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ライラ からぴち・シクフォニ♡
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「じゃ、じゃあ俺もいつきくんとか呼ぼかな? フットサルメンバーやったら全員来てくれそうやし」「あ、もう声かけてるのかと思ってた!」
「いや……二人でやるもんやとおもてたから、声かけてなくて」
「あ……そうだったんだ。……なんかごめんね、また余計なこと言っちゃった」
待って待って待って! ゆうた、涙目になってる! 今にもホロッて一粒こぼれそうになってるやん!
「ちゃうねん! ゆうたは悪くないんやで? 俺が勘違いしただけで! マジで!」
「うん、ありがとう」
ゆうたがニコーッと笑ったと同時に、ポロッと一粒、涙が落ちた。あーあ、やってもうた。嫌味っぽく余計なこと言わんかったら良かった。うまく隠せたはずやのに。
「……みんなでワイワイした方が絶対楽しいしな! 俺、バイト始めるし、美味しいもんいっぱい食べよな?」
急いでポッケのハンカチを探したけど見つからん。仕方なく、ふざけて買った戦隊モノのキャラクターがデカデカと印刷されたティッシュを一枚取り出して、ゆうたの頬の涙を拭いた。
「え、これ可愛いじゃん」
「100均で買ってん。ええやろ?」
「うん、今こんなことになってるんだ。めっちゃカッコいい」
俺からティッシュを取り上げて、まじまじと見つめてる。なんかヒーローのキャラクターにテンション上げてる姿、イメージ通りで……可愛いな。
「……やっぱりイエローってカレー好きなのかな?」
「いや、いつの時代?」
全く関係ない話で盛り上がって、さっきの涙はどっかへ行った。これでええねん。これが「友達になれた」って証拠やろ。
ゆうたと別れた直後、スマホが震えた。LINEの通知音。
『誕生日には間に合わないけど、また来月放課後デートしない? めっちゃバイト頑張るから!』
「くっ……そっ」
自分のミスを即座に取り返しに来たやん。また俺のことキュンとさせやがって。待て、落ち着け。冷静に。好きなのは向こうで、俺はゆうたをそういう目で見てないはずや。
ちょっと行動を間違えたら勘違いさせてまう。告白されて断った時、ゆうたがもっと傷つくことになるぞ。あくまでも「友達」として、冷静に返事を……。
『ええよ、俺もバイト頑張る』
いや、違うやん! デートを否定せな! これじゃ「俺も行く=デートする」って受け入れてもうてるやんか! 期待させてもうてるやん!
今からでも何か誤魔化せる文を……と焦ったその時、追い打ちをかけるようにメッセージが届いた。
『しゅうと大好きだよ』
「……は!?」
え、え、え、え、このタイミングで告白!? LINEで!? 誕生日プレゼントのサプライズとかじゃなく!? さっきまで一緒におったのに!?
いや、これは……きっと「俺も頑張る」に対する、軽い返事や。そうや、そうに違いない。
「しゅうとのそういうところが大好きだよ」……の略に違いない。
友達として、やんな? とか聞き返すか? いや、ほっといたら向こうも焦って「友達としてだよ!」とか送ってくるかもしれん。
家まで悶々としながら帰って、「ただいま」って言って、手洗いうがいをして、部屋に戻って、学生服から部屋着に着替えたけど……何の誤魔化しメッセージもあらへん。ずっと俺の返事待ちのままや。
……とりあえず、一晩寝かせるか。そうしたら明日、朝イチで「あれは違うくって、友達としてだよ!?」とか言ってくるに違いない。
♢♢♢
「いや……またサッカーやっとんな」
朝から時間あるたびにサッカー。あいつ、クッション以上のクッションやな。もう「人をダメにするクッション」レベルやわ。
そんなモヤモヤを抱えたまま、気づけば放課後になっていた。
今日はバイトの面接がある。初めてやから、他のことを考える余裕なんてない。
クッション置きまくって友達と笑っているゆうたに見つからんように、駅までダッシュする。
バイト先は、家の近くの中華料理店。いつきくんが働いている姿を見て、料理ができる男ってカッコええな、と思ったから。
♢♢♢
無事にバイトに受かって、必死で頑張っているうちに、ゆうたとの関係も自然と落ち着いていった。ゆうたも俺もバイトで疲れていて、休み時間はほとんど寝ている。喋れても、駅までの帰り道の15分程度。
でも、あのLINEのやりとりだけは、『しゅうと大好きだよ』のままで止まってる。ゆうたの中では、あの日のまま時が止まってるんかもしれん。
そして一ヶ月後。誕生日パーティーの終わり。
卒業式みたいに全員で腕の花道を作って送り出されたかと思えば、速攻で店のドアを閉められた。あいつら、強制的に俺らを二人きりにしようとしてんな。
「プレゼント、ありがとね。なんで俺の欲しいものわかったの?」
「俺のリサーチ力、舐めんなよ。……ていうか、せっちゃんに聞いたんやけどな。高ついたわ」
「え!? お金払ったの!? そういえば、バイト代で何買いたいかトップ3聞かれた!!」
「やろ? それにしても、マクド3セットやで? どんな胃してんねん」
「うわぁ、なんかごめんね?」
「ううん、それもプレゼント代に込みやから」
すまなそうにするゆうたに、親指を立てて笑う。先に買ってたもん見てしもてるんやから、こっちも値の張るもんを買うしかないやろ。
「ゆうたもありがとうな? まさかペアルックで色違いやとは思わんかったけど」
「だって、いつきくんが『一緒の買え』って聞かないんだもん」
「……へぇ。いつきくんのせい、なんや」
ショックなんか受けてへんよ。あの日のいつきくんとゆうたの仲の良さを思い出して、ちょっとだけ腹が立ってるだけや。