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彼女にフラれて、かなり経った。

最初の方こそ落ち込んでいたけれど、今はもうすっかり立ち直った___ように見せかけている。

本音を言うと未練タラタラ。まだ彼女のことが好きだ。

あの時、彼女の事を追いかけていれば、また何か違ったのかもしれない。

でも、彼女の口から「嫌い」とか、「他の男が好きになった」とか、そんな言葉を聞いたら壊れてしまいそうだったから。追いかけられなかった。

弱い自分にイライラする。後悔してもしきれない。

けれど、そんな俺にも好機がやってきた。

春高予選一試合目。観客に礼をしていると、彼女の姿を見つけた。

髪を切っていたから一瞬そっくりさんかと思ったけど、鞄に付けてる御守りは正月に一緒に買ったものだから、やっぱり彼女だ。


“会わなきゃ”


気まずいとか、そんな事よりも先に。ただ、ただ彼女に会って話さなければという執念に近い思いで監督の元へと走る。

監督に許可をとって急いで会場から出て出入口付近の影に隠れて待つ。

きっと、彼女は俺に会いたくないから…絶対逃げるから。出ようとしたとこを捕まえるという作戦だ。


数分経ち、彼女は辺りをキョロキョロと見渡しながら階段を降りてきた。

そして玄関一直線に走り出した__彼女の手首を掴む。

驚いて振り向く彼女。目がまた合う。

瞳を大きく瞬かせる。

「と、おる…」

久しぶりに聞く、透き通ったような綺麗な声。

俺は、感極まって溢れ出そうな涙を必死に堪え、ニコッと笑みを浮かべた。

「久しぶり!髪切った?似合ってる」

そう言うと、彼女はお手上げだ、という風に笑った。






外のベンチに2人並んで座って、他愛もない話をする。

隣でふふっと楽しそうに笑う彼女に、懐かしさを覚えた。

俺の視線に気が付いた彼女が

「?何か付いてる??」

と、頬に手を添える。

俺はううん、と答えながら彼女の短くなった髪に指を通す。

「はっ?」

と、顔を真っ赤にしている彼女を無視して、

「…髪、なんで切ったの??」

と、聞く。

彼女は大きく瞳を見開いたあと、俺からすっと目を逸らして、小さく、

「………きぶん。」

と、零した。

やっぱ、嘘下手くそだなぁとしみじみしながら反論する。

「違うでしょ?どうせ、俺を忘れる為とか言うんでしょ」

俺の言葉にピクリと反応する。本当、わかりやすい。


付き合い始めた頃、どんな髪型が好きなの?と聞かれた事があった。

俺は別に、好きな子ならどんな髪型でも良いよ〜と答えたけど、納得のいかなそうな顔をされたので、パッと思い浮かんだ、ロングと答えた。

その日から、髪を伸ばすと言って頑なに切ろうとしなかった_。


彼女は先程から黙りこくってしまい、妙にソワソワしている。

そして、腕時計をちらりと見やると、急に、

「…ごめんね」

と、謝ってきた。

髪を切った事に謝っているのだろうか?それなら謝るのは俺の方だ。俺の方こそ、と嘘を吐いたことを謝ろうとした時、彼女はばっと立ち上がった。

「ごめん、、ばいばい」

そう言うが早いか、全速力で走り去っていった。

俺はあとにも試合を控えている。でも追いかけずにはいられなかった。

追いかけようと俺も立ち上がったその瞬間、ガッと腕を掴まれた。

振り払おうとも振り払えない。凄い力だ。

誰だ?と振り向くとそこには岩ちゃんが立っていて。

「おい、早くしろ。もうすぐ試合始まんぞ」

仏頂面で言われる。それどころじゃないと言おうとしたけれど、言葉が出なかった。

最後の春高。勝たなければならない。

3年はみんなそう思ってるはず。

1年も、2年も勝ちたいだろう。

なのに、俺の私情で試合を放棄したら、皆に迷惑をかけてしまう。そう思ったのだ。

だから俺は大人しく岩ちゃんに従った。




𝕟𝕖𝕩𝕥➯➱➩150♡

忘れたいのに忘れられない元カレの話。

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