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あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

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あのっ、とりあえず服着ませんか!?〜私と部長のはずかしいヒミツ〜

第156話 - 48．離れている間も幸せだったけど、気が付いたら浦島太郎になっていました①

256

2025年10月23日

#大人の恋

#溺愛

#オフィスラブ

#年の差

#ドタバタなラブコメ

#ハッピーエンド

鷹槻れん

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「でね、でね、七味（ななみ）お義姉（ねえ）さまは本当にすごい人なんですっ！」

羽理（うり）が土恵（つちけい）商事を離れて『オフィスオール』へ出向してから、およそ二ヶ月が過ぎた。

あとひと月もすれば、土恵（つちけい）商事――というより自分のすぐそばへ愛しい彼女が戻ってきてくれる思うと、その日が待ち遠しくて堪らない大葉（たいよう）だ。

「まぁあの人は昔っから何でも卒なくこなすタイプだったからな」

職場は離れても何とか腐らずにいられたのは、こんな風に家では羽理の息遣いを間近に感じながら過ごせるからに他ならない。

自分が作ったキムチ鍋を、ハフハフしながら嬉し気につつく羽理を見詰めて、大葉（たいよう）は思わず頬を緩ませる。

キムチには豚肉が合うと思って、今日は脂のよくのった豚バラ肉がたっぷり入れてあるのだが、大葉（たいよう）としては羽理には一緒に煮込まれた白菜や長ネギ、キノコやニラ、もやしや豆腐なんかもしっかり食べさせたい。

「ほら、よそってやるから皿貸せ」

湯気越し。空っぽになった皿を片手に鍋の中をじっと見つめる羽理が見えて、大葉（たいよう）はついお節介をしたくなる。

「自分で取れますよぅ」

羽理がぷぅっと頬を膨らませるのを見詰めながら「お前に任せてたら肉ばっか狙うだろうが」と言ったら「失礼ですね！ちゃんとソーセージも取るつもりですよ!?」とか。

「どっちみち肉だろうが」

クスクス笑いながら言ったら、羽理がグッと言葉を詰まらせて、大葉（たいよう）はそんな彼女の手からすかさず取り皿を奪い取った。

「あっ」

抗議の声を上げる羽理（うり）を無視してまんべんなく具材をあれこれつぎ分けながら、「で？七味（ななみ）からは、なに習ったんだ？」と羽理を見詰める。

「えっと……餃子も作りましたし、釜めしも作りました！あ。先週行ったときは筑前煮も習ったんですよ!?」

「筑前煮、上手く出来たのか？」

「……み、みんなと一緒だったのでっ」

実は七味（ななみ）からは『オフィスオール』で秘書としてのノウハウを学ぶだけでなく、ついでみたいに土日祝日を利用して花嫁修業的なことも教えてもらっている羽理である。

このところ休みになると七味（ななみ）が羽理を迎えに来て実家へ掻っ攫（さら）って行ってしまうから、大葉（たいよう）としては非常に面白くないのだ。

付いて行こうとすると「男子禁制」だと七味（ななみ）に言われてしまうので、『毎週毎週、別に無理はしなくていいんだぞ？たまには休め！』と羽理を何度も唆（そそのか）してみている大葉（たいよう）である。だが残念ながら、時にはすぐ上の姉の柚子（ゆず）や母・果恵（かえ）までが混ざって女性陣数人でワイワイガヤガヤするのが、もともと女系一家で過ごしてきた羽理には楽しくてたまらないらしい。

『無理なんてしてませんよ？むしろすっごく楽しいです！』

なんて、大葉（こいびと）の心を無下にする。

「筑前煮、今度俺と一緒に作ろう。俺だって教えてやれる。むしろ七味（ななみ）より上手に！」

そんなあれこれを思い出して、なんとなく対抗心を燃やしたら、

「たっ、大葉（たいよう）が一緒だと私、野菜とか洗うのしかやらせてもらえないのでイヤです！」

と羽理が誘いを断ってくる。

「切ったり味付けしたりも頼んでいいのか？」

「……っ！」

言葉に詰まる羽理を見て、（こいつ、実家では何をやらせてもらってるんだろうな？）と思わなくもない大葉（たいよう）だ。

「ほら」

鍋の横から、たんまりあれこれ乗せた、湯気のくゆる取り皿を羽理へ手渡してやりながら、伸ばされてきた彼女の小さな手を見てふと思う。