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【推しの子】

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【推しの子】

3 - 「漫画原作ドラマ」

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2023年07月23日

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「うちの妹が芸能科受けて、心配だからここ受けただけ。」

「はぁ!?」

「うちの兄シスコンなのー」

「きんも!!」

「、私この人昔から好きじゃないのよねー、」

「でも受かったら後輩になるんだぞ。」

「んー、そっかぁ……」

「聞こえてんぞ……」

「あーあー、仕方ないなー。仲良くしましょーロリ先輩」

「っ、イビるぞマジで!!」

「じゃ、俺監督の所寄るから。」

「あ、うん。じゃあ。」

「あ、ちょっと!!」


ー〜

「ねぇ、ねぇって!どこ行くの?監督って誰のこと?」

「、ねぇ!今どの辺に住んでるの?聞いてる?」

「ねぇってば!!あんたどこ中!?」

「ヤンキー女子?」


「いつまでついてくるんだよ、」

「私の疑問に全部答えるまで!……まだ役者やってるんだよね?」

「…いや、もうやってない」

「え…そ、そう、なんだ……」

「そういうわけだから。」

「えっ!?ちょっと話しようよ!、ねぇ、これからカラオケとか行かない?」

「行かねぇよ、」

「え、じゃあ…私の家とか?」

「距離の詰め方ヤバくない?」

「仕方ないでしょ!?私、これでも芸能人なんだから!『ちょっと喫茶店で話でも』って訳には行かないの!……個室ある店、この時間まだ空いてないし、」

「…あぁ、そういう……。、だったら、」


ーー〜〜

「おぉ、有馬かな!見ない内にデカくなったなーおい」

「ゔっ……し、仕事は…してますよ、っそりゃ子役時代に比べたら…アレですけど…っ」

「まぁ、ゆっくりしてけよ」


「へぇ〜、ねぇアクア、役者やってないなら、なんで監督の所出入りしてるの?本当は演技教わってるんじゃないの〜?」

「まぁ、一通りは仕込まれたけど……今は裏方志望で監督の助手やってる感じ。」

「…そうなんだ、……でも嬉しい、まだこの業界に居たんだね、」

「………」




「おかわりいるかい!?」

「あ、大丈夫です!糖質抜いてるんで!」

「食わなきゃ大きくならんよ〜?あんた食べな」

「えぇ、……ったく、」

「でもショックだなー、…監督、親元で寄生虫してたんだ……」

「…お前、相変わらず大人に対する敬意のねぇガキだな……」

「っははは!でもいいなぁ、うちは両親が田舎に引っ込んで、私ひとりで寮ぐらしだから…ご飯もいつもウーバー頼りだし、」

「ほーお?じゃあ金かかるだろ。」

「っははは☆大丈夫☆貯金だけは子役時代の稼ぎで、死ぬほどあるから〜☆☆」

「くっそ憎たらしいな……」

「ねぇ監督!アクアの演技やってる映像とかないの〜?」

「あー、あるにはあるけど…「見せんな」

「あれは気の迷いで黒歴史。自分に才能があると勘違いして、酷い目見た作品だ。」

「___だ、そうだ。見たいなら、こいつ口説いて芝居やらせる事だ。」

「へぇ?そうくる?」

「やんねぇよ、」

「今ね、私がヒロインやってる作品あるんだけど〜、まだ役者決まってない役あるんだ〜!」

「偉い人に掛け合ってみようか〜?」

「…やらん。」

「え”ぇ”っ!?……むぅ、、」

「それ、なんて作品?」

「『今日は甘口で』っていう少女漫画が原作のドラマ。」

「へぇ〜、」

「…『今日あま』」

「うん!知ってる?」

「…いや、演出齧ってる人間で知らねぇ奴モグリだろ。ド名作じゃねぇか。」

「!!興味ある?」

「だから、俺はもう演技はやらないって言ってるだろ「掛け合ってみたら、案外スルッと決まっちゃうかもよ〜?」

「Pの鏑木さんには可愛がられてるから!私!」

「…鏑木、」

「?」

「…フルネームは、『鏑木勝也』?」

「そうだけど…」



アイの遺した携帯電話は、3台ある。

そのうち、仕事用とプライベート用の2台には、メンバーや事務所社員のログしか残ってなかった。

アイは抜けているようで、想像以上に用心深く、本気で俺達の秘密を守ろうとしていたのが分かった。

本題は、もう1台の携帯。これはアイが妊娠以前に使っていたものだ。何世代も前の形で、バッテリーの代わりになるものを探すのには骨が折れたが、パスワード突破の手間に比べたら、比較にならなかった。

間違えると30秒間操作できなくなり、何桁のパスワードかも分からない。

100通り試すのに、半日かかった。

1000通り試すのに、1ヶ月。

毎日、毎日、毎日…

45510通り目。

このパスワードにたどり着くまで、4年の月日がかかった。

その携帯には、10数名の芸能関係者のメアドや電話番号が残っていて、その中の一人が……


「…鏑木勝也……」

「ねぇやろうよ!キャストも同年代ばっかだし、相手の男の子も、女の子みたいな顔しててさー!可愛いんだよ?「やる」

「え?」

「プロデューサーに連絡してくれ。」

「なんで急にやる気に………」

「…やってやろうじゃねえか、」

「…ふふ、アクアの演技、楽しみ!…あぁ、ただ、多少問題のある現場だから、覚悟はしててね?」





ーー〜〜

「えっ!?アクアドラマ出るの!?」

「なんで言うんだよ、」

「だってあなた自分からは言わないでしょー?」

「所属タレントの広報活動は事務所の仕事よ。」

「……」

「…ママ、言ってたもんね、私は将来アイドルで、アクアは将来役者さんかなーって、…あの言葉、忘れてなかったんだね、」

「……」

そんなんじゃない、アイと生前交流があったプロデューサーと接触し、毛根のひとつでも回収出来ればそれでいい。

アイの願いを叶えるためとか、役者への憧れとか、そんな高尚な考えは持っていない。

「なんて作品に出るの?」

「『今日は甘口で』っていう作品。少女漫画原作ね。」

「あ!知ってる!『今日あま』!アクアの部屋にあるやつ〜!あれ面白かった!」

「勝手に読むな。」

「最近できたネットテレビ局制作のドラマで、全六話中3話放送済み。メインの役者も新人が多いし、規模としては少し小さめの作品ね。アクアの出番は、最終話に出てくる悪役みたいよ?」

「向いてるじゃん!悪い顔してるし〜!」

「うるせえな」

「ネット局のドラマだから、今見れるわよ?」

「見る見る〜っ!」


『人間は嫌い、だってみんな、自分のことしか考えてないから…』


「お、ロリ先輩!」


『オマエサ、ソンナカオシテテ、タノシイノ?』

『なんの用?』

『ベツニ?タダネコヲオイカケテキタラ、オマエガイタカラ』

『なにそれ、w』

『ナンダ、ワラエバカワイージャン』

『な、なによ。からかわないで、』

『スナオニナレヨ』

『オイ、オマエ!オレノオンナニテヲダスナ!』

『ハッ?ナンダテメエ!』

『おねがい!2人ともやめて!』

『喧嘩はやめてーっ!』


ぱたん。

「…今日あまって、こんな作品だったっけ!?」

「概ねこんな感じじゃなかったかしら…」

「演出とかはしっかりしてるから見れないことは無いけど…なんか原作に居ないオリキャラが活躍してるし……」

「できるだけ多くの役者を使いたい、制作側の事情ね…」

「あ」

「展開もさー、こんなんじゃなかったよね!?」

「原作14巻分を半クールで収めるとなると、どうしても物語をカットする部分を出てくるのよ、」

「役者の演技も……」

「演技未経験の子が多いみたいね……」

「…なんて言うか酷いね!?「ストレートに言い過ぎよ」

「ていうかロリ先輩ってさ、もっと演技上手くなかった?」

「……」



ーー〜〜

「うっさいわねぇ!?そんなこと言ってたの!?死ねよあいつ〜!!!」

「相変わらず口悪いなお前、」

「名誉のために言わせてもらうけどね!私ほど演技できる高校生中々居ないから!」

「じゃあどうして今回あんななんだよ」

「…今回のドラマは、これから売りたいモデルをとにかくいっぱい出して、イケメン好きの女性層にとにかくリーチする企画なのよ。演技力は二の次。だけどそれじゃあ作品が破綻する。だからこそ、演技が売りの私をヒロインに起用してるってわけ。」

「それにしては、お前の演技ぬるくね?」

「抑えてるに決まってるでしょ!?周りの役者は揃いも揃って大根役者ばっかり!!……メインキャストの中でまともに演技できるの私だけなのよ!?こん中で私がバリバリやってみなさい!他の役者の大根ぶりが浮きぼりになっちゃってぶり大根でしょ!?」

「ぶり大根?」

「私だって全力で演技したいわよ、誰が楽しくてわざわざ下手な演技をするっていうの?…でも、上手い演技といい作品作りは別、

確かにこの作品は、企画からして売り手の都合が前に出すぎてる。作品として面白くなりようがないわ。

1話の撮影で原作者の先生が現場に来た時、…あの失望した顔はキツかったわ、、でも、役者や裏方さん、個人個人は精一杯やってて、見てくれる人や原作ファンのために、少しでもいい作品にしたい。せめて見れる作品にする。そのためなら、下手くそな演技もする。」

「…自分の役者としての評価を下げてもか?」

「役者に大事なのって、コミュ力よ」

「!」

「昔の私は、自分の演技をひけらかして…確かに売れてたけど、他人を蔑ろにしてた。だから旬が過ぎればあっという間に仕事は無くなった…私より演技が上手い子供は居て、それでも私を使う意味……それが大事なんだって気付いた。」

「さしずめ今の私は、『我を通さず、作品の品質貢献に務める、使いやすい役者』。鏑木Pも付き合いが長くてねー、今回も、私がその辺弁えてるから、起用してくれたんだよ。」

「…いつの間にか協調性なんか持つようになっちゃって。、」

「ふふーん、私大人だから!まぁモデル共と張っても負けない顔の良さもあるだろうけど!」

「役者って自信家しか居ねぇよな」

「というわけで!撮影は明日!!来週オンエアだから!!撮影後、即編集即納品!!本読みすっ飛ばして、即リハ即撮影だからよろ!!!」

「スケジュールも終わってんな……」

「あんたの役の子がゴネて降りてリスケになって大変だったの!あんまり美味しい役じゃないから、…だからこそ、あんたをねじ込めたんだけど。」

「…コネで役とって本読みも飛ばし、またこのパターンか。…ガキの頃同じことした俺に散々言ってくれたよな。」

「懐かしいわねぇ、今度は私がやる側になるとはね〜☆汚い大人になってしまったものよ〜☆あははははは☆」

「笑ってんじゃねぇよ」

「……でも、今なら監督の気持ちも分かる。……アクアを誘った理由は、もう分かってくれたわよね。誰にボロクソ言われようとも、大根と言われてもいい。…お願い。私と一緒に、いい作品を作って。…、あんたとなら、出来ると思うの。」




〜〜ーー

ダメな企画に演技の出来ない役者陣。…だけど、話を聞いてから改めて見ると、脚本と演出は役者に合わせているのが分かる。

ダメな演技でも、見れる作品にするテクが、そこらで使われていることに気付く。

裏方は優秀。そして、ヒロインはバリバリの実力派。……

「なんかやりようはありそうだな…?」








ーー〜〜

「ドラマってのは、部屋の中で主演級が本読みやリハーサルをして、それを元に、監督やDがコンテを切る。撮影現場で、ドライやカメリハ、ランスルーをしてからってのが一般的だけど、このロケ地は1日しか確保出来なかったらしいから、ドライからランスルーは全部一纏めでリハーサル扱い。練習は1回きりよ。」

「雑だなぁ、うちの監督でももうちょい丁寧だぞ。」

「予算も時間もないのよ…」

「ようかなちゃん」

「「?」」

「今日雨ヤバない?撮影延期にして欲しかったわ〜、」

「ちょっと雨漏りしてる所あるみたいだけど、平気よ。」

「湿気あるとさー、髪広がるんだよね〜。なんかココジメジメしてて不快だし。」

「あはははははは、紹介するね。こっちの人は、今日のストーカー役の……」

「アクアです。よろしくお願__「よろー。」

「……態度悪くね?名前も聞けてないんだけど。」

「主演の鳴嶋メルトよ。まぁ、向こうも若いから、トントン拍子に売れてる子には良くあること……って言ってて自分にダメージが来るわね、

…某アイドル事務所とかは教育かなりしっかりしてるから、礼儀正しいし、現場の好感度も高くて外れがなかったりする。たくさん使われるには、それなりの理由があるのよね。…あ、というわけで、挨拶は大事な仕事!」

「んお、」

「ほら!」

「…初めまして。苺プロ所属のアクアと申します。本日はよろしくお願いします。」

「…あぁ、よろしくね。」

……『鏑木勝也』。星野アイと何らかの関係があった男。俺とルビーの血縁上の父親で、アイの死に関わったかもしれない男。

……隙を見て、DNA鑑定に回せるものを回収しないとな。

「…今の人が、この現場の責任者。あの人の意見が、監督やDを通して現場に伝わる……モデル事務所との繋がりが強い人で、今回のキャスティングはほとんど彼の仕事。とにかく顔面至上主義の人でね。アクアを使って貰えたのもその辺よ。」

「リハ始めまーす!!」

「…行くわよ。台本は頭に叩き込んでるわよね?」

「……ん。」

……俺の役は、ヒロインに付きまとうストーカーの役。

…なんの因果だろうな。、アイを殺したストーカーを、俺が演じることになるんだから。


「よーい!はいっ!」




「いったん止めまーす!!」


「普通に演技、出来てるじゃん。何が裏方志望よ。」

「…こんなの練習すれば誰にでもできる。他人の邪魔をしない程度に下手なだけで、俺自身になんの魅力もない。、」

あの日、有馬かなが見た俺の演技は、あくまで年齢と中身のギャップが引き起こした異質感だ。精神年齢に肉体が追いついた今となっては、俺はどこにでもいるただの役者……

「なんか凄い演技を求めてたなら、悪いな。」

「そんなこと……まぁちっとも期待してなかったと言ったら嘘になるけど、十分。…アクアの演技、ずっと努力してきた人の演技って感じで、私は好き。細かいテクが親切で丁寧って言うか、自分のエゴを殺して物語に寄り添ってるって言うか、…もしかしてそれは、普通の人には分からなくて、長く役者やってる私達以外には、どうでもいいことかもしれないけど……」

「変に気を使うなよ。」

「使うわよ!一応これでも座長だし!…主演級の仕事なんて、私にとっては10年ぶりの大仕事だから!そりゃ頑張るし!!」

「確かに最近見ないし、『まだ役者続けてたのか』って思っけど。」

「ゔっ……。、闇の時代はだいぶ長かったわ。

ずっと仕事が貰えず、ネットでは終わった人扱いされて…けど稽古だけはずっと続けて、なんのために努力してるのか分からなくて、何度も『引退』って言葉が頭を過ぎって……。

だけど!こうやって、『実力が評価』される時期が来たのよ!本当に、続けてきて良かったって思った!…だからね、別にあんたがめちゃくちゃ凄い演技しなくたって、この仕事を続けてるって分かっただけで、私嬉しかった。

こんな、前も後ろも真っ暗な世界で、一緒にもがいてたやつがいたんだって分かって、…それだけで十分。」

「……」


ーーーー

「撮りの再開まだ?メルト、この後雑誌の撮影入ってるんだけど…」

「もうすぐです。キャスト陣は、有馬さんが宥めてくれてるので。」

「……かなちゃんねぇ、『使い勝手楽で』いいよね。誰にでも『いい感じに尻尾振ってくれる』から、『雑に据えとくには丁度いい』。有馬かなっていう名前は、一応『世間に浸透してる』し…事務所抜けてフリーになって、『ギャラもタダ同然でネームバリュー使える』んだから、得したよ。」

「……まぁ、演技にうるさいのだけは面倒だけどなぁ、…このドラマはあくまで宣材。演技力なんて求められて無いのに。そこだけは分かってないみたいだけど。」


「……」

_____『こうやって、「実力が評価」される時期が来たのよ!』

「……評価なんてされてねぇじゃん、世の中そんなもんだぞ、有馬かな。適切な評価なんて、与えられる方が稀だ。」


……採取も終わったし、目的は果たした。……けど。

「撮影再開しまーす!!!」




___せっかくだから、

「めちゃくちゃやって帰るか。」































「本当、お人好しだよねぇ……まぁ、『いつも通り』に進んでくれることはありがたいけど。」

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