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朝、洗面所の鏡の前で髪を二つに結び前髪とヘアピンの位置の最終確認を終え今日も学校へ向かう
「…よし」
私の名前は阿野根 里奈(アノネ リナ)
高校三年生18歳、普通の女子高生だ。
毎日ご飯を食べて学校へ行って勉強して、友達と遊……
…まぁそこはいいとして。
学校から帰ったら家で自撮りしたりゲームしたり動画垂れ流して適当に過ごして寝る。あとは時々一人でカラオケ行ったりゲーセンでプリ撮ったり…
そんな感じの割と普通の人生を送っている。
-が、私の人生には1つどう考えても普通ではない点がある。
ドアを開けた、そのすぐ目の前。
すっかり春の抜け切った春の爽やかな空気と共に共に当たり前のように視界に入ってきた。
跪く事もなく直立で婚姻届と指環を差し出す男が。
「おはよう、里奈」
「今日は昨日より14分28秒起床が遅かったな」
番賀賢生。(バンガコウセイ)
長い黒髪を後ろでひとつに結んだこの顰めっ面の怖い顔の男は当然のように私に言う。ちなみにこの表情はデフォルトらしい。
「なんでそんなん測ってんの、しかも秒単位で、馬鹿じゃないの」
番賀はキョトンとしてから当たり前のように言った
「?馬鹿はお前だ。お前は生活習慣が不規則だからな、婚約者として記録している」
そう言って番賀は12本の赤い薔薇の花束を某動物の森ゲームのようにポケットから取り出し私に差し出した。
どういう物理法則なのかは永遠の謎である、以前本人に聞いた所馬鹿には理解できない理屈らしい。
「里奈、12本の薔薇の意味を知っているか?タズンローズと言って1本ずつに特別な誓いの意味が…」
「お母さーん、番賀くんまた花持ってきたー」
台所にいる母に向かって叫ぶ
「はーい」
台所の方から呑気な声が聞こえる
「あのさぁ、毎朝毎朝こんな花束持って来られても花瓶も置き場ももう無いんだけど」
「それは問題ない。花瓶が足りなくなったら俺がいくらでも買ってやるしお前と同棲予定の家は既に購入済みだ。広い家だから置き場に困る事はまず無い。庭には大きな花壇もあるから毎朝こうして花束を渡さずともお前にプロポーズできる」
「は?」
「お前が素直になって俺と結婚してさえくれれば全て解決するのだが。ヤレヤレ」
そこへ母が花瓶を持ってやって来た
「はいはい、花瓶」
母は番賀を見るとニコニコと笑った。
「あら賢生くん、おはよう」
「おはようございますお義母さん、今日もお綺麗ですね、里奈はお母さん似だな」
「も〜賢生くんったらまたまた〜」
「お義母さんじゃないから!」
そう言って笑う母に花束を渡す
「そうねぇ〜」
「毎朝毎朝、素敵な花束をありがとうね」
「いえ。当然の事です」
「ここまで尽くしてくれる人なんてなかなかいないのよ?賢生くん素敵な人じゃない!頭も良いししっかりしてるし」
「里奈も嫌いじゃないんでしょ?」
「ちょ、お母さんまで…ってあ!お母さんそのネックレスまた番賀くんから貰ったでしょ!買収されないでよ」
「買収?違うな里奈、お前の家族との関係を良好に保つ事は将来的に俺の資産になる。これは投資だ」
「里奈、お母さんは買収された訳じゃないのよ、番賀くんいい人じゃない、結婚しちゃえばいいのに〜」
番賀が満足そうに頷いた
「ほら。」
「ほらじゃない。」
「お義母さんもこう言っている、後はお前が素直になるだけだ」
「だからお義母さんじゃないってば!そもそも私番賀くんの事も別に好きじゃないから!」
「時間の問題だな、こちらにはお前が俺を好きだという根拠がある」
「根拠?あるなら言ってみなよ」
「いいだろう、根拠その1、俺がお前に一目惚れした。この俺に限って軽い理由で一目惚れなんて有り得ない。これは運命だ」
「根拠になってない!」
「まだあるぞ、根拠その2、お前は毎朝つべこべ言いつつも俺の花束を受け取って大切に花瓶に飾っている」
私達が言い争ってる間後ろでは母は玄関に花瓶を飾っていた
「それは捨てるの勿体ないから!」
「その3、お前は俺への好意を否定する際最初に別にが付くのと○○だから、○○だけだし、など語尾を伸ばす癖がある、これは論理の補強に見せかけた感情の隠蔽でありツンデレの挙動だ」
「べ、別に…あ、いや…ツンデレとかじゃないから…!」
「その4、俺を本気で強く拒絶、無視したことが無い」
「……」
「ほら。やはりお前は俺の事が好きだ」
「里奈ー!」
タイミング良く母が玄関から声をかけてくる。
「お花はお母さんがやっておくから学校行ってらっしゃい」
「あ、はーい」
「行くぞ里奈、俺は成績がいいからいいがお前は遅刻したらまずいだろう」
生徒会長が遅刻する方がまずいとは思うが…
「誰のせいで時間使ってると思ってんの」
「誰のせいか?変な意地を張って俺への好意を認めないお前のせいだが」
「はぁ…」
「だが安心しろ、俺はそこも含めてお前が好きだ、恥ずかしがり屋で素直じゃないところも可愛い、手を繋ごう、恋人繋ぎで」
今に気付いたことでは無いがこの男には本当に何を言っても無駄なようだ…
そして学校へ向かう道
私と番賀は手こそ繋いでいないものの、結局並んで歩いていた
…正確には150cm前後の私がどんなに早く歩いても180cmを超えるこの男の方が圧倒的に歩幅がデカいし
「そんなに急がなくても始業時間までに十分余裕はある、早く学校に着きたいなら俺が抱っこして運んだ方が効率的だ、おいで」
「あ、私ちょっとコンビニのATM寄るから先行ってて」
「ATM?PayPayか?俺が送ってやる、いくらだ」
その他数えればキリが無いほど彼を回避する方法を考え実行してはみたが彼は何があっても絶対に私から離れなかった
「ところで里奈、昨日の課題は終わらせたか?」
「…」
「終わらせていないな、お前は頭が悪いから言い訳も嘘も咄嗟に出す事ができない、だがそんなだらしなくて馬鹿な所も含めて愛している、ここまでお前の全てを強く愛せるのはこの世界のどこを探しても俺しか居ない、結婚しよう」
「しないから」
「相変わらず素直じゃないな、そういう所も愛している」
「宿題は放課後教えてやりたい所だが…今日は生憎どうしても外せない生徒会業務がある」
「生徒会業務?どれくらい?」
「今どれくらい?と聞いたな」
「聞いたけど」
「俺を待つ事を前提としていないと出てこない発言だ、やはりお前俺の事が好きじゃないか!」
「ち、違う…!」
「何も違わない。俺は間違わない。俺は常に正しい」
「その自信はどっから来てるの!?」
「実績だ、俺は今まで18年間生きてきて自分が正しいと判断した事が間違っていた記憶が無い、だから今回も正しい」
「それに気付いているか、顔が真っ赤だぞ」
「…え」
頬を触った、熱い
スマホカバーに付けている鏡を見た、確かに血色がいい
「これは…あれじゃん!怒ってるから…」
「可愛い」
「…ふん」
私は顔をそむけ歩く速度を上げた
番賀はすぐに私の隣に並ぶ
「里奈」
「何」
「今日も足が太いな」
「は?」
「その太い足もムチムチした腕もカーディガンを腰に巻いて隠してるぷにぷにしてるであろう腹も全て俺の好みど真ん中だ、お前の体は生まれながらにして俺の遺伝子を受け入れるために最適化されている、運命とは素晴らしいな」
通学路のど真ん中で生徒会長が女子生徒の太ももをガン見しながら爆弾ドセクハラ発言を連発していた
「だから早く結婚しよう」
しかし当の本人にはその自覚がない、生徒会長として体育館で大勢の前で話をする時と全く変わらない顔で語っている
「あんまジロジロ見ないでくれる?そういうセクハラもキモいからやめてよね」
「事実を事実として述べる事の何が悪い?ちなみにニーハイを履くのはやめろ、その絶対領域が視界に入るたびに俺がどんな気持ちになるか考えたことあるか?ないか、馬鹿だもんな」
殴ってやろうかと思った
がこの男には悪意がない、だから余計にタチが悪い
同校の女子生徒達がこちらを見てキャーキャー言っている
「何あの距離感…!」
「結婚とか言ってる…!」
会話の内容はあまり聞こえていないのだろう、そして噂は更に広まるのだろう…
「明日も花束を持っていくから早く起きろ」
「だから毎朝毎朝持ってこなくていいから、花瓶の置き場もうないし」
「では放課後一緒に花瓶を買いに行こう。生徒会業務があるが待ってくれるのだろう?」
「そういう事じゃないから」
「場所が無いか?俺達の家がある」
「もっとそういう事じゃない!」
「まぁ全て俺と結婚すれば解決する、結婚しよう」
「だから結婚しないってば!」
朝の通学路に私の声が響いた
その隣で番賀は相変わらずの顰めっ面でありながらもご機嫌で私の隣を歩いている
今日もまた私の普通ではない1日が始まった
#オリジナル
Lily
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羽海汐遠
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コメント
1件
あ〜これめっちゃいいやつだわ!おはようからプロポーズって朝から重すぎるだろ番賀くん🤣 でも「根拠その3」でツンデレの挙動を論理的に言い当てるの笑った。里奈の「べ、別に…」からのバレバレな否定が尊すぎる。お母さん完全に買収されてて草。王道ラブコメの一発目としては完璧な掴みだと思うわ、続き読みたい🔥