しかし───この世界は、『矛盾』を無くす。」
「あ…」
私は、──説明を聞き、理解した。この世界の理を。