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「あとクリスタ、冒険者ギルド所定の費用算定書式を出しておいて欲しいニャ。あれに今回の補食分については、市場価格を含めて私が書いておくニャ」
「わかりました。それでは、此処に出しておきます」
クリスタさんは、部屋の隅にある机の上に紙とペンを出す。
いいのだろうか、ミーニャさんに査定を任せて。
そう思うのだけれど、クリスタさんが出したのなら大丈夫なのか、また別の意味があるのだろう。
だから何も言わないでおく。
「それでは食べながら、情報公開の時間ニャ。まずはアレについて、もう少し詳しく話しておくのニャ。という事で、まずはクリスタが話すのニャ。足りないところは私が適宜補足するニャ」
キャラクターとしては、ミーニャさんが簡単に話して、足りない部分をクリスタさんが補足する方が正しいと思う。
それが逆なのは、現状ミーニャさんが食べるのに忙しいからだろうか。
限りなくそんな気がするのだが、取り敢えずは指摘しないでおく。
「そうですね。モリオンについては、ある程度話しておいた方がいいでしょう。モリオンが直接的に攻撃してくるという事はないでしょうけれど、モリオンが仕掛けたものに出遭う可能性はありますから」
仕掛けたものか。
今回のアンデッドに汚染された魔素によって魔物を発生させる仕組み。
カンディルーが大量発生した裏にも、そんな仕組みがあったのだろうか。
定着した今は消えていると仮定して。
「まず最初に。モリオンは倒せません。一見ダークエルフに見えますが、実際は先祖返りのハイエルフです。精神生命体に近い存在ですから、肉体を完全に抹消させても死にません。数ヶ月か数年くらいで再生します。そして精神を消去する方法はありません」
ハイエルフか。
前世でも話こそ聞くが、存在しているかは不明な存在だった。
まさか現物が出て来て、しかも敵だとは。
そう思ったところで、煮魚の汁かけおにぎりを食べ終わったミーニャさんが口を開く。
「ただ、向こうも人間と戦おうとすることはない筈ニャ。アレが相手を滅ぼそうとする場合は、対象がよほど悪逆な場合だけなのニャ。それでも普通は魔法で無理矢理改心させるのニャ。むしろクリスタの方が、悪人に容赦しない分危険なのニャ」
クリスタさんが苦笑する。
「ありましたね。グルド要塞に住み着いていた盗賊団討伐の時に。国も始末に困って、結局は独立した開拓団として辺境に出したのでした」
「あれはクリスタが悪いニャ。広域滅殺魔法なんて出そうとしたから、アレが出てきたのニャ。本来はアレが出てくる要素は、まるで無い依頼だったニャ。あと魚と御飯追加なのニャ。御飯はおにぎりでもいいニャ」
「はいはい」
おにぎりと魚料理各種を追加しつつ思う。
今の話を聞いていると、クリスタさん、結構危ない人のような。
むしろミーニャさんやモリオンの方が、まともなように聞こえる。
まあ事案内容の詳細を聞いたら、また話は変わるのかもしれないけれど。
「ですからモリオンが出ても、恐れることはありません。倒す事は出来ませんが、攻撃される事もありませんから」
恐れることはないか。
ただそれは、モリオン個人に対してだろう。
彼が仕掛けた魔物は、危険なものが多いようだから。
「モリオンは、人類が増え広がること、また知識をつけて魔法や技術を発達させることを否定しています。そして魔法や技術の発達、あるいは人口や居住区域の拡大を妨げる為、様々な妨害を行っています。カサクラ坑道に魔物が出現するようにしたのも、ダグアルに魔魚を繁殖させて河川交通を不可能にしたのも、その一環です」
「此処だけではないニャ。南部砂漠の一定以上南の地域にレッドサンドワームが出るようになったのも、ヴェリイズ遺跡の10階層に倒せない魔物が出て、それ以上先に進めなくなったのも、おそらくアレの仕業ニャ。アレ関係は面倒ニャ依頼が多いので、大体は塩漬けになっているのニャ。それと、もう少し魚が欲しいのニャ」
仕方ないから、更に出す。
このペースで食べられると、3日分の副食も底を尽きそうだ。
ついでに、クリスタさんに確認をしておく。
「敵に回しても危険ではないけれど、国や地域が発展するのに邪魔で、かつ修正困難な状況を作っていく上、倒す事が出来ない存在。そう捉えればいいですか」
クリスタさんは頷いた。
「ええ。それで基本的には正しいです。そしてその邪魔、モリオンが作った仕掛けが面倒なのです。魔物が強過ぎたり多過ぎたりで、普通のB級パーティでは攻略しきれない場合が多いですから」
「だからと言って、放っておくわけにもいかないのニャ。ニャので仕方なく、何とか出来そうな冒険者を捕まえて、こうやって解決する事になるニャ。それでも、ここまで何も壊さずに解決できたのは久しぶりニャ。あと魚おかわりなのニャ」
『何も壊さずに解決できたのは久しぶり』か。
つまり、いつもは破壊的方法で解決してきたという事だろうか。
非常に気になるが、俺がまず解決するべきなのはこちらだ。
「在庫切れです。それに、そろそろ食べ過ぎじゃないですか?」
本当はまだもう少し残っているが、それは俺の夕食用だ。
これ以上在庫を減らすわけにはいかない。
特にヒラメの刺身、楽しみにしていたのに3割以下まで減ってしまっている。
「そうですね。そろそろやめておかないと、動けなくなりますよ」
クリスタさんも加勢してくれた。
「依頼は終了したのニャ。だから問題ないのニャ」
「まだ職員として、冒険者ギルドでの後始末が残っています。貸出道具の整備搬送、評価書類の追記等、業務はいくらでもあるはずです。私は私で、報告が多数残っていますので手伝えません。その辺はご存じだと思いますけれど」
「依頼完了は明日予定だったのニャ。ニャら、それまでのんびりと……」
「依頼の早期終了も加点ポイントです。忘れましたか」
「……おなかいっぱいで、そのままばったり眠りたかったけれど、仕方ないニャ」
ミーニャさんは取り皿とフォークを置いて、そしてテーブルの方へ。
先程クリスタさんが出したペンを持ち、猛烈な勢いで書類作成を始めた。
さて、ミーニャさんの方は解決した。
次は、先程気になったところの確認だ。