その一言で全てを悟ることはできなかった。
でも確かに、普段とは違い、優しいような少し申し訳なさそうな声でそう言った。
初対面の人間の言葉は受け入れられない、けれど、その言葉は本心に聞こえた。
「だ…大丈夫…ですケド。」
「その声色は大丈夫じゃねぇだろ…。」
「えぇと、鳴咲先輩ですよね…。なんでここに。」
素朴な疑問だった。
普段なら嫌々答える彼だが、彼はいつもと違ってこう言った。
「そりゃ、…魔法少年について話するためだろ。」
なんでその話を…つまり…。
「じゃぁ、鳴咲先輩が…『メイ』…なんですか?」
「…言いたくねぇけど、そうだよ。」
「…なんで、鳴咲先輩は魔法少年に?」
それは聞かないで欲しいのか、目をそらした。
「ごめんなさい、言いたくないですよね。」
「…別に、意味なんて何にもねぇから。」
本心は聞かない方がいいのだろう。
そのことは深く覚えておこう。
「…そうだ、『マシロ』って呼んでいいか?」
「いいですけど…。」
「よろしくな、マシロ」
そう言って彼は僕の頭を撫でてくれた。