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「んじゃ!今日は僕がポポを散歩に連れていくね」
柚彦君が嬉しそうにお店のカウンター越しに私に小さな花束をくれた
私はクレープを焼く手を止め感激に笑顔をほころばせた
「うわぁ~!素敵!ありがとう柚彦君」
「そんなぁ~お店の残り物だよ」
彼が照れて言った、なんともそれが可愛いかった、それに早上がりの彼はこれからポポの夕方の散歩に連れて行ってくれるとさえ申し出てくれた
私は思いがけない彼の好意に甘えようと思った
家で用を足さないあの子は、雨の日も台風の日も外へ朝夕散歩に連れて行ってあげないといけない、そしてポポは柚彦君にとても懐いている、彼がポポの相手をしてくれると、とても助かる
私は月一回の棚卸しで今日はとても遅くなるのだ
最も棚卸なんて定時で帰る榊原さんの店長である仕事だと思うのだけど・・・
「本当にありがとう、これは私のおごりよ 」
私は彼の好きなバナナチョコレートクレープをお持ち帰り用の箱に入れて、家の鍵と一緒に彼に渡した
「あら!なんだか楽しそうね~ 」
私達が楽しくおしゃべりしている時に、休憩から帰ってきた榊原さんが猫なで声で寄ってきた
チッと思わず私は口を鳴らしそうになった
彼女の視線は柚彦君へと移っていき、彼を下から上まで眺めまわした
そして私をゾッとさせるような笑顔で話しかけてきた