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声の主によって集められた、ないし誘導されたわたしを含む何名かは、この馬鹿げた『ゲーム』を行わない限り恐らく出れないし、願いも叶えられないという状況。
その状況の整理を今からする。持ちえてる情報は整理しないと『知ってる』だけで終わる。わたしは情報という『使える手札』を増やさないとこのゲームを終わらせることは出来ないんだから。
まず、整理するのは現在置かれてる立場だ。わたしやほかの人物は自身の弱い心と声の主の甘い罠に誘われたということ。
次に部屋の構図だ。まず目に付くのは目の前のジオラマ。これは現実にも作用するようだが、それが嘘か誠かは定かでは無い。そして与えられた複数の端末と駒。また、ルーズリーフとペンなど恐らくこのゲームで使いそうなものも一通り揃ってる。更に食料などもいくつも用意されており、餓死することは無いと思っても大丈夫そうだ。とりあえず早速紙とペンを使わせてもらう。今わたしがまとめたものを目に見える形に残しておかないとね。いずれこれが作用する時が来るはずだから。
さて、次は『ゲームルール』だ。声の主は【神様ゲーム】とほざいていたが、その実態は言ってしまえば街づくりシュミレーションゲームのようなものらしい。つまり、目の前にあるジオラマを好きなように動かしたり物を消したりとして、理想的な街を創るのを目的としてるようだが、先にも話した通り動かせば現実世界に作用する可能性があること。もしそうなら、個人のわがままでそこに住む何名もの『人生』を壊す事となる。本当に作用するかは声の主しか知らないが、『もし本当なら……』と考えるとむやみやたらに触れられない。
他にも疑問点はある。声の主は建物を消せば現実世界でも消えると話していたが、その『消える』が何を指してるかだ。物理的に物が無くなるという意味なのか、それともそれプラス『そこに存在した』という事実までも消えるのか?
例えば田中さんの家を取った時『家が消える』と同時に『そこに住む田中さんが消える』ということになったとした場合。彼を知る人物の記憶からも消えてしまうのではないか?この仮説が正しかった時わたしはたった一つの家を持ち上げただけでその存在を消すという力を行使したということになる。こんな簡単な動作で全てを『無』に帰せると思うとこのゲームの意図が読めてきた。
これは、人の汚い部分を可視化する為に作られたゲームだ。自己中心的な考えを持つものによる独裁的な世界を作り出す。恐らくそれを本人に自覚させ、狂わすゲームだろう。狂わせた先を『彼』はみたいのだろう。
状況を整理してだいぶ落ち着いてきたと同時に心底後悔してる。一時の気持ちでこうもクソみたいなことをしないといけないことに。ここを出るためには『山札』をゼロにしないといけない。けど、そのカード達はリスクしかないものばかり。『行動』『命令』の二種の内容がなんなのかまでは把握出来ないが、こんな狂ったゲームの小道具だ。中身もイカれてるだろう。
何より怖いのはこれらを『達せない時』どうなってしまうのか。『彼』はその部分を一切触れてない。死ぬのかそれともなんともないのか。はたまた死ぬよりも恐ろしい何かが待ってるのか……。どうなるかを話さないあたりやはり反応を楽しんでるのだろう。全く嫌になる。
あとは、複数の端末の扱い方くらいだが、正直現時点では自分以外の人間の情報など要らない。言ってしまえば無駄な情報なのだ。基盤をしっかりと作ってないのにあれこれと手をつけると取り返しがつかなくなるのは経験済みだ。まさか、歯車の経験が活きるとは思わなかったが、こんな状況下でないと発揮されないのも皮肉が効いてるな。
さて……。今ある情報を洗い出してみたがやはりここから先に進むにはこの『山札』を引く必要が出てきたな。リスク云々なんてものは百も承知。やらなきゃ前に進めないのなら、道は一つ。
覚悟を決めて山札の一番上をめくる。引いたカードに書かれていたのは『【命令 建物を一つ移動させろ】』だった。
なるほど……。恐らく最初の数枚は他の人も同じようなものが書かれており、チュートリアルみたいなものをやらされるわけだ。しかもそれら全て【命令】なのでやらないという選択肢は無い。ここで、建物を動かしたりなんなりをやらせることで感覚を狂わせ、常人からどんどんかけ離れた行動を取らせようという魂胆か。意図が分かれば狂ったような行動は取らない、またはそういった選択を避ける術を考えられる。罠にはめられたけど、最後まで『彼』の意図通りに動いてたまるかって話。わたしは絶対彼の意に反した行動を取ってそのうえで真っ先にこのゲームを終わらせてやる。
そう決意を固まらせ引いたカードの【命令】通り建物一つを移動させる。移動させたのはコンビニで、自宅付近にコンビニが無かったので普段使う少し遠目のコンビニを移動させ置くスペースを確保するため似たような大きさの建物ひとつと入替える。入れ替えが終わると同時に、先程引いた命令カードは消失した。
なるほど役目を終えたカードはそれ自体が消失する仕組みなのか。で、気が付かなかったけどこの部屋の上の方の壁に電光掲示板みたいなのがあってそこに数字が記されてたけど、これ山札の数を示してたんだね。元々40って数字出てたけど、目の前からカードが消えた途端数字が変化して39に変わったのを見ると恐らくカードを隠してゼロ枚にしましたみたいなのを防止する策かな。
こういうのを見つける度に感じることは確実に精神崩壊を誘発しに行ってるなってこと。閉所的な場所に閉じ込め逃げる手段は与えられたゲームクリア。ズルしようにも対策されており素直に従う他ない。が、素直に従えばゲームの性質上誰かの人生を壊さないといけない。往くも還るも地獄ってとこか……。