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報道陣が騒いでる
「特集を組め!」
「大スクープだ!誘拐された子はW不倫の子!夫婦の騙し合いの終結は?」
「犯人は正義感で誘拐したんだ!」
「なんと!蓋を開けてみれば!事実は小説よりも奇なり!」
「見出しはこうだ!有名ニュースキャスターとママインスタグラマー夫婦!虚栄の裏に隠された真実はドロドロのW不倫の末の落とし子!」
「国中の主婦が飛びつくぞ!」
「部数を増やして刷れ!」
・:.。.・:.。.
「真希ッ!」
突然背後から鋭い声が響き、真希が晴馬ごと男に羽交い絞めにされた
俊太だった
真希が康夫と晴美の裏切りを暴露し、場が混乱に包まれる中、彼は堤防の反対側から音もなく近づき、真希を捕らえたのだ
夕日の逆光に照らされ、俊太と真希のもみ合っているシルエットが黒く浮かぶ
「おお! あれは誰だ!」
警察と報道陣の動揺した声が堤防に響く、カメラが素早くズームする、今や橋の上からも人だかりが出来ている
「誰なんだっっ!」
康夫が叫んで顔を歪ませる、晴美は顔を覆っていた指の間から、ハッと晴馬を抱いたまま羽交い絞めにされる真希を見つめた
晴美の目には恐怖と希望が混じり合い、涙が止まらない
「放してよ! 俊太!」
真希が身をよじり、鋭い声で叫ぶ、だが俊太は腕に力を込め、真希をしっかりと押さえつける
「真希! その子を返せ!」
二人は堤防の上でもみ合い、晴馬が「あ~ん」と小さな泣き声を上げた、夕日の逆光で、康夫や晴美、警察達からは二人の動きがはっきりと見えない、ただ、シルエットが激しく揺れ、緊迫した空気が場を支配する
「晴馬ーーーーーー!」
晴美が泣きながら叫び、地面から立ち上がろうとするが膝が震えて崩れ落ちる、晴美の声は川面にこだまし、絶望と愛が混じった叫びが空気を切り裂く
「いやよ! この子はあたしの子よ!」
「その子は君の子じゃないっ!!」
真希の声は鋭く、まるで全てを拒絶するように響く、真希は晴馬をさらに強く抱きしめ、俊太の腕の中で暴れる、それに構わず俊太は続ける
「15歳の時に・・・中絶して失った君の子じゃない・・・」
ハッと真希の目が見開き、動きが一瞬止まる、二人は一瞬見つめ合う
「どうしてそれをっ・・・」
真紀の声は震え、過去の傷が抉られたような痛みが顔に浮かんだ
夕日の光が俊太と真希の顔を赤く染め、汗と涙が混じる
「みんな知ってるよ、父さんも母さんも、警察から君の事情を知って泣いてたよ、特に母さんは君が可哀想だと・・・今もずっと泣いている・・・」
真希が「放して!」と身をよじるが、俊太は決して離さない
彼の腕は固く、まるで彼女を過去の闇から引き戻そうとするかのようだ
「君は父さんや母さんに優しくしてくれた、親不孝だと思っていた俺は、君が嫁さんだと言って家に来てくれて、初めて両親に親孝行できたと思った、耳の聞こえない弟にも、君はいつも優しくしてくれた、君は今は俺の家族に無くてはならない存在だ!」
俊太の声は熱を帯び、真希の肩を強く掴む
「真希!真希!・・・聞いてくれっ!子供が欲しいなら、ちゃんとした養子縁組をしよう! 何人でもいい! 君が育てたいだけ育てればいい、母さんもそう言ってる、でもその子はダメだ、その子にはちゃんと両親がいる!」
「あたしのことなんか放っておいて!」
「放っておけないよ!君を愛してるんだ!」
真希の声は叫びに変わり、絶望と怒りが混じる
「男なんてみんな同じよ! あたしの体が目当てなんでしょ!」
その瞬間、真希の手が素早く動き、持っていた包丁が夕日に光った
グサッと鈍い音が響き、俊太の腕から真っ赤な鮮血が辺りに飛び散る、鮮烈な赤が堤防の地面に滴り、夕日の光に不気味に輝く
「きゃーーーーーー!」
晴美の叫び声が空を切り裂く
「晴馬! 晴馬ぁーーーーーー!」
「落ち着け! 晴馬じゃない! あの男が切りつけられたんだ!」
康夫が叫び、晴美を抑えようとするが、彼女は震えながら地面に崩れ落ちる、真希は血に濡れた包丁を握り、晴馬を抱いたまま俊太から離れようともがく
俊太は切り付けられた腕を押さえ、痛みに顔を歪めながらも真希を放さない
血が彼のシャツを赤く染め、堤防に滴る