部屋は静かだった。編集も終わって、ぜんいちはソファに沈んで、スマホを見ていただけ。
その沈黙を壊したのは――
「……3」
前触れもなく、マイッキーが言った。
「え?」
聞き返した瞬間、心臓が一拍遅れる。
マイッキーはテレビも見てないし、スマホも触ってない。
ただ、ぜんいちを見てる。
「なに、今の」
笑って誤魔化そうとした。
でも喉が乾いて、声が軽く裏返る。
マイッキーは答えない。
代わりに、ゆっくり一歩近づく。
「2」
低い声。
冗談っぽさが、どこにもない。
「ちょ、ちょっと待って、なにが2?」
ぜんいちは立ち上がろうとする。
でも、肩に置かれた手が重い。
力は入ってないのに、逃げられない。
「動かないで」
穏やかな声。
命令みたいじゃないのが、余計に怖い。
「マイッキー、なに?冗談でしょ?」
視線が合う。
その瞬間、ぜんいちは悟る。
――これ、答えを間違えたらダメなやつだ。
「1」
耳元で、囁かれる。
「……ぜんいち」
名前を呼ばれただけなのに、背中がぞわっとする。
「俺の言うこと、聞ける?」
問いかけは優しい。
でも、選択肢はない。
沈黙が落ちる。
ぜんいちは唇を噛んで、震える声で言う。
「……聞く」
その瞬間、マイッキーは何事もなかったみたいに笑う。
「はい、正解」
肩から手が離れる。
空気が戻る。
さっきまでの緊張が、嘘みたいに。
「今の、なに……?」
ぜんいちが聞いても、マイッキーはもう振り返らない。
「別に?」
軽い声。
「カウントダウン、好きでしょ?」
その言葉で、ぜんいちは理解する。
――あれは始まりでも終わりでもない。
**“従うかどうかを測る合図”**だ。
次はいつ始まるかわからない。
3も、2も、1も。
だからぜんいちは、
何も言われてないのに、先回りして動くようになる。
カウントダウンが来ないように。






