アイゼルさんの屋敷で鍛錬が始まった。朝は座学で魔法学と国の事について。昼からは剣術をひたすら教えて貰う…というか素振りをひたすらしていた。「まずは剣に慣れて貰う」
アイゼルさんの目はなんか鋭いというか冷たい。殺気すら感じる。
でもあの時感じた魔物に比べると弱い。アレは殺す。絶対に殺す。
素振りが遅れた。
「遅い!」と横から鞘を入れた状態の剣で頭を叩かれる。
ちなみに素振り様に振ってるのは練習用の木剣では無く鞘を固定しているバスタードソードだ。とても重い。正直言って最初は短剣とかからなのかなとか思ってたがそんな事は無かった。なんでバスタードソードなんて持たせるんだろう…。あまり見たくなかったのに。
ちなみに私は今アイゼルさんの屋敷に住み込みで訓練を受けてる。なんでも私の家が無いのを知ってか、屋敷に住ませた方が遅刻も何も無いだろうという考えらしい。私にとっては馬小屋とかで野宿しなくて良かったと思う程度だったからありがたい話だけどどうして屋敷の部屋なんて貸してくれるんだろう。オマケに3食ついててなんだか変な気分、。
屋敷での訓練が始まって4ヶ月くらい経っただろうか
「その剣に慣れたのなら今度は盾だ」
「え?」
「はいと言いなさい。それと朝から教えている魔法学も実践演習に組み込む事にするのでそのつもりで。」
………………え?
「はい……」
「宜しい。では明日からそのようにするのでそのつもりで。その剣での素振りだけは絶対に忘れないように」
今度は盾と魔法、。アイゼルさんが何を考えているのか何となく分かってしまう。4人パーティである白銀の剣のメンバーの武器を教えようとしてるんだなと。そんな気がする。
ベルグのバスタードソード、レジーナの杖、ガンツの盾にジンの短剣
今素振りをしてるバスタードソードはそれじゃないけど多分そういう事なのかなって想像出来てしまった。
でも私って魔法はあまり適正無いってギルドで言われてるし、。困ったなぁ、。
ギルドにおいての魔法の適正は魔導展開石と呼ばれる杖の形をした石に魔力を込める事で様々な魔法が展開され、それで適正を判断される。魔法が展開出来ていればいるほど魔法に対して適正アリと判断され、逆に何も展開しないと適正無しと判断される。
ちなみに私は2つだけしか展開できてなかった。出来たのは「時空」「圧縮」の2つの魔法だけだったからあまり、。
翌日
盾の練習は重たいタワーシールドを持ちながらの持久走だった。問題はたまにアイゼルさんが横から剣で攻撃してくるから気が抜けない。
さらに杖の練習もほぼ同時に行って盾が終われば杖を。杖が終われば盾をと繰り返し行うんだけど、。
私は体力が持たなかったのかしなくてはいけない素振りをしようとして気絶した。
その夜
「初日かそこらで根をあげるかと思っていたが、。ノストと言ったか。中々やるようだな。」
アイゼルは紅茶を飲みながら家族と話していた。
「父上はいつもそうだ!落ちこぼれな俺には気にもとめずに見込みがある奴しか教えさせようとしねぇ!そんなに俺が嫌いかよ親父!!」
「ノイマン。」アイゼルは長男をたしなめるが
「父上には分からねぇだろうさ!次男には剣で抜かれ、冒険者でも有名人になった。俺はなんだ?何もねぇ!何もありゃしねぇじゃねぇか!」
「ノイマン!いい加減にしないか!」
「ノイマン、。」
なにか言おうとと母であるディア・ベルグは言葉に困っていた。
いつもならこんなに爆発していないノイマンが感情を爆発して話すのはいつぶりだろう。そう、亡くなった次男であるアドマイヤ・ベルグが冒険者になると言って家を出た時もそんな事を言っていてましたっけ。
「ノイマン。あなたはちゃんと努力していますよ。」
その一言が余計な一言だったか
「……何も知らねぇ癖に」
そう言ってノイマンは部屋から出ていった。それと遅れる形でノストは部屋に入って来た。
「あの、。なにかありました?」
アイゼルさんは少し悩んでいたようだけどこっちを見てこう言われた。
「ノスト、明日は模擬戦だ。相手はノイマンという私の長男だが」
「それって負けた方が良いんですか?」
「いや、その必要はない。お前が鍛錬をした成果が見たいのと、あの息子が少しでも鍛錬に協力的になってくれればそれで良い」
「わかった」
「分かりましただ。」
「分かりました」
そう言い直すと夕飯を食べる。
明日は武器を人に向けるのか、。初めてだなぁ。向けられるのは慣れてるけどさ。
「ノスト、食事が終わったら今日はすぐに寝なさい。」
「分かりました」
そう言って私はすぐに食べ終わって部屋で寝ることにした。
翌日。ノイマンという長男と模擬戦が始まった。