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#高校生
第75話 「再会」
2023年3月。
春のセンバツ甲子園。
柳城高校は帰ってきた。
春の王者としてではない。
挑戦者として。
甲子園の土を踏む塁は、一年前とは違う表情をしていた。
夏の敗戦。
秋の成長。
すべてが今の自分を作っていた。
一回戦。
柳城 6-1 北陸商業高校。
二回戦。
柳城 5-2 関西学院高校。
準々決勝。
柳城 3-1 東海第一高校。
そして。
準決勝。
組み合わせ表の前で選手たちが立ち止まる。
相手の名前を見たからだった。
宮城育英高校。
誰も言葉を発しない。
あの日の雨。
延長十二回。
パスボール。
サヨナラ負け。
忘れた日はなかった。
宿舎。
ミーティングルーム。
福間監督が選手たちを見る。
「相手は宮城育英です」
誰も下を向かない。
以前とは違った。
「ただし」
監督は続ける。
「去年の試合とは関係ありません」
選手たちが聞く。
「明日の試合は明日の試合です」
それだけだった。
しかし。
十分だった。
夜。
宿舎の屋上。
塁が一人で夜空を見ていた。
そこへ史陽が来る。
「考え事か」
塁は笑う。
「少しな」
史陽も隣に立つ。
しばらく無言。
そして史陽が言う。
「兄ちゃんやったら何て言うかな」
塁が笑う。
「野球を楽しめやろ」
二人とも笑った。
啓介の言葉は今も生きていた。
翌日。
試合当日。
甲子園は快晴。
一年前の雨はない。
アルプススタンドには大勢の応援団。
そして。
舞の姿もあった。
教育学部二年生になった舞。
誰よりも柳城を応援していた。
試合前。
整列する両チーム。
塁は相手ベンチを見る。
そこには。
去年、自分たちを倒した選手たちがいる。
宮城育英もまた。
柳城を強く意識していた。
運命の再戦。
夏の敗者。
秋の王者。
春の挑戦者。
すべてを背負った一戦。
球審が右手を上げる。
「プレイ!」
甲子園に試合開始の声が響く。
柳城高校。
宮城育英高校。
因縁の続きを描く九回が始まった。
第76話 終
コメント
1件
塁が一人で夜空を見上げるシーン、静かでいいですね。“野球を楽しめ”──啓介さんの言葉が生きているのがじんわり沁みます。試合前の舞さんの姿にもグッときました。去年の雨と快晴の対比が美しくて、九回がどう転ぶか、もう待ちきれません。