テラーノベル
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「明日こそが本番だ。研究授業なんてただの前座。明日の合同授業参観で、全校の親と中学の先生どもの前で、4組の『完全体』を見せつけてやる」
放課後の夕闇が迫る教室で、夏太(なつた)は狂気に満ちた笑みを浮かべ、黒板に明日のタイムスケジュールを書き殴っていた。完全に調子に乗っていた。研究授業で教頭に怒られたことなど、翔(しょう)たちの裏切りを力ずくで圧殺した勝利の快感の前に、すべて吹き飛んでいた。
夏太が目論む「本番のテロ」は、今日の研究授業を遥かに凌ぐ壊滅的な内容だった。
「いいか、明日の国語の時間は、親たちが後ろをギチギチに埋める。そこで、今日新しく覚えた『意味』を、全員で一人ずつリレー形式で発表していくんだ。教科書の文章を強引に全部下ネタに言い換えてな。弥(わたる)、お前はトップバッターだ。『お盛ん』の本当の意味を、後ろにいるお前の母ちゃんの顔をまっすぐ見て大声で教えてやれよ」
「……あはは。うん、わかった。僕の母ちゃんの前で、夜中のことを全部バラしてあげるよ」
弥は完全に光を失った死んだ目のまま、ピクリとも動かない笑顔で平然と言い放った。その横では、賢太(けんた)が「僕は45の担当だね」、翅(つばさ)が「僕は棒の担当」と、壊れたロボットのように自ら進んで最悪の言葉を口にしている。周囲のクラスメイトたちも「それマジで親の顔が見ものだわ!」「学校史上の伝説確定じゃん!」と、麻痺した笑顔で机を叩いて盛り上がっていた。
クラス全員が、自らの親の尊厳を破壊し、自分たちの人生を終わらせる自爆テロを「最高のエンターテインメント」として本気で実行しようとしている。狂気は完全に臨界点を超えていた。
「てめぇら……正気かよ……!」
翔は激しい怒りと、あまりの不気味さに全身の震えが止まらなかった。明日、この計画が実行されれば、4組の全員が社会的に破滅する。夏太のくだらない支配欲のために、幼馴染たちの未来が完全に生贄に捧げられようとしていた。
「翔、もう言葉で言っても無駄だ」
隣に立つ大神蹴介(おおかみ しゅうすけ)の声は、低く、冷たく、そして地を這うような重圧を孕んでいた。その瞳には、夏太の狂気すらも凍りつかせるほどの、底知れぬ怒りの漆黒が宿っている。
蹴介は一歩前へ踏み出し、夏太の目をまっすぐに見据えた。
「夏太。お前は明日、自分の親の前でその汚い口を開いた瞬間、人生で一番後悔することになる。お前のその安っぽい王国ごと、明日の公開授業で、俺たちが跡形もなく叩き潰してやるからな」
「あ? やれるもんならやってみろよ、陰キャが!」
夏太が鼻で笑うが、蹴介の放つ圧倒的な威圧感に、教室の笑い声が一瞬だけ引きつるように止まった。
放課後のチャイムが鳴り響く。
明日、すべての親たちの前で幕を開けるのは、狂気の一斉テロか、それとも翔と蹴介による執念の断罪か。6年4組の命運をかけた、本当の最終決戦まであと18時間――。
金曜日の5時間目、公開授業参観。
6年4組の教室の後ろは、生徒たちの父親、母親、そして中学校から視察に来た見慣れない大人の先生たちで、隙間もないほどギチギチに埋め尽くされていた。
誰もが我が子の成長を楽しみに、穏やかな笑顔を浮かべている。その中には、弥(わたる)の母親の姿もあった。
教壇に立つ熱海先生は、昨日の研究授業の一件で生気を失い、幽霊のような顔で教科書をめくっていた。「……よし、それじゃあ、国語の音読に入るぞ。122ページから、一人ずつリレー形式で読んでいってくれ。まずは……弥、立ちなさい」
その瞬間、教室の空気がピキリと凍りついた。
夏太(なつた)が、教室の真ん中でニヤリと、悪魔のような不快な笑みを浮かべた。それを合図に、クラスのほぼ全員が、あの「麻痺した歪んだ笑顔」を一斉に顔に貼り付けた。
(((((始まった……!!!!)))))
翔(しょう)と蹴介(しゅうすけ)が止める間もなかった。
立ち上がった弥は、後ろにいる自分の母親の顔を、光の消え失せた死んだ目でまっすぐに見つめた。そして、教科書など一切見ずに、昨日夏太から脳に直接叩き込まれた「不快な意味」を、全開の音読の声で朗読し始めた。
「僕は昨日、夏太くんに『お盛ん』の本当の意味を教えてもらいました。大人がやる意味です。後ろにいる僕の母ちゃんも、夜中に親父と狂ったみたいにお盛んにやって僕を産んだんだと思います」
「――ッ!?」
教室の後ろで、弥の母親の顔から血の気が一瞬で引き、持っていたバッグを床に落とした。周囲の保護者たちから「え……? 何言ってるのこの子……」「冗談よね……?」と、驚愕と嫌悪のささやきが広がる。熱海先生はショックのあまり声も出ず、ただ口をパクパクと開けている。
しかし、4組の狂気は止まらない。リレー音読は強制的に次の標的へと繋がった。
次に立ち上がったのは、賢太(けんた)だった。
「はい、次は僕です。僕はさっきの授業中、悲しくて泣いていたんじゃありません。車のナンバーの『4545』の意味を思い出して、机に押し付けて07◯1をしていました。みんなの前で再現をしろと言われました。」
「賢太……! やめなさい! 何を言ってるの!!」
後ろから賢太の母親が悲鳴のような声を上げて駆け寄ろうとしたが、賢太は母親の顔を見ようともせず、ただ死んだ目で「あはは、本当のことだよ」と機械的に笑った。
最後は、翅(つばさ)だった。
「僕の担当は棒です。あそこに出し入れする棒です。僕は給食のソーセージを棒だと思って味わって飲み込みました。おいしかったです」
「ギャハハハハハハハ!!!」「マジで言った! 神すぎる!!!」「大成功じゃん!!!」
夏太と高尾が狂ったように机を叩いて大爆笑し、麻痺したクラスメイトたちも一緒になって、親たちの目の前で下品な笑い声を響かせた。
保護者たちは全員、顔を真っ白にして絶句し、ある母親は涙を流して我が子を見つめ、ある父親は「ふざけるな!!」と怒号を上げた。視察の中学校の先生たちは、ゴミを見るような冷徹な目でメモを取り、一斉に教室を出ていった。
計画は、完璧に実行されてしまったのだ。
「ほら見ろよ、大神! 翔! 俺たちの勝ちだ!!」
夏太が、愕然と立ち尽くす翔たちを振り返り、勝ち誇った声を上げた。
翔は、その場に崩れ落ちた。
救いたかった。止めようとした。けれど、夏太の言葉の暴力によって完全に脳を破壊された幼馴染たちは、自らの手で、親の前で、自分の人生を粉々に破壊してしまった。
弥も、賢太も、翅も、親たちが泣き叫ぶ中で、ただ「あはは……あはは……」と、光のない目のまま狂ったように笑い続けている。
隣に立つ大神蹴介の拳からは、あまりにも強く握りしめすぎたせいで、爪が食い込んで血が滴り落ちていた。その顔には、怒りを通り越した、この世の終わりを見るような深い絶望だけが浮かんでいた。
クラス全員が笑顔で自爆し、大人たちの信頼も、子供たちの未来も、すべてが不快な下ネタの泥水の中に沈んで消えた。
6年4組に訪れたのは、再生の余地すら残されていない、完全な「破滅」だった。
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コメント
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うわ……読んでてこっちの胃が痛くなったわ。弥たちがあんなに壊れた目で自爆していく描写、マジで悍ましかった。夏太の支配の恐ろしさがひしひし伝わってきたよ。翔と蹴介が止められなかった無力感、これからの展開が気になる!