テラーノベル
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用事を済ませ、街の活気を背に帰路についた滉斗。
腕には元貴が好きだと言っていた、焼きたての菓子が包まれた紙袋が抱えられている。
家の門を潜り、静まり返った庭へ足を踏み入れると、そこには穏やかな午後の陽光に包まれた光景が広がっていた。
「……元貴?」
低く呼ぶ声にも、返事はない。
縁側では、元貴が日向ぼっこをする猫のように丸くなって、ぐっすりと眠りに落ちていた。
ぽかぽかと暖かい冬の終わりの陽射しが、元貴の柔らかな髪を黄金色に縁取っている。
元貴は、滉斗が着ていた羽織を自分に掛けていた。少しだけ大きいその羽織に包まれ、規則正しい寝息を立てる姿は、かつて王都で重圧に耐えていた面影などどこにもなく、ただ一人の愛されている青年の顔だった。
滉斗は足音を殺して縁側に歩み寄り、その隣に腰を下ろした。
「……無防備すぎるだろ」
呆れたように呟きながらも、滉斗の口元には自然と柔らかな笑みが浮かぶ。
かつて戦場や厳しい修行場で過ごしてきた滉斗にとって、この「平和」の象徴のような寝顔こそが、命を懸けて守り抜いた成果だった。
滉斗は持ってきた荷物を傍らに置くと、元貴の頬にかかった一筋の髪を、指先で優しく耳に掛けた。陽射しを浴びた元貴の肌は驚くほど温かく、生きている証を滉斗の指先に伝えてくる。
起こすのは忍びない。そう思った滉斗は、元貴の横に寄り添うようにして背中を丸めた。
すると、眠っていたはずの元貴が、無意識に滉斗の気配を感じ取ったのか、「ん……」と声を漏らし、温もりを求めて滉斗の腕に擦り寄ってきた。
「……おかえり、ひろぱ……」
夢か現か、微睡みの中で元貴が小さく笑う。
滉斗はその肩を抱き寄せ、元貴が被っていた自分の羽織を、二人を包むように掛け直した。
「ああ。ただいま」
返ってきたのは、小さな寝息だけだったが、それで十分だった。
滉斗もまた、心地よい陽だまりと、腕の中にある確かな重みに身を任せ、ゆっくりと瞳を閉じた。
かつては一刻の休息さえ許されなかった二人。
今、この縁側で流れる時間は、誰にも邪魔されることのない、二人だけの新しい歴史の一部。
春を待つ風が庭の木々を揺らし、仲睦まじく眠る二人の上に、柔らかな光の粒が降り注ぎ続けていた。
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コメント
2件
見るの遅くなっちゃった💦もうラブラブじゃない♡笑2人の小さい時の絡みもっと沢山見てみたいです!
このお話1番大好きです! 滉斗がどんどん甘めになっていくの好きです!