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#近未来
鳳蓮荘
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『テトリス:僕らの歪なテトリス』
【第1章:どうしてこんな目に(完璧なブロック)】
「如縣、千導。お前たちなら次のテストも学年トップ、狙えるよな?」
担任の言葉が、如縣遼太と千導渉の肩に重くのしかかる。
学校での僕らは、周囲から見れば「完璧に綺麗に切り揃えられたブロック」のようでなければならなかった。隙間を作ることは許されない。少しでも噛み合わせが狂えば、たちまち「脱落(ゲームオーバー)」の烙印を押されてしまうような焦燥感。
「……チッ、うぜぇ」
遼太がぶっきらぼうに吐き捨てるが、その手は次の模試の参考書を強く握りしめていた。
「やるしかない。僕らは期待を裏切れないからな」
渉もまた、冷淡な仮面の下で、息が詰まるようなプレッシャーと戦っていた。積み上がるタスク。落ちてくる期待。僕らの心は、限界まで積み上がったテトリスの画面のように、今にも窒息しそうだった。
【第2章:不揃いな奴ら(知らないくせに)】
「おーい! 何真面目な顔してんだよ二人とも! これ見てよ、俺の新作ギャグ!」
そんな重苦しい空気をぶち破るように、大神蹴介と如月秀が教室の後ろで大騒ぎを始める。
「おい、静かにしろ。今勉強中だ」
渉が冷たくあしらうが、秀は「固いこと言うなよ! ほら、悠馬もなんか言え!」と話を振る。
クール系男子の神代悠馬は、真顔のまま消しゴムを限界まで高く積み上げるという謎のおふざけを披露していた。
「……これが僕なりの、テトリスだ」
「それただの消しゴムタワーだろ!」
お調子者の氷狼瑠偉も「あはは! 悠馬天才!」と大笑いしている。
何も知らないくせに、と遼太は思った。このプレッシャーも、終わりのない焦りも、こいつらは何も知らないくせに。だけど、その歪でバラバラな笑い声が、不思議と耳に心地よかった。
【第3章:積み上がるエラー(誰か助けて)】
ついに定期テスト当日。過度なプレッシャーから、遼太は凡ミスを連発してしまう。
(クソッ、噛み合わない。頭が回らない……!)
脳内で警告音が鳴り響く。1つのミスが次のミスを呼び、綺麗だったはずの盤面が一瞬でゴミの山へと変わっていく。どうしてこんな目に。私は終わってる。
テスト終了のチャイムが鳴った瞬間、遼太は自分の席から動けなくなっていた。
「遼太……」
声をかけた渉もまた、真っ青な顔をしていた。完璧でいられなかった。周囲の期待という名のブロックを、綺麗に消し去ることができなかった。
「続けてごめん、でもね、誰か助けて――」
そんな弱音が口から溢れそうになった時、ガタッと教室の机が激しく鳴った。
【第4章:僕らの歪なテトリス(埋まらない隙間を)】
「よっしゃーー! テスト終わったーー! 全員爆死だあああ!」
蹴介が教室の真ん中で、信じられないほど明るく叫んだ。
「俺なんて数学の点数、一桁だぜ! 笑え!」
秀も「俺も英語白紙!」と胸を張る。
「……ちなみに私は、マークシートを全部綺麗に階段状に塗ったら0点だった。芸術点すら貰えなかった」
悠馬が真顔でとんでもない報告をする。
その瞬間、お調子者の瑠偉の目が鋭く変わった(完全覚醒)。
「遼太、渉。何カッコつけて一人で全部綺麗に消そうとしてんの? そんなの無理に決まってんじゃん。俺たち、全員形がバラバラの、欠陥品みたいなブロックなんだからさ」
瑠偉の言葉に、遼太と渉はハッと目を見開いた。
綺麗に揃っていなくていい。歪な形のままでいい。
「しょうがねぇな。お前らの空いた隙間は、俺たちの『笑い』で埋めてやるよ」
蹴介が二人の肩を強く組み、大笑いした。
完璧じゃなくていい。隙間だらけのままで、お互いを補い合いながら、ドタバタと生き抜いていけばいい。それが、僕ら1年A組のテトリスだ。
「……お前ら、本当にバカだな」
遼太がぶっきらぼうに、しかし、この日一番の本当の笑顔を浮かべた。
「全くだ。明日からの追試、付き合ってもらうからな」
渉がいつもの冷たい口調で言うと、4人は「えーー!」と大ブーイング。
夕暮れの教室。完璧なブロックにはなれなかった6人の、歪で、最高に温かい笑い声がいつまでも響いていた。
(完)
コメント
2件
( ̄^ ̄゜) なんか泣いてる(;_;)……
このエピソード、すごく沁みました……。「完璧なブロック」でいなきゃって縛られてた遼太くんと渉くんが、「俺たちは歪なままでいい」って言われて、初めて本当に笑えるようになるラスト、本当に良かったです。僕ら1年A組のテトリス、って言葉が胸に残りました。追試もみんなで騒ぎながら乗り越えていきそうで、続きが読みたくなりますね。素敵な作品をありがとうございました🌷