TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
シェアするシェアする
報告する

土曜日、部屋をネット検索している。


今週もランチのお誘いがあるかもと予定を入れなかった。なんだか期待していたみたいで恥ずかしい。

昨日もおやすみLINEが来て、今日のことに触れていなかったけど朝に連絡が来るかもしれないとスマホを何度も見たりした。

恋人でもないし、毎週土曜日に会おうなんて言ってないけど勝手に期待していた。


期待?


その言葉を取り消すように頭を振る。


なんだかバカみたい。


会社の近くもしくは多少遠くても電車で一本なら十分だ。

1LDKか2DKくらい、賃料によっては1DK。

オートロックは欲しい。築浅がいいけど贅沢は言えないし、追い焚きは諦めよう。

希望の要件にチェックを入れたり外したりしながら検索をしていくといくつかヒットした。

2件ほど内見予約を入れてから、RyoのSNSを見ると新しく可愛らしいイラストがアップされていた。

イラストにいいねを付けるとベッドに横になった。



階下から名前を呼ばれて慌てて返事をする。

あのまま寝落ちしてしまったようだ。

一階に降りると母に用がないなら買い出しに行こうと言われ車に乗り込んだ。


「大丈夫?」


「いや、近くのスーパーまでなんだから大丈夫だよ。失礼しちゃう」


二人で笑いながら他愛のない話で盛り上がる。母と二人で出かけるのも久しぶりな気がする。


「元気になってよかった」


やっぱり心配していたんだろうな、尚更に正人の性病の話はしないほうがいいだろう、私自身は問題がなかったんだから。


「明日、お部屋の内見に行ってくるから」


「ここに居たければ居ていいんだよ」


「ありがとう、だけど会社の近くの方が通勤が楽だし、なんか家にいると安心してダレちゃって」


「あんたのことだから無理をするなって言ったって無理をするんだろうけど、私たちが元気なうちはいくらでも頼っていいんだからね」


「うん」


「そう言えば、今日は甲斐さんとおでかけじゃないの?」


何で?凌太と出かけていることは伏せているのにバレてる。


「えっと・・・」


どうしよう、父さんは知ってるんだろうか?


「お父さんは気がついてないと思うわ」


恐るべし母!


「何で分かったの?」


「甲斐さんだってケジメを付けたくて謝罪に来たんでしょ。二人とも大人なんだから私が何かを言うつもりは無いけど、ただ一つ言えるのは瞳には幸せになってほしい」


「別に、付き合ってるとかじゃなくて友人だから」


そう答えたが、母は「はいはい」と軽く流した。




半額になっていた白身魚の切り身を購入してムニエルを作った。

自分でいうのもなんだけど、とても美味しかった。



ベッドの上にうつ伏せになりながらRyoのSNSをチェックする。

プロフィールを見ると会社員と書いてありイラスト以外に風景やちょっとした日常の写真もアップされていて、[素敵]みたいなコメントが多数入っている。

自宅の庭やリビングの画像を見るに資産家なのかもしれない。

テーブルに並んだ和食の手料理の先に横向きに立っている年配女性がうつりこんでいる写真に#いつも美味しいご飯をありがとう#うちの家政婦さんとハッシュタグが付けられている。

[家政婦さんとかやっぱRyoさん金持ち]

[家政婦さんのご飯]

[Ryoさん結婚したい]

などのコメントが多数ついている。


この女性・・・なんか知ってる気がするけど


ブルッ

[今日は仕事で食事に行けなかったら明日はどう?]


仕事だったんだ。

甲斐商事の専務で次期社長だもんね、忙しかったんだ。


そう思うとちょっとホッとしている自分に気がついて自己嫌悪になる。


いやいや関係ないし、あくまでも私たちはただの友人だ。

頭をブルブルと左右に振って自分の考えを振り払った。


[明日は部屋の内見に行くので却下です。また今度]


これでいい、一度は愛していた人と友人になれるとは本当は思ってない。

あの時途切れた糸はもう繋がることはないんだから。


画面に着信を知らせる通知が入るとともにブーブーブーと音が鳴り始めた。

返信をしたばかりでは居留守も使えない。


「メッセージの通りだから」


『じゃあ一緒に行こう。一人で行くより二人の方が相手に飲まれなくていいんじゃない?』


「むしろ二人で行くと変に邪推されそうで嫌なんだけど」


『二人で並ぶとそんな風に見えると思ってるんだ』


「男友達が遊びにくるかもしれないって思われそうでしょ」


『ナルホドね、どのあたりで探してるんだ?』


「◯◯線、やっぱり会社の近くがいいと思って」


『どこの不動産屋?』


「◯◯駅前にある不動産屋」


『了解、◯◯駅前に集合な。俺の部屋からも近いし、内見が終わったら飯を食いに行こう。時間はラインに送っておいて。じゃあ、お休み』


凌太は一気に自分だけ話をするとさっさと通話を切ってしまった。


これって、私に断る隙をあたえないってこと?


[午後1時30分]と[おやすみ]という文字を送信した。


また凌太のペースだ。

でも、嫌になれない自分が本当に嫌だ。

この作品はいかがでしたか?

33

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚