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アスファルトに映った自分の影を見つめながら先程の自分の行動を思い返す。

いきなり走り出す私と、驚いて固まっていた徹。

もしかしたら、追いかけてくれるかもと思っていたのだけれどそんな事は全然無くて…。

そりゃそうかと自嘲する。

元カノの事を追いかける元カレがどこにいるんだ。しかもフッた張本人を追いかけようなんて…少なくとも私はやらない。

でも、哀しかった。

本当にもう好かれてないんだ、愛されてないんだ。そんな現実が嫌で、早く病院に行こうと歩くスピードを早める。

いつもなら嫌な定期検診も今日は早く行きたかった。

本当は走っちゃいけないけど、走って病院へと向かった。






「もう。また走ったの?」

ゼェゼェと息が切れている私に呆れたように問いかける看護師の鈴木さん。

「えへへ…ごめんなさい」

私がへらへらと謝ると彼女は次はやらないでね、と注意した。

「…」

私が暗い顔をしているのに気付いたのか、鈴木さんはなにか言いたそうな顔をしていた。

「あのさ、これは貴方が言いたくないなら言わなくても良いんだけど…」

という風に切り出した鈴木さんに耳を傾ける。

「何かあったの?」

資料を片付けながらそう問いかけてくる鈴木さん。

「ちょっと……元カレと色々ありまして、」

私が気まずそうに答えると

「元カレって、アレが発覚したからフッたって言ってたあの?」

と聞かれた。

「まあ…はい。」

「具体的に教えてよ〜」

グイグイとくる鈴木さんに苦笑いしながらも、隠すことでもないかと思い先程の事を話した。

「ふむふむ」

と何か考え込む鈴木さん。

「これさ……絶対まだ彼は貴方のこと好きよ?それに、貴方もまだ好きでしょう?」

自分の気持ちを言い当てられてしまったことに驚きを感じつつ、鈴木さんの最初に言った言葉に動揺を隠しきれなかった。

「追いかけてこなかったのは9割方、あの後にも試合が控えてるからでしょうね。それでも彼は追いかけようとしていたかもしれないけれどチームメイトか誰かに阻止された…そんなとこじゃない?」

確かに、と鈴木さんの言葉に納得する。

けれど、

「か、彼が私のことがまだ好きなわけないじゃないですか…!だって、、もしそうなら…捕まえられて外のベンチまで連れてこられた時、手繋がれなきゃ…そんなおかしいでしょ、」

動揺しすぎて自分でも何を言っているのかわからない。

…私は、ある1つの可能性を思い浮かべていた。

手を繋がなかったのは、元カノだから…私がフッたから、せめてもの気遣いなのかもしれない。

彼は変なとこで気が利くから…。恐らくそうだろう。

考え込む私を他所に、本を読み始める鈴木さん。

「とにかく、」

鈴木さんが本をパタンと閉じ、くるりと振り向いた。

「彼の気持ちは何にせよ、自分の気持ちにくらい正直になればいいんじゃないの〜?」

もし、それができるならしたい。でもできないから思い悩んでいるのだ。

あの事を知ったらきっと、彼は取り乱す。大会もあるのに、十分に集中出来ないかもしれない。それだけは避けたかった。

だから…離れたのに………。

私が苦い顔をしていると鈴木さんはふーっと息を吐いて、ポンっと私の頭に手を乗せた。




家に帰ってからも、鈴木さんの言葉が頭の中を支配する。

『彼の気持ちは何にせよ、自分の気持ちにくらい正直になればいいんじゃないの〜?』

「自分の気持ちに…正直に……」

鈴木さんの言葉を反復しながらメッセージアプリを開く。まだ徹の連絡先は残っていた。

『試合お疲れ様』とまで打って消す。それの繰り返し。

送る勇気が出なかった。

自分の気持ちだけでも伝えたい。でもそれは春高が終わってからだ。

…でも、少しだけなら……連絡してもいいよね、

『試合、お疲れ様…と言っても1試合目しか見てないけど(笑)徹たちの春高が終わったら、話したいことがあるの。春高が終わったら連絡ください。』

送信したのを確認すると、寝っ転がって目を閉じ、眠りについた。



𝕟𝕖𝕩𝕥➯➱➩200♡

忘れたいのに忘れられない元カレの話。

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