テラーノベル

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

ランキング

コンテスト

出版・メディアミックス作品

あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

一覧ページ

「あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜」のメインビジュアル

あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

第155話 - 47．采配⑥

282

2025年10月22日

#大人の恋

#溺愛

#オフィスラブ

#年の差

#ドタバタなラブコメ

#ハッピーエンド

鷹槻れん

シェアする

この作品はいかがでしたか？

282

鷹槻れん

プロフィール

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール

テラーノベルのスクリーンショット

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい！がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

ホーム

検索

通知

本棚

「うん……。三ヶ月ほど、よその会社へ出向することになっちゃって……」

「三ヶ月経ったら戻ってくるのよね!?」

「……か、会社には戻ってくるんだけど……ここには戻れない……かな……」

もだもだと仁子（じんこ）に説明しながら、羽理（うり）は先程土井社長から言われた言葉を思い出していた。

＊＊＊

「あの……この会社って……」

青果専門に扱う土恵（つちけい）商事とは全くの異業種。事務用機器を手広く商（あきな）っている『オフィスオール』という社名を聞かされた羽理（うり）は、財務経理課でも請求書などでよく見かけるその会社と、土恵（つちけい）とが物品の売買取引以外で何の繋がりがあるんだろうか？とキョトンとした。

「荒木（あらき）さんはたいちゃんに柚子（ゆず）ちゃんとは別にもう一人、お姉さんがいるのは知ってる？」

「え……？あ、はい。あの、確か……七味（ななみ）さん……でした、よね？」

大葉（たいよう）のご両親や、彼のすぐ上の姉――一羽（いちば）柚子（ゆず）とは面識がある羽理だったけれど、一番上の姉――味野（あじの）七味（ななみ）のことは写真でちらりとお見掛けした程度。時折大葉（たいよう）たちの口から話題に上がるのを聞いたことはあるけれど、面識はまだないです……とぼんやり考える。

いきなり社長の口からそんなお義姉（ねえ）さまの名前が出てきて、羽理の頭は疑問符だらけだ。

「荒木さんにはね、その、な（・）な（・）ち（・）ゃ（・）ん（・）が（・）い（・）る（・）会（・）社（・）へ三ヶ月ほど出向してもらおうと思ってるんだ」

「え？」

羽理が思わず間の抜けた声を出したと同時、

「何で羽理（うり）が七味（ななみ）んトコへ行かなきゃならないんですか」

大葉（たいよう）が羽理の疑問を代弁してくれる。

「え？知らないの？ななちゃん、オフィスオールで秘書課のチーフをやってるんだけど」

結局、そこで秘書としてのスキルをみっちり身に着けておいで？ということらしい。

＊＊＊

役員机（エグゼクティブデスク）上に置かれたノートパソコンから花菱（はなびし）マークのロゴを持つ『はなみやこグループ』のホームページが表示されたタブを落とすと、すぐ下から『コノエ産業』のホームページ、そうしてそれを閉じると『オフィスオール』のホーム画面が表示される。

公開された情報なんてどこも当たり障りのないモノばかり。

『はなみやこ』を率いる花京院（かきょういん）岳史（たかふみ）ですら、画面上では清廉潔白（せいれんけっぱく）なやり手リーダーに見えるから不思議だ。

（ま、僕（うち）も似たようなものか）

小さく吐息を落とすと、土井恵介は机上に出していた倍相（ばいしょう）岳斗（がくと）と荒木（あらき）羽理（うり）の入社時の履歴書が入ったファイルをそっと机の引き出しに仕舞う。

優秀な社員は消耗品ではなく会社の財産だ。

自分はずっとその信念のもと、土恵（つちけい）商事を率いてきたし、社員らのことをそういう目で見守ってきた。

オフィスオール社長は自分の経営理念に近い考えを持っているが、はなみやこやコノエのリーダーとは相容（あいい）れないだろう。

可愛い甥っ子の屋久蓑（やくみの）大葉（たいよう）にこの会社を引き継ぐとき、彼を支える優秀な社員は一人でも多い方がいい。

そのためならば、自分は少々の無理など大して厭（いと）いはしないのだ。